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迷い路_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:迷い路小川未明二郎は昨夜ゆうべ見た夢が余り不思議なもんで、これを兄の太郎に話そうかと思っていましたが、まだいい折おりがあ
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中


「きょう、勇ゆうちゃんはびんどを持もって川かわへえびを取とりにいくといったが、僕ぼくもいっしょにゆこうかな。けれど、だいぶ空そらが暗くらくなって、雨あめが降ふりそうだ。」
光こう一は、学校がっこうの帰かえりに考かんがえながら、原はらっぱを歩あるいてきました。空そらを見みていた目めを地面じめんへ移うつすと、なんだろう? 黒光くろびかりのする、とげとげしたものが、ゆく先さきの草くさの上うえに落おちているのでした。
「虫むしかしらん?」
光こう一は、すぐに、それが生いきもののように感かんじました。なんだか気味きみの悪わるいものです。しかし動うごきません。用心深ようじんぶかく、目めをこらして近ちかづくと、長ながい足あしがあって、二つの目めが光ひかっています。かぶとむしではない、むかででもない、えびのようであるが……まだ見みたことのない虫むしとしか思おもわれませんでした。
「なんだろうな?」と、彼かれは、もっと近ちかづいてよく見みると、長ながいひげがあって、それはまちがいなく、えびでありました。
「えびだ、大おおきなえびだ!」
不思議ふしぎでたまりません。こんな草くさの上うえに落おちているのに、いま水みずの中なかから、はね出だしたばかりのように、黒色くろいろの甲こうらがぬれているなどであります。彼かれは、ちょっと、それを拾ひろい上あげるのにためらいました。が、えびであることがわかると、しぜんに勇気ゆうきが出でて、手てに取とり上あげたのです。
なるほど、勇ゆうちゃんのいったように、長ながい足あしと平ひらたい足あしとがあって、どこも傷きずがついていませんでした。
水みずの中なかへ入いれたら、生いき返かえるかもしれぬと、光こう一は思おもったので、なるべく強つよく握にぎらないようにして、急いそいだのでありました。
「どうして、こんなところに、えびがあったんだろうな。」
考かんがえれば、考かんがえるほど、不思議ふしぎでなりませんでした。それから、このえびをどうしたらいいかということにも迷まよったのでした。家うちへ帰かえって、すぐ水みずに入いれてみよう、そして、生いきたら飼かっておこう、もし生いき返かえらなかったら、そうだ、標本ひょうほんにしようか?
だが、もっと気きにかかるのは、悪わるい病気びょうきのはやる時分じぶんに、こんなものを拾ひろって帰かえると、きっとお父とうさんもお母かあさんも、やかましくいって、しかることでした。だから、家うちの人ひとたちの目めにつかないところに置おかなければならない。
光こう一は、頭あたまに、いろんなことを考かんがえながら、原はらっぱの真まん中なかに、立たち止どまって、えびを鼻先はなさきへぶらさげて匂においをかいでみました。まだ、海うみを泳およいでいた時分じぶんの、磯いその香かが残のこっていました。
「きっと、生いき返かえるかもしれない。」
彼かれは、かばんから、半紙はんしを出だして、えびを包つつみました。そして、急いそぎました。家うちへ着つくと、洗面器せんめんきに塩水しおみずを造つくって、入いれてみたのです。けれど、やはり、えびは動うごきませんでした。彼かれは、ともかく、この、えびを勇ゆうちゃんに見みせようと思おもって、また紙かみに包つつんで、生いけ垣がきの間あいだへ隠かくしました。
「茶ちゃだなの上うえに、おやつがありますよ。」と、お母かあさんが、おっしゃいました。光こう一は、おやつも食たべないで、外そとへ飛とび出だしたのであります。
「勇ゆうちゃんが見みたら、びっくりするだろうな。」と、歩あるきながら、ときどき、えびを紙かみから出だしてながめていました。
指先ゆびさきでつまんで、これが、水みずの中なかにいる時分じぶんの姿すがたを想像そうぞうして、空中くうちゅうを泳およがしてみました。

お宮みやの前まえまでくると、ワン、ワンとけたたましい犬いぬのほえ声ごえがしました。
境内けいだいをのぞくと、昨日きのう、かぶとむしをさがした、かしわの木きの下したで、ペスが、しきりに地面じめんを掘ほるように、つめで、かいて、騒さわいでいるのでした。
