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世の中のこと_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: たいそう外科的手術げかてきしゅじゅつを怖おそろしがっている、若わかい婦人ふじんがありました。もし、すこしぐらいの痛いた
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 たいそう外科的手術げかてきしゅじゅつを怖おそろしがっている、若わかい婦人ふじんがありました。
もし、すこしぐらいの痛いたさを我慢がまんをして、手術しゅじゅつを受うけるなら、十分ぶん健康けんこうを取とり返かえすことができるのを、どうしても、その婦人ふじんは、手術しゅじゅつを受うけることを欲ほっしなかったのです。
季候きこうの変かわりめになると、婦人ふじんは、青あおい顔色かおいろをしていました。
「あなたほどの若わかさで、そんな青あおい顔色かおいろをなさっていてはいけません。早はやく手術しゅじゅつをお受うけになって、さっぱり病気びょうきを治なおしておしまいなさいまし。」と、知しっている人ひとは、いいました。
「なんとおっしゃっても、私わたくしは、手術しゅじゅつを受うけるのが怖おそろしいのでございます。」と、婦人ふじんは、光ひかるメスを、はさみを考かんがえると、身みぶるいをしました。
「奥おくさん、T町ティーまちに有名ゆうめいな先生せんせいがあります。この方かたの手術しゅじゅつなら、まