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街を行くまゝに感ず_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:街を行くまゝに感ず小川未明たま/\書斎から、歩を街頭に移すと、いまさら、都会の活動に驚かされるのであります。こちらの側か
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町の天使

小川未明


Sえすという少年しょうねんがありました。
毎日まいにち、学校がっこうへゆくときも、帰かえるときも、町まちの角かどにあった、菓子屋かしやの前まえを通とおりました。その店みせはきれいに飾かざってあって、ガラス戸どがはまっていて、外そとの看板かんばんの上うえには、翼つばさを拡ひろげたかわいらしい天使てんしがとまって、その下したを通とおる人々ひとびとをながめていたのであります。
少年しょうねんは、すこし、時間じかんのおくれたときは、急いそいで、夢中むちゅうでその前まえを過すぎてしまいましたけれど、そうでないときは、よくぼんやりと立たち止どまって、毎日まいにちのように見みる天使てんしを、飽あかずに仰あおいでいることがありました。
なぜなら、その天使てんしは、あちらの雲切くもぎれのした、北きたの方ほうの青あおい空そらから飛とんできて、ここにとまったようにも思おもわれたからでした。少年しょうねんには、それほど、あちらの遠とおい空そらが、なんとなくなつかしかったのであります。そして、その天使てんしと青あおい空そらとを結むすびつけて考かんがえると、美うつくしい、また愉快ゆかいないろいろな空想くうそうが、ひとりでに、わいてきたからであります。
「おまえは、いつ、あのあちらの空そらへ帰かえってゆくの?」と、小ちいさい声こえでいったりなどしました。しかし天使てんしは、ただこれを聞きいても笑わらっているばかりでした。
雨あめの降ふる日ひも、天使てんしは、そこにぬれながらじっとしていました。また、霧きりの降ふった日ひも……。けれど、少年しょうねんは、夜よるになって、大空おおぞらがぬぐわれたように星晴ほしばれがして、寒さむい風かぜが吹ふく真夜中まよなかには、きっと、天使てんしが自由じゆうに、あの翼つばさをふるって、大空おおぞらを飛とびまわるのであろうと思おもいました。けれど、人ひとは、だれもそれを知しらない。そして、天使てんしは、いつもじっとしているとばかり思おもっているのだと考かんがえました。
「僕ぼくは、おまえが、夜よるになって、だれも人間にんげんが見みていないときに、空そらを飛とびまわるのを知しっているのだよ。」と、少年しょうねんは、天使てんしに向むかっていいました。
こういっても、天使てんしは、ただ黙だまって笑わらっているばかりでした。
S少年エスしょうねんは、病気びょうきにかかりました。
もう幾日いくにちも学校がっこうを休やすんで、一間ひとまにねていました。そのうちに、秋あきもふけて、いつしか冬ふゆになりかかり、木こがらしが家いえのまわりに、吹ふきすさんだのであります。いろいろの木立こだちの葉はが、ざわざわといってささやきました。そして、はげしい風かぜの襲おそうたびに、それらの葉はたちは、ちょうど火ひの子このように、大空おおぞらに飛とび上あがり、あてもなく野原のはらの方ほうへと駆かけてゆくのでした。
少年しょうねんは、窓まどから、いつしか、さびれきった庭にわの中なかをながめていました。かしの木きの下したに、たくさんどんぐりが落おちていました。また、あちらの垣根かきねのところには、からすうりが、いくつか赤あかくなってぶらさがっていました。ここから見みると、たいそう寒さむく、さびしい林はやしの中なかではあったけれど、そこにはいい知しれぬおもしろいことや、楽たのしいことがあるとみえて、いろいろの小鳥ことりがやってきて、枝えだから枝えだへ飛とびうつっては、鳴ないているのが見みえるのであります。
「もう、じきに雪ゆきがくるだろう……。」と、少年しょうねんは思おもっていました。
「戸とを開あけて、寒さむい風かぜに当あたってはいけませんよ。」と、お母かあさんにいわれて、少年しょうねんは、また床とこの中なかにはいりました。そして、あいかわらず、家いえの外そとにすさぶ木こがらしの音おとを聞きいていました。
「早はやく、病気びょうきがよくなって、学校がっこうへいきたいものだな。」と、少年しょうねんは思おもいました。けれど、それまでには、なかなかよくならなかったのであります。
お友ともだちは、遠慮えんりょをして遊あそびにきませんでした。少年しょうねんは、もう長ながいこと、お友ともだちの顔かおを見みません。そんなことを思おもって、さびしがっていました。
ちょうど、そのとき、あらしの中なかをだれか自分じぶんを呼よびにきたものがあります。
「Sエスちゃん、遊あそぼう!」と、外そとで自分じぶんを呼よんでいました。
はじめは、気きのせいではないかと考かんがえました。それで、しばらく、床とこの中なかで、じっと考かんがえていました。あらしの音おとは、いよいよはげしくなって、林はやしの鳴なる音おとや、落おち葉ばの風かぜにまかれて飛とぶ音おとなどがしていたのであります。また、このあらしの間あいだにまじって、
「Sエスちゃん、遊あそぼう!」と、自分じぶんを呼よんでいる子供こどもの声こえがきこえてきました。
「だれだろう?」と、少年しょうねんは思おもって、床とこから出でて窓まどの障子しょうじを開ひらきました。すると、あちらに、赤あかい帽子ぼうしをかぶった二人ふたりと、黒くろい帽子ぼうしをかぶった一人ひとりの子供こどもが、三人にんでおもしろそうに遊あそんでいて、自分じぶんを手招てまねぎしたのであります。
「だれだい?」と、少年しょうねんは呼よびかけて、その三人にんをじっと見守みまもりました。すると、一人ひとりは年としちゃんで、一人ひとりは正しょうちゃんでありました。黒くろい帽子ぼうしをかぶっている子供こどもは、まったく知しらない子供こどものように思おもわれました。
「年としちゃんに、正しょうちゃん、君きみは、どうしたんだい、死しななかったのかい。不思議ふしぎだなあ……。」と、少年しょうねんは、死しんだはずの二人ふたりの友ともだちが、このあらしの吹ふく日ひに、どこからか帰かえってきて、自分じぶんを誘さそいにきたのを、少すくなからず不思議ふしぎに考かんがえたのでした。
三人にんは、しきりに、自分じぶんを手招てまねぎしていました。少年しょうねんは、お母かあさんに聞きいてみて、すぐにも外そとへ出でていこうと思おもいました。彼かれは、ふらふらとへやの中なかを歩あるいて、茶ちゃの間まの方ほうへいって、
「年としちゃんと正しょうちゃんが迎むかえにきたから、いってもいい?」と、お母かあさんにたずねました。すると、お母かあさんは、走はしってきて、
「なんで、おまえはねていないのです。」といって、しかられました。
少年しょうねんは、年としちゃんに、正しょうちゃんが外そとで呼よんでいるから、二人ふたりを家うちへいれてくれと頼たのみました。
「僕ぼく、さびしくて、しかたがないんだから……。」といいますと、お母かあさんは、青あおい顔かおをして、目めを大おおきくみはって、少年しょうねんをにらみました。
「なんで、年としちゃんや、正しょうちゃんが、おまえを呼よびにくることがあるものか。おまえは、夢ゆめを見みたんだよ。」といいました。
 
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