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真昼のお化け(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:真昼のお化け小川未明上光こう一は、かぶとむしを捕とろうと思おもって、長ながいさおを持もって、神社じんじゃの境内けいだいに
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窓の内と外

小川未明


白しろと黒くろの、ぶちのかわいらしい子こねこが、洋服屋ようふくやの飾かざり窓まどのうちに、いつもひなたぼっこをしていました。そのころ、政せい一は、まだ学校がっこうへ上あがりたてであった。その店みせの前まえを通とおるたびに、おもちゃのねこがおいてあると思おもっていました。ところが、ある日ひ、そのねこが起おき上あがって、脊せのびをしたので、
「おや、生いきているのだな。」と、びっくりしました。
ねこを好すきな政せい一は、それから、この洋服屋ようふくやの前まえを通とおると、かならず店みせのうちをのぞくようになりましたが、太陽たいようの当あたらないときは、ねこの姿すがたを飾かざり窓まどでは見みませんでした。
月日つきひがたって、いつしか政せい一は、上級生じょうきゅうせいとなりました。彼かれは、また釣つりが大好だいすきなので、祭日さいじつや、日曜日にちようびなどには、よく釣つりに出でかけました。だれでも、子供こどもの時分じぶんは、魚釣うおつりが好すきなものですが、政せい一ときては、日ひに、二、三回かいもいくようなこともめずらしくなかったのです。それは、川かわがそう遠とおいところでなかったからでありましょう。片手かたてにブリキかんをぶらさげて、片手かたてにはさおを持もち、いつも帽子ぼうしを目深まぶかにかぶって、よくこの洋服屋ようふくやの前まえを通とおったのでありました。
そのころは、とっくに、ねこがいなかったから、彼かれは、ねこのことなど忘わすれてしまいました。ただガラス窓まどにうつる、彼かれの姿すがたが、学校がっこうへ上あがりたてのころから見みれば、おどろくほど大おおきくなっていました。思おもい出だしたように、彼かれはまぶしい空そらを見上みあげたが、釣つりのことよりほかには、なにも考かんがえていませんでした。
このとき、店みせのうちで、眼鏡めがねをかけて仕事しごとをしていたおじいさんは、じっと少年しょうねんの姿すがたを見送みおくっていました。
「あのお子こさんも、大おおきくなったものだ。しかし今日きょうは、風向かざむきがおもしろくないから、釣つりはどうだかな。」と、おじいさんはひとり言ごとをしたのでした。
政せい一のお母かあさんは、よくこの店みせへきて、政せい一の洋服ようふくの修繕しゅうぜんをお頼たのみになりました。ちょうど、その日ひの晩方ばんがたのことです。いつものように、お母かあさんは、洋服屋ようふくやへこられて、こんどは、政せい一が、新学期しんがっきから着きるための新あたらしい服ふくを、お頼たのみなさったのでした。
「いままでのは、もう小ちいさくなって着きられなくなりましたから、新あたらしいのをこしらえてやろうと思おもいます。」と、お母かあさんは、おっしゃいました。
これを聞きくと、おじいさんは、にこにこしながら、
「きょう、坊ぼっちゃんがさおを持もって、前まえをお通とおりになりましたが、釣つれましたか。しかし、よく私わたしの直なおしてあげました服ふくを、こんなになるまで我慢がまんして着きてくださいました。感心かんしんなことです。何分なにぶん戦後せんごで、品物しなものがないのですから。」と、おじいさんが、いいました。
「このまえ、こんどこれが切きれたら、新あたらしくなさいと、念ねんを入いれて修繕しゅうぜんしてくださったおしりのところが、こんなに破やぶれましたし、それに、急きゅうに体からだが大おおきくなりましたので、新あたらしくこしらえてやろうと思おもいます。」と、お母かあさんも笑わらって、お答こたえになりました。
おじいさんは、鼻先はなさきから、眼鏡めがねをすべり落おちそうにして、うなずきながら、
「坊ぼっちゃんが、あんなに大おおきくおなりですもの、自分じぶんは年としをとったはずだと、つくづく思おもいましたよ。」
おじいさんは、さらに、話はなしをつづけました。
「私わたしも、子供こどものときは、なにより釣つりが大好だいすきでした。それですから、いまでも、釣つりざおを持もっていく人ひとを見みると、しぜんに癖くせで、空そらを見みるのです。ああ、今日きょうはだいじょうぶだ。今日きょうは、風かぜがおもしろくないと、つい、自分じぶんのことのように考かんがえるのです。仕事しごとをするようになって、もう何なん十年ねんも川かわへいきません。けれど、こうしてすわっていても、昔むかしを考かんがえると、楽たのしかった日ひが、目めに浮うかんできます。」と、おじいさんは、政せい一のお母かあさんに向むかって、話はなしました。
この日ひ、政せい一は、おじいさんのいったように、わずかに小ちいさなふなを二匹ひきと、えびを三匹びき釣つったばかりでした。夕飯ゆうはんのとき、お母かあさんが、おじいさんの、今日きょうの話はなしをおきかせなされると、
「たまには、おじいさんも、釣つりにいけばいいのに。」と、考かんがえて、政せい一は、こういいました。
「それが、つぎつぎに、お仕事しごとがあっていけないのだそうです。おまえの、いま着きている服ふくも、どれほどおじいさんのお世話せわになったかしれません。おじいさんだけは、直なおしものでも、けっしていやな顔かおをせずに、かえって、こんな時節じせつだから、着きられるだけ我慢がまんなさいといって、喜よろこんでしてくださるのですよ。」と、お母かあさんはいわれました。
政せい一は、お母かあさんの口くちから、こうはじめて聞きくと、おじいさんが、自分じぶんの好すきな楽たのしみも犠牲ぎせいにして、他人たにんのためにつくしているのを知しりました。そればかりでなく、政せい一は、自分じぶんの着きている服ふくも、幾人いくにんかの手てによってつくられたのであって、この世よの中なかのことは、なに一つ、ひとりの力ちからだけで、できるもののないことを悟さとったのであります。
彼かれは、毎日まいにち、だまって仕事しごとをしている人々ひとびとに、真しんに感謝かんしゃの念ねんがわいたのでありました。
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