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星と柱を数えたら_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:星と柱を数えたら小川未明あるところに、広ひろい圃はたけと、林はやしと、花園はなぞのと、それにたくさんな宝物たからものを持
(单词翻译:双击或拖选)
 
かくして、一年ねんとたたぬうちに、彼かれはもう大胆だいたんにりっぱに、仕事しごとができるようになりました。
あるとき、親方おやかたは、つくづくと彼かれの仕事しごとぶりを見みていたが、
「おまえは、いつまでも、ペンキ屋やで暮くらそうとは思おもわないだろうが、いったいなにになりたい気きなのだ。」と、彼かれにききました。
「僕ぼくは、軍人ぐんじんになりたい。」と達吉たつきちは、答こたえたのです。いつか准尉じゅんいにあってから、彼かれはそう心こころの中なかで思おもったのでした。
「軍人ぐんじんにか、それはいい。おまえは、脊せは低ひくいが、なかなか強情ごうじょうだから、いい軍人ぐんじんになれるだろう。」と親方おやかたは、達吉たつきちの意見いけんに、反対はんたいしませんでした。
勝かち気きの達吉たつきちは、同おなじ年としごろの少年しょうねんが学校がっこうへいくのを見みたりすると、うらやむかわりに、夜よるも、疲つかれた体からだを小ちいさな机つくえの前まえにもたせて、航空雑誌こうくうざっしを読よんだり、地理ちりや、歴史れきしを復習ふくしゅうしたりしていました。そして、昼ひるになれば、彼かれは、普通ふつうの子供こどもたちなら、とうてい上あがれない、目めのまわりそうな高たかい建物たてものの頂いただきに立たって、
「学校がっこうで勉強べんきょうするよりか、こんなところで、大人おとなといっしょに仕事しごとをする己おれのほうが、よほど偉えらいんだぞ!」と、だれに向むかっていうとなく、独ひとりで豪語ごうごしました。
それは、彼かれが、東京とうきょうへきてから、三みたびめに迎むかえる夏なつの暑あつい日ひのことでした。
緑みどりの多おおい丘おかに建たっていた教会堂きょうかいどうの前まえを通とおりかかると、たくさん人ひとが集あつまって、塔とうの上うえをながめていました。
「どうしたんですか。」
「あのたくさんなからすが、はとをねらっているのですよ。」
このごろ、どこのごみ捨すて場ばをあさっても、あまり食くい物ものが見みつからないので、都会とかいにすむ餓うえたからすたちは、弱よわい鳥とりをいじめてその肉にくを食たべることを考かんがえついたのでした。それで、はとの巣すを襲おそったのです。いつ、どこから飛とんできたのか、二羽わのはとは、ここを安全あんぜんな場所ばしょと思おもって、塔とうの屋根やねに巣すを造つくりました。そして、やがて子供こどもを産うんで、育そだてていました。これを知しっていて、からすは、いま計画的けいかくてきに、群むれをなしてやってきたのです。早はやくも悟さとった親おやばとは、巣すの奥おくの方ほうへ二羽わの子こばとを隠かくして、母ははばとは、胸むねで子供こどもをおおい、たぶんそれは父ちちばとであったでしょう、いちばん端はしにうずくまって、体からだで巣すの入いり口ぐちをふさぐようにして、敵てきとにらみ合あっていました。
どうなることかと、達吉たつきちもいっしょになって、見みていました。すると、その中なかの獰猛どうもうな一羽わのからすが、ふいに父ちちばとに飛とびかかって、とうとう巣すから外そとへ引ひきずり出だしてしまいました。待まっていたとばかり、ほかのからすたちが、四方ほうから寄よってたかって、哀あわれなはとを奪うばい合あい、最後さいごに血ちにまみれたはとを屋根やねの上うえへたたきつけて、たがいにくちばしでちぎりはじめたが、あっという間まに、こうかつな一羽わがその屍かばねをさらってどこかへ飛とび去さると、あわてて三羽わ、四羽わ、その後あとを追おいかけていきました。
「なんて、ひどいことをしやがる。まだ、あの巣すの中なかには、はとがいるから、それも喰くい殺ころされるだろう。」
こういって、見みている人々ひとびとが、小石こいしを拾ひろって、からすに向むかって投なげつけていた。しかし、石いしはそこまでとどきませんでした。からすは、石いしの当あたらないのを知しっていて、こちらのことは気きにも止とめずに、だんだん巣すの方ほうへ近寄ちかよって、じっと機会きかいをねらっていました。
「わるいやつだな。」と、達吉たつきちは、つくづく思おもいました。彼かれの胸むねは、憤いきどおりのために、どきんどきんと鳴なりだしました。
おそらく、子供こどもを救すくうために、自分じぶんを犠牲ぎせいにしようと覚悟かくごしたのでしょう。ふいに、母ははばとが、巣すから飛とび出だした。からすらが、なんで、それを見逃みのがそう。我先われさきに獲物えものにありつこうと翔かけるはとに向むかって突進とっしんしました。母ははばとは、巧たくみに方向ほうこうを変かえて、子供こどもたちのいる巣すから、敵てきを遠方えんぽうへ遠方えんぽうへと誘さそったのであります。見みていると、塔とうの頂いただきの空そらを高たかく二、三回かいもぐるぐるまわってから、下したの町まちの方ほうへ、できるだけの速力そくりょくで、飛とび去さっていきました。その後あとを、カアカアと叫さけびながら、黒くろくなって、からすらが執拗しつように追おいかけていきました。
