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三つのお人形(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:二夜よるになると、街燈がいとうが、店みせさきでともりました。その光ひかりは、ちょうど、踊おどっている人形にんぎょうのとこ
(单词翻译:双击或拖选)
 

三


それから、まもない、ある日ひのことでした。酔よっぱらいの紳士しんしが、人形屋にんぎょうやの店みせさきへはいってきて、いろいろの人形にんぎょうを出ださせて見みていましたが、どれも気きにいりませんでした。そのうち、踊おどっている人形にんぎょうに目めをつけると、さっそく、手てに取とりあげて、「これがいい。」といって、金かねを払はらい、例れいのごとく箱はこにいれてもらって持もってゆきました。その晩ばん、街燈がいとうは、店みせさきを照てらして、びっくりしました。踊おどっている人形にんぎょうの姿すがたが見みえなかったからです。
「とうとうあのお人形にんぎょうさんも、どこかへいってしまった。」と、街燈がいとうは、ひとりごとをしました。
酔よっぱらいの紳士しんしに、つれられていった人形にんぎょうは、気きが気きでなかった。自分じぶんは、どんなところへつれられてゆくのだろう? こう、暗くらい箱はこの中なかで考かんがえていました。
紳士しんしは、電車でんしゃに乗のると、うとうと居眠いねむりをしました。そして、ふと気きがつくと、乗のり越こしていましたので、びっくりして飛とび降おりました。家うちへ帰かえるまで、人形にんぎょうをどこかへ忘わすれてきたことに気きづかなかったのであります。
不幸ふこうな、この人形にんぎょうは、それからいろいろのめにあいましたが、その年としの夏なつの末すえの時分じぶんに、ほかの古道具ふるどうぐなどといっしょに、露店ろてんにさらされていました。
「おちぶれても踊おどっているなんて、のんきなものですね。」と、こちらのすみで、すずりと筆立ふでたてが、あちらの人形にんぎょうを見みて冷笑れいしょうしていました。
しかし、露店ろてんの主人しゅじんは、人形にんぎょうを大事だいじにしました。車くるまに乗のせて、はこぶ時分じぶんにも、手てや、足あしをいためはしないかと新聞紙しんぶんしで巻まいて、できるだけの注意ちゅういをしたのです。
「美うつくしいものは、ちがったものだ。」と、ほかの古道具ふるどうぐたちは、自分じぶんらが、そのようにかわいがられないので、不平ふへいをもらしたものもあります。しかし、人形にんぎょうは、昔むかしのことを思おもい出だすたびに、お友ともだちは、いまごろは、それぞれおちついて、平和へいわに暮くらしているであろう。自分じぶんばかりは、いまだに身みの上うえが定さだまらぬのを悲かなしく思おもいました。ある日ひのことです。いつものごとく、露店ろてんにならべられると、かたわらに、新あたらしくどこからか売うられてきた、電気でんきスタンドがありました。
「私わたしは、今日きょう、ここへお仲間入なかまいりにきたのですが、あなたと姉妹きょうだいのように似にているお人形にんぎょうさんといままで、一つの家うちで暮くらしていましたよ。」と、スタンドはつくづく、踊おどっている人形にんぎょうを見みながらいいました。
「どんなようすの人形にんぎょうですか?」と、つい踊おどっている人形にんぎょうは、スタンドの話はなしに、つりこまれて答こたえたのでした。なぜなら、自分じぶんの知しりたいと思おもっている友ともの身みの上うえのような気きがしたからです。
「ちょうど、あなたと同おなじくらいの脊せをして、すらりとすまして立たっているお人形にんぎょうでした。」
「それなら、わたしと仲なかのいいお友ともだちですよ。わたしは、どれほど、その方かたの身みの上うえを知しりたいと思おもいましたか。どうか、わたしに、くわしくお話はなしを聞きかしてくださいませんか。」と頼たのみました。
電気でんきスタンドは、つぎのように物語ものがたったのであります。
「いままで、私わたしがいた家うちのお嬢じょうさんが、ある日ひ、街まちから、美うつくしい、立たち姿すがたのお人形にんぎょうを買かって帰かえりました。すると、家うちじゅうの人ひとたちは、まあ、きれいなお人形にんぎょうだといって、たなの上うえへ飾かざりました。そして、それまで、たなの上うえに載のせてあった、古ふるいつぼや、また汚よごれたおもちゃなどは、新あたらしくきたお人形にんぎょうに、蹴落けおとされたように、たなから取とりのぞかれてしまって、立たち姿すがたの美うつくしいお人形にんぎょうだけが、ひとり、そこを占領せんりょうしたのであります。すると、いままで、たなの上うえにあった、つぼや、おもちゃは、不平ふへいをいいました。あのお人形にんぎょうがきたばっかりに、私わたしたちは、たなの上うえからおろされて、箱はこの中なかへおしこめられてしまった。ほんとうに、にくいお人形にんぎょうだといったのでした。耳みみのとれた、馬うまのおもちゃは、口くちの欠かけたつぼに、そう不平ふへいをいうものでありません、いつか、あのお人形にんぎょうも私わたしたちのようになるときがありますよ、といってなぐさめたのでした。それは、まったくお馬うまのいったとおりでした。ある朝あさ、お嬢じょうさんは、そうじをしようとして、はたきで、あやまってお人形にんぎょうを落おとしました。そのはずみに、お人形にんぎょうの片手かたてがもげてしまった。お嬢じょうさんはびっくりして、さっそく、のりで、とれた手てをつけました。けれどどうしても傷跡きずあとはとれませんでした。このお人形にんぎょうが、こうして不具かたわになると、箱はこの中なかへいれられた、口くちの欠かけたつぼや、耳みみのとれたお馬うまや、ほかのおもちゃたちは、また取とり出だされて、たなの上うえへ並ならべられたのでした。それは、もはやひとり、このお人形にんぎょうだけが完全かんぜんだとは、いわれなかったからです。それで、いまは、お人形にんぎょうもほかのおもちゃたちも、平等びょうどうのもてなしを受うけて、みんなは、仲なかよく、平和へいわに暮くらしています……。」と、話はなしたのであります。
踊おどっている人形にんぎょうは、こうして、二人ふたりの友ともだちの消息しょうそくを知しることができました。一つは、外国がいこくへゆき、一つはお嬢じょうさんの家うちに、暮くらしていることがわかった。けれど、自分じぶんの消息しょうそくは、どうしたら、あのふたりの人形にんぎょうに知しらせることができましょう?
「もし、お友ともだちは、わたしが、まだこうして、街まちの露店ろてんにさらされていると知しったら、不幸ふこうな方かただといって、あわれんでくださるにちがいない。」と、踊おどっている人形にんぎょうはいいました。
「いえ、そうでありません。きっと、ふたりのお友ともだちは、いまごろは、怠屈たいくつして、この明あかるい華はなやかな街まちをもう一度ど見みたいと思おもっていなさるでしょう。そして、あなたの身みの上うえをうらやましがっていなさるにちがいありません。」と、電気でんきスタンドは、いいました。なぜなら、ひとのことというものは、なんでもよく見みえるものですから……。毎晩まいばん、大空おおぞらに照てらす月つきだけは、みんなの運命うんめいを知しっていました。そして、ある晩ばんであったが、あの街燈がいとうにも、踊おどっている人形にんぎょうのことを話はなしたのです。
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