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雪の上のおじいさん(3)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:すると、どんな気きのたった女おんなでも、おじいさんのしてくれたしんせつに対たいして、お礼れいをいわずにはいられませんでし
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すると、どんな気きのたった女おんなでも、おじいさんのしてくれたしんせつに対たいして、お礼れいをいわずにはいられませんでした。
「それは、ほんとうにお世話せわさまでした。さあおまえは、こちらへおいで。」と、母親ははおやは、おじいさんに礼れいをいいながら、子供こどもの手てを引ひっ張ぱりました。
「さあ、お母かあさんとゆくのだ。」
おじいさんは、目めに涙なみだをためて、子供こどもを見送みおくりながらいいました。
子供こどもは、振ふり返かえりながら、母親ははおやに連つれられてゆきました。そして、その姿すがたは、だんだんあちらに、人影ひとかげに隠かくれて見みえなくなりました。おじいさんは、ぼんやりと、しばらく見送みおくっていましたが、もういってしまった子供こどもをどうすることもできませんでした。また、いつかふたたびあわれるということもわからなかったのです。
おじいさんは、自分じぶんの用事ようじのことを思おもい出だしました。そして、また自分じぶんのゆくところをたずねて、町まちの中なかをうろついていました。ちょうど、年寄としよりのまい子ごのように、おじいさんはうろうろしていたのであります。
「ああ、今日きょうは、もう遅おそい。それに降ふりになりそうだ。早はやく、村むらへ帰かえらなければならん。」と、おじいさんは思おもいました。
おじいさんは、また、自分じぶんの村むらをさして帰途きとについたのであります。途中とちゅうで、日ひは暮くれかかりました。そして、とうとう雪ゆきが降ふってきました。
それでなくてさえ、目めのよくないおじいさんは、どんなに困こまったでしょう。いつのまにか、どこが原はらだやら、小川おがわだやら、道みちだやら、ただ一面めん真まっ白しろに見みえてわからなくなりました。
おじいさんは、つえをたよりに、とぼとぼと歩あるいてゆきました。そのうちに、風かぜが強つよく吹ふいて、日ひがまったく暮くれてしまったのです。
まだ、村むらまでは、二里りあまりもありました。朝あさくるときには、小鳥ことりのさえずっていた林はやしも、雪ゆきがかかって、音おともなく、うす暗ぐらがりの中なかにしんとしていました。
かわいそうに、おじいさんは、もう疲つかれて一歩ぽも前まえに歩あるくことができなくなりました。だれかこんなときに、通とおりかかって、自分じぶんを村むらまでつれていってくれるような人ひとはないものかと祈いのっていました。
雪ゆきは、ますます降ふってきました。おじいさんは、雪ゆきの上うえにすわって、目めをつぶりました。そして、一心しんに祈いのっていました。
すると、たちまちあちらにあたって、がやがやと、なにか話はなし合あうようなにぎやかな声こえがしました。おじいさんは、なんだろうと思おもって、目めを開あけてその方ほうを見みますと、それは、みごとにも、ほおずきのような小ちいさな提燈ちょうちんを幾いくつとなく、たくさんにつけて、それをばみんなが手てに手てにふりかざしながら、真まっ暗くらな夜よるの中なかを行列ぎょうれつをつくって歩あるいてくるのです。
「なんだろう……。」と、おじいさんは、目めをみはりました。その提燈ちょうちんは、赤あかに、青あおに、紫むらさきに、それはそれはみごとなものでありました。
おじいさんは、この年としになるまで、まだこんなみごとな行列ぎょうれつを見みたことがなかったのです。これはけっして人間にんげんの行列ぎょうれつじゃない。魔物まものか、きつねの行列ぎょうれつであろう。なんにしても、自分じぶんはおもしろいものを見みるものだと、おじいさんは喜よろこんで、見みていました。
すると、その行列ぎょうれつは、だんだんおじいさんの方ほうへ近ちかづいてきました。それは、魔物まものの行列ぎょうれつでも、また、きつねの行列ぎょうれつでもなんでもありません。かわいらしい、かわいらしいおおぜいの子供こどもの行列ぎょうれつなのでありました。
その行列ぎょうれつはすぐ、おじいさんの前まえを通とおりかかりました。子供こどもらは、ぴかぴかと光ひかる、一つの御輿みこしをかついで、あとのみんなは、その御輿みこしの前後ぜんご左右さゆうを取とり巻まいて、手てに、手てに、提燈ちょうちんを振ふりかざしているのでした。おじいさんは、だれが、その御輿みこしの中なかに入はいっているのだろうと思おもいました。
このとき、この行列ぎょうれつは、おじいさんの前まえで、ふいに止とまりました。おじいさんは不思議ふしぎなことだと思おもって、黙だまって見みていますと、今日きょう、町まちで道みちに迷まよって、公園こうえんの前まえで泣ないていた子供こどもが、列れつの中なかから走はしり出でました。
「おお、おまえかい。」といって、おじいさんは喜よろこんで声こえをあげました。
「おじいさん、僕ぼくが迎むかえにきたんです。」と、その子供こどもはいいますと、不思議ふしぎなことには、いままで五つか、六つばかりの小ちいさな子供こどもが、たちまちのうちに十二、三の大おおきな子供こどもになってしまいました。
「さあ、みんな、おじいさんを御輿みこしの中なかに入いれてあげるのだ。」と、子供こどもは、大おおきな声こえで命令めいれいを下くだしますと、みんなは、手てに、手てに、持もっている提燈ちょうちんを振ふりかざして、
「おじいさん、万歳ばんざい!」
「万歳ばんざい!」
「おじいさん、万歳ばんざい! 万歳ばんざい!」
みんなが、口々くちぐちに叫さけびました。そして、おじいさんを御輿みこしの中なかにかつぎこみました。
「さあ、これから音楽おんがくをやってゆくのだ。」と、例れいの子供こどもは、また、みんなに命令めいれいをしました。
たちまち、いい笛ふえの音色ねいろや、小ちいさならっぱの音ねや、それに混まじって、歩調ほちょうを合あわし、音頭おんどをとる太鼓たいこの音おとが起おこって、しんとしたあたりが急きゅうににぎやかになりました。
おじいさんは、うれしくて、うれしくて、たまりませんでした。そっと輿こしの中なかからのぞいてみますと、あの子供こどもが、みんなを指揮しきしています。そして、みんなが口々くちぐちに、なにかの歌うたをかわいらしい声こえでうたいながら行儀ぎょうぎよく、赤あか・青あお・紫むらさきの提燈ちょうちんを振ふりかざして歩あるいてゆきました。
――一九二一・一一作――
 
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