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善いことをした喜び_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: さよ子こは、叔母おばさんからもらったおあしを大事だいじに、赤あかい毛糸けいとで編あんだ財布さいふの中なかに入いれてしま
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 さよ子こは、叔母おばさんからもらったおあしを大事だいじに、赤あかい毛糸けいとで編あんだ財布さいふの中なかに入いれてしまっておきました。秋あきのお祭まつりがきたら、それでなにか好すきなものを買かおうと思おもっていました。
もとよりたくさんのお金かねではなかったのです。けれど、さよ子こはそれを楽たのしみにして、ときどき机つくえのひきだしの中なかから、赤あかい毛糸けいとの財布さいふを取とり出だしては、振ふってみますと、中なかに銭ぜにがたがいに触ふれ合あって、かわいらしい鳴なき音ねをたてるのでありました。
さよ子こは、それでほおずきを買かおうか、南京玉なんきんだまを買かおうか、それともなにかおままんごとの道具どうぐを買かおうかと、いろいろ空想くうそうにふけったのであります。すると、なんとなく、その日ひが待まち遠どおしかったのでありました。
まことに、いい天気てんきの日ひで、のら仕事しごとの忙いそがしかったときでありました。家々いえいえのものは、みんな外そとの圃はたけに出でていて、家うちにいるものはほとんどありませんでした。
家うちの前まえには、大おおきな銀杏樹いちょうのきがありました。その葉はがしだいに色いろづいてきました。さよ子こは壊こわれかかった石段いしだんに腰こしをかけて、雑誌ざっしを読よんでいました。そのとき、同おなじように、隣となりのおばあさんが、やはり家うちの前まえに出でて、日当ひあたりのいい暖あたたかな場所ばしょにむしろを敷しいて、ひなたぼっこをしていました。
おばあさんは、日ひごろからたくさんなお金かねをためているといううわさがたっていました。けれど、おばあさんは、なかなかのけちんぼうで、めったにそのお金かねを出だすということをしませんでした。
おばあさんは、このごろ、ひまさえあればお金かねのことを考かんがえていました。自分じぶんが死しんでしまったら、この金かねをどうしようかと思おもいました。これまでいっしょうけんめいでためた金かねを、他人たにんにやってしまうのは、まことに惜おしいことだと思おもいました。せがれにも、嫁よめにも、この金かねはやれない、みんな自分じぶんが死しんでゆくときには、持もってゆかなければならぬと思おもいました。
「いったい、いくらあるだろう。今日きょうは、せがれも嫁よめも留守るすだから、ひとつ勘定かんじょうしてみよう。」と、おばあさんは、だれもいないのを幸さいわいに、懐ふところから大おおきな財布さいふを出だして、口くちを開ひらいて、楽たのしみながら算かぞえはじめたのであります。
「なかなかたくさんある。これをせがれめに見みつけられたら大事だいじだ。しかし、せがれも嫁よめも、まだ帰かえってくるはずがないから安心あんしんだ。」と、おばあさんは独ひとり言ごとをしながら、しわの寄よったてのひらに銭ぜにを並ならべて、細ほそい指先ゆびさきで勘定かんじょうしては、前垂まえだれの中なかに移うつしていました。そして、すっかり勘定かんじょうしてしまったら、それを財布さいふの中なかにしまうつもりでおりました。
ほんとうに暖あたたかな、よく晴はれた空そらに太陽たいようが燃もえて、風かぜすらない秋日和あきびよりでありました。大おおきな銀杏樹いちょうのきの上うえで、小鳥ことりが鳴なくほかに、だれもおばあさんを脅おびやかすものはなかったのです。
「おばあさん。」と、雑誌ざっしに読よみ飽あきたさよ子こは、あちらの石段いしだんから、こちらを向むいて、さびしいので呼よびかけました。
もし、おばあさんが機嫌きげんがよかったら、そばへいって、いま読よんだおもしろいおとぎばなしを、おばあさんに聞きかしてやろうと思おもったのです。それは金銀きんぎん宝石ほうせきを積つんだ幽霊船ゆうれいぶねが、ある港みなとへ着ついたときに、そのお金かねや宝石ほうせきがほしいばかりに、幽霊ゆうれいを自分じぶんの家うちにつれてきて泊とめた、欲深者よくふかものの話はなしでありました。
「おばあさん、おもしろいお話はなしを聞きかしてあげましょうか。」と、またさよ子こはいいました。
けれど、おばあさんは、返事へんじをしませんでした。
これはきっと機嫌きげんがよくないのだろうと思おもって、さよ子こは、また雑誌ざっしを開ひらいて、ほかのお話はなしを読よんでいたのでありました。
「うるさい子�先ゆびさきで勘定かんじょうしては、前垂まえだれの中なかに移うつしていました。そして、すっかり勘定かんじょうしてしまったら、それを財布さいふの中なかにしまうつもりでおりました。
