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町の天使(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:町の天使小川未明Sえすという少年しょうねんがありました。毎日まいにち、学校がっこうへゆくときも、帰かえるときも、町まちの
(单词翻译:双击或拖选)
 
少年しょうねんは、それを打うち消けすようにして、
「お母かあさん! ほんとうに、外そとで僕ぼくを呼よんでいたんですよ。うそだと思おもったら、見みてごらんなさい。」と、少年しょうねんはいいました。
「じゃ、私わたしが見みてみよう。そして、もしいたら、しかってやろう!」と、母親ははおやはいって、窓まどから、あちらを見みました。
「だれもいないじゃないか。おまえは夢ゆめを見みたのだよ。」といって、母親ははおやは、寒さむいので、障子しょうじをぴしりと閉しめてしまいました。
その日ひから、少年しょうねんの病気びょうきは、いっそう重おもくなったので、家うちの人ひとたちは、みんな心配しんぱいしたのであります。
少年しょうねんは、窓まどからのぞいて見みると、お菓子屋かしやの看板かんばんの上うえにとまっている天使てんしが、ひとりで、あらしの中なかに遊あそんでいたのでした。
「君きみは、いつも真夜中まよなかになると、人ひとの知しらない間まに空そらを飛とんで、星ほしの世界せかいへいったり、また林はやしの中なかへはいったりして遊あそんでいるのだろう……。」と、少年しょうねんはたずねました。
天使てんしは、はずかしそうな顔かおをして笑わらっています。
「今日きょうは、空そらがよく晴はれて、それに風かぜが寒さむいから、つい天国てんごくが恋こいしくなって、飛とんでいました。」と、天使てんしは、答こたえました。
少年しょうねんは、あちらの青あおい空そらが、ただなんということなしに慕したわしくなりました。それに、海うみの方ほうへといってみたくなりました。
「僕ぼくをつれていってくれないか?」と、天使てんしに向むかって頼たのみました。
小ちいさな天使てんしは、しばらく考かんがえていましたが、魔術まじゅつで、少年しょうねんを小ちいさく小ちいさくしてしまいました。
「さあ、しっかりと私わたしの脊中せなかにお負ぶさりなさい。」と、天使てんしはいいました。少年しょうねんは、天使てんしの白しろい脊中せなかにしっかりと抱だきつきました。いつしか、青あおい空そらと白しろい雲くもの間あいだを縫ぬうようにして、飛とんでいたのであります。
目めの下したには、海うみが、悲壮ひそうな歌うたをうたって、はてしもなく、うねりうねりつづいていました。風かぜは、吹ふいて、吹ふいていました。少年しょうねんを乗のせた、天使てんしは、北きたへ、北きたへと旅たびをつづけたのであります。
そのうちに、紅あかい潮しおの中なかから、一つの美うつくしい島しまが産うまれました。天使てんしは、その島しまの空そらを飛とびまわりました。見下みおろすと、そこには、真まっ白しろな大理石だいりせきの建物たてものが、平地へいちにも、丘おかの上うえにもありました。その有あり様さまは、見みたばかりでも神々こうごうしさを覚おぼえたのでした。どんな人ひとがこの島しまの中なかに住すんでいるだろうか? 少年しょうねんは、もし美うつくしい人ひとたちで、自分じぶんを愛あいしてくれるような、やさしい人々ひとびとであったら、自分じぶんはこの島しまに住すみたいと思おもいました。しかし、その島しまは、こんなふうに神々こうごうしかったけれど、しんとして音おとひとつしなければ、また煙けむりの上のぼっているところもありませんでした。地ちの上うえに、赤あかいところや、白しろいところの見みえるのは、花はなが咲さいているのだと思おもわれました。そのうちに、下したの道みちを白しろい衣服いふくをまとった人々ひとびとが、脇見わきみもせずに歩あるいていくのが見みえました。その人々ひとびとは、尼あまさんが会堂かいどうへゆくときのように、笑わらいもしなければ、話はなしもしませんでした。これを見みると、体からだじゅうに寒さむけを催もよおしましたので、この島しまへ降おりてみようとは思おもわなくなりました。
「あんまり遅おそくなると、みんなが心配しんぱいするから、もう、かえりたい。」と、少年しょうねんは天使てんしにいいました。
小ちいさな、美うつくしい翼つばさを持もった天使てんしは、たそがれ方がたの空そらを矢やのように、速すみやかに飛とんで、ふたたびなつかしい、わが家やの見みえる野原のはらの方ほうへと飛とんできました。
「さあ、ここですよ。」といって、天使てんしがおろしてくれたので、ほっとして少年しょうねんは、目めを開ひらきました。
すると、自分じぶんのまくらもとには、心配しんぱいそうな顔かおつきをした医者いしゃと、青あおい顔かおをしたお母かあさんと、妹いもうとと、お父とうさんたちがすわって、自分じぶんの顔かおを見みつめていたのでした。
少年しょうねんは、どうしたことかと思おもって、不思議ふしぎでならなかったのです。
それから、数日すうじつたちました。少年しょうねんの病気びょうきは、いいほうに向むかいました。医者いしゃは、眉まゆを開ひらいて笑わらいました。母親ははおやの顔かおにもはなやかな笑わらいが浮うかびました。
あいかわらず、あらしは、窓まどの外そとに吹ふいて、雪ゆきすらおりおり、風かぜにまじって落おちてきました。けれど、そんなに深ふかくは積つもりませんでした。そのうちに、少年しょうねんの病気びょうきはまったくよくなって、元気げんきよく学校がっこうへ通かようことができるようになったのであります。
ある日ひ、少年しょうねんは、菓子屋かしやの前まえを通とおりかかって、天使てんしは、どうしたろうと思おもって、仰あおいでみますと、そこにはありませんでした。驚おどろいて友ともだちに聞きいてみますと、いつかの大おおきなあらしのとき、落おちて壊こわれてしまったといいました。少年しょうねんは、すこしいくと、道みちのはたに天使てんしの翼つばさのかけらが落おちていたのを見みつけました。少年しょうねんは、天使てんしが、いよいよ大空おおぞらに上のぼってしまったのだろうと思おもいました。それから、つぎの休やすみ日びに凍こおった雪ゆきの上うえを渡わたっていくと、林はやしの中なかに赤あかい帽子ぼうしが一つ落おちていたのであります。
――一九二五・一〇――
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