けれど、まだ二羽わ、三羽わ、意地悪いじわるいからすが残のこっていて、どこへも去さらずに、塔とうの屋根やねに止とまって、険けわしい目めで巣すをねらっていました。そこには、親鳥おやどりを失うしなった、かわいそうな子こばとが怖おそろしさのためにふるえているのでした。それと知しった、達吉たつきちは、もうなんで我慢がまんができましょう。
「よし、あの不埒ふらちなからすめを追おいはらってくれよう。そして、子供こどもを己おれの懐ふところに抱だいてきてやろう。」
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けれど、まだ二羽わ、三羽わ、意地悪いじわるいからすが残のこっていて、どこへも去さらずに、塔とうの屋根やねに止とまって、険けわしい目めで巣すをねらっていました。そこには、親鳥おやどりを失うしなった、かわいそうな子こばとが怖おそろしさのためにふるえているのでした。それと知しった、達吉たつきちは、もうなんで我慢がまんができましょう。
「よし、あの不埒ふらちなからすめを追おいはらってくれよう。そして、子供こどもを己おれの懐ふところに抱だいてきてやろう。」
達吉たつきちは、人々ひとびとがなんといってもかまわずに、柵さくを乗のり越こえて、寂然せきぜんとした教会堂きょうかいどうの敷地内しきちないへ入はいり込こみ、窓まどわくを足場あしばとして、さるのごとく、といを伝つたって、建物たてものの壁かべを攀よじり、急角度きゅうかくどに傾斜けいしゃしている屋根やねへはい上あがろうとしました。
「おうい、やめろ、あぶないぞう!」と、下したからわめく声こえがきこえました。この声こえは彼かれの耳みみに入はいったけれど、
「なに、くそ……。」と、彼かれは、返事へんじをするかわりに、歯はぎしりをしていた。
突然とつぜん、人間にんげんの頭あたまが、にょっきりと屋根やねの端はしから伸のび上あがると、さすがにからすは、これに敵かなわぬと思おもったか、いちはやく、どこかへ逃にげていきました。
スレートの面めんは、太陽たいようの熱ねつで油あぶらを流ながすごとく焼やけていて、足あしの裏うらへ、針はりを刺さすように痛いたさを感かんじさせた。
「もう、降おりろう!」と、見みていたものの中なかから注意ちゅういするものがあった。
達吉たつきちは、ただ登のぼらなければならぬ気きがしていた。顔かおを上あげると、まだ巣すのところまで三、四メートルありました。同時どうじに下したを見みると、すぐ近ちかく大おおきな木きが目めに入はいり、四方ほうへ張はった枝えだの柔やわらかな緑色みどりいろは毛氈もうせんを拡ひろげたように、細こまかな葉はが、微風びふうにゆれていました。そして、こんな際さいに、どうしてか、いつか病院びょういんの窓まどから見みた、あおぎりの幻覚げんかくが浮うかんだ。
「己おれは、どうすればいいのか?」さっと感激かんげきの失うせた刹那せつな、自分じぶんのすることがわからなくなり、心こころがぐらつくと足あしの感覚かんかくまでなくなって、体からだがずるずると下したへ滑すべりはじめた。堅かたいスレートにはどこにもつめの立たてようがない!
彼かれは、絶体絶命ぜったいぜつめいを感かんじた。数秒すうびょうの後のちに、自分じぶんの体からだが、幾いく十尺しゃくの高たかいところから地上ちじょうに落下らっかして粉砕ふんさいするのだと意識いしきするや、不思議ふしぎにも、気力きりょくが出でて跳はね上あがった。彼かれは、   屋根やねを蹴けると、眼下がんかの大木たいぼくを目めがけて、それにしがみつこうとして飛とんだ。
軽業師かるわざしにやれる離はなれわざなら、なんで人間にんげん生死せいしの瀬戸際せとぎわにできぬというはずがありましょう。
達吉たつきちは、天地てんちが真まっ闇くらだった。大波おおなみが、自分じぶんを呑のんだ。体からだは前後上下ぜんごじょうげに揺ゆれていた。わずかに、目めを開あけると、しっかりと自分じぶんはけやきの木きの枝えだにしがみついていた。
「おお、己おれは、生いきているぞ! 己おれは、助たすかったのだ。お父とうさんに誓ちかいます。僕ぼくは、軍人ぐんじんになります。神かみさまに誓ちかいます。僕ぼくは、かならず飛行兵ひこうへいになります。」
とっさに、希望きぼうが頭あたまにひらめいた。どこを見みてもただ明あかるく、さんらんたる光ひかりのうちにいるのを発見はっけんした。どこかで、がやがや人ひとの声こえが、きこえるような気きがしたけれど、達吉たつきちは、ただ、手足てあしに力ちからを入いれて、どうしても強つよく生いきなければならぬということだけしか考かんがえていなかった。
このときの、彼かれの目めは、からすの目めよりも、さとくいきいきと輝かがやいて、いったん心こころにつかんだものを一生しょう逃のがすまいとしていました。
 
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