ほんとうに暖あたたかな、よく晴はれた空そらに太陽たいようが燃もえて、風かぜすらない秋日和あきびよりでありました。大おおきな銀杏樹いちょうのきの上うえで、小鳥ことりが鳴なくほかに、だれもおばあさんを脅おびやかすものはなかったのです。
「おばあさん。」と、雑誌ざっしに読よみ飽あきたさよ子こは、あちらの石段いしだんから、こちらを向むいて、さびしいので呼よびかけました。
もし、おばあさんが機嫌きげんがよかったら、そばへいって、いま読よんだおもしろいおとぎばなしを、おばあさんに聞きかしてやろうと思おもったのです。それは金銀きんぎん宝石ほうせきを積つんだ幽霊船ゆうれいぶねが、ある港みなとへ着ついたときに、そのお金かねや宝石ほうせきがほしいばかりに、幽霊ゆうれいを自分じぶんの家うちにつれてきて泊とめた、欲深者よくふかものの話はなしでありました。
「おばあさん、おもしろいお話はなしを聞きかしてあげましょうか。」と、またさよ子こはいいました。
けれど、おばあさんは、返事へんじをしませんでした。
これはきっと機嫌きげんがよくないのだろうと思おもって、さよ子こは、また雑誌ざっしを開ひらいて、ほかのお話はなしを読よんでいたのでありました。
「うるさい子こだ。何度なんど呼よんでも黙だまっていてやろう。」と、おばあさんは、口くちの中なかでいって、知しらん顔かおをして銭ぜにを勘定かんじょうしていました。
そのうちおばあさんは、やっと銭ぜにを勘定かんじょうしてしまいました。思おもったよりもたくさんなのを喜よろこんで、またもとのように財布さいふに移うつしました。そして、もしや、身みの周囲まわりに銭ぜにを落おとしはしなかったかと、ぐるぐる見みまわしていました。
このとき、太鼓たいこをたたいて、一人ひとりの哀あわれなじいさんの乞食こじきが、「南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう。」といって、家うちの前まえに立たって、あわれみを乞こうたのであります。
けちんぼうのおばあさんは、乞食こじきを見みるのが大だいきらいでありました。断ことわるのもめんどうと思おもって、手てににぎっていた財布さいふを、急きゅうにむしろの下したに隠かくして、目めをつぶって眠ねむったふりをしていたのであります。髪かみの白しろくなった、目めのしょぼしょぼとしたじいさんの乞食こじきは、いつまでもそこに立たって題目だいもくを唱となえていましたが、おばあさんは、まったく眠ねむってしまったように目めをふさいで、じっとして身動みうごきすらいたしませんでした。
しばらくして、乞食こじきは、もはや望のぞみのかなわないものと思おもってか、その家いえの前まえを立たち去さって、さよ子このいる方ほうへと歩あるいてきました。やがて、さよ子この家うちの前まえに立たって、太鼓たいこをたたいて哀あわれな声こえで題目だいもくを唱となえたのであります。
さよ子こは、おじいさんの乞食こじきを見みると、急きゅうに目めの中なかに、いっぱいの涙なみだがわいてきました。ほんとうにふしあわせの人ひとだと思おもったからであります。さよ子こは、懐ふところの中なかから、赤あかい毛糸けいとの財布さいふを取とり出だしました。そして、その中なかの銭ぜにをおじいさんにやってしまったのであります。
「ありがとうございます。」と、おじいさんの乞食こじきは、いくたびとなく、さよ子こに向むかってお礼れいを申もうしました。
さよ子こは、自分じぶんは、なんにも買かわんでいいから、もっとお金かねがあったら、この哀あわれなおじいさんにやりたいものだと、心こころの中うちで思おもっていました。
「ありがとうございます。」と、また最後さいごに繰くり返かえしていって、おじいさんの乞食こじきは、家いえの前まえを立たち去さりました。
さよ子こは、石段いしだんの上うえに立たって、いつまでも哀あわれな乞食こじきの行方ゆくえを見守みまもっていましたが、いつしか知しらず、その太鼓たいこの音おとは遠とおくかすかになっていったのであります。
その夜よ、さよ子こは、お母かあさんに昼間ひるまの乞食こじきのことを話はなしました。
「いまごろ、あの乞食こじきは、どうしたでしょうか。」とききますと、お母かあさんも、目めに涙なみだをためて、
「それでも、おまえのやったお金かねで、暖あたたかいお芋いもでも買かって食たべることができるだろう。」といわれました。
これを聞きいたさよ子こは、心こころから自分じぶんはいいことをしたと思おもいました。
一方ぽう、おばあさんは、ほんとうに居眠いねむりをしてしまいました。そして大事だいじな財布さいふを、むしろの下したに入いれたことを忘わすれてしまいました。
晩方ばんがた、家うちに帰かえってきたせがれが、その財布さいふを見みつけて大喜おおよろこびをしました。酒好さけずきのせがれは、そのお金かねを見みると我慢がまんすることができなくて、酒さけを飲のみに出でかけたそうです。
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