「ペスや、なにしているんだい?」
光こう一は、さっそく、犬いぬのそばへいってみました。へびでも見みつけたのかと思おもったのが、そうでなく小ちいさな穴あなに向むかってほえているのでした。
「なあんだ。」といっていると、黒くろいものが穴あなの中なかから頭あたまを出だしたようです。
「おや、なにか見みえたぞ。」
光こう一は、棒切ぼうきれをきがして、穴あなをつついてみました。奥おくの方ほうに、小ちいさなしかの角つのの形かたちをしたものが、ちょっと見みえています。
「やあ、かぶとの子こだ。こんなところに、かぶとむしの穴あながあるとは思おもわなかったなあ。ペス、おまえはおりこうだね。」と、光こう一は、喜よろこんでペスの頭あたまをなでてやりました。そして、えびをあちらの木きの根ねのところへ置おいてきて、いっしょうけんめいに、その穴あなの中なかからかぶとむしを掘ほり出だすのに、夢中むちゅうになっていました。
やっと一ぴき捕つかまえると、まだいるだろうと、光こう一は、顔かおを赤あかくして、顔かおに汗あせを流ながしながら、穴あなを掘ほり返かえしていました。また、あちらで、「ワン、ワン。」と、ペスが、ほえました。顔かおを上あげると、驚おどろいたのです。ペスは、えびをくわえて、二、三度ど頭あたまを振ふったが、そのまま、あちらへ駆かけ出だしていきました。
「ペス! それは、大事だいじなんだよ。」といって、光こう一は、後あとを追おいかけたけれど、だめでした。もう、姿すがたは見みえなくなってしまいました。
学校がっこうの運動場うんどうじょうで、遊あそんでいるとき、勇吉ゆうきちがそばへきましたから、
「勇ゆうちゃん、川かわへ魚さかなを捕とりにいったの。」と、光こう一は、ききました。
「雷かみなりが鳴なり出だしたろう、雨あめが降ふるといけないからいかなかった。それで、晩ばんに縁日えんにちへいって、金きんめだかを買かってきたのさ。」
「あのびんに入いれた?」
「入いれたよ、こんど川かわへいって、藻もを取とってくるのだ。」
光こう一は、えびを拾ひろった話はなしをしました。
「えっ、あの原はらっぱでかい。」と、勇吉ゆうきちは、さも信しんじられないというような、顔かおつきをしたのです。
「うそでない、草くさの上うえに落おちていたんだよ。」
光こう一は、それ以上いじょう、ほんとうだと信しんじさせるようにいえないことを、至極しごく残念ざんねんに思おもいました。
「魚屋さかなやさんかしらん。しかし、あんな原はらっぱを通とおるはずがないだろう。また、ねこがさらってきたなら、食たべてしまうし。そのえびは、どっか、傷きずがついていたかい。」と、勇吉ゆうきちが、ききました。
「一本ぽんも足あしがとれていなかった。まだ生いきているように、黒光くろびかりがしていた。」
「そして、足あしが、動うごいていた?」
「じっとしていた。僕ぼく、家うちへ帰かえって、すぐに塩水しおみずに入いれてみたけれど、死しんでいたよ。」と、光こう一は、いいました。
「そいつは、おかしいね。それで、そのえびどうしたの。」と、勇吉ゆうきちは、そんなこと、あり得えないことだといわぬばかりに、問といました。
「僕ぼく、勇ゆうちゃんに、見みせようと思おもって、持もっていったのだよ。途中とちゅうで、かぶとむしを見みつけたので、つかまえていると、ペスがくわえて、逃にげてしまったんだ。」と、光こう一は、考かんがえても残念ざんねんそうに、答こたえました。
「なあんだ――。」と、勇吉ゆうきちは、両手りょうてを頭あたまの上うえにのせて、しばらく考かんがえていたが、
「ああ、光こうちゃん、わかった。君きみは、夢ゆめを見みたんだ! きっと、光こうちゃんは、夢ゆめを見みて、それをほんとうにあったことと思おもっているんだ。第だい一、海うみにいるえびが、原はらっぱへくるわけがないさ。それでなければ、お化ばけだ!」
勇吉ゆうきちは、太陽たいようがきらきらする、森もりの方ほうを見上あげて、笑わらいました。白しろい雲くもが、帆ほのように、青あおい空そらを走はしっていきました。
「えっ、お化ばけ? なんでお化ばけであるもんか……。」と、光こう一は、力りきんで、いいはったが、自分じぶんながら、昨日きのうのことを考かんがえると、まったく夢ゆめのような気きがしてならなかったのです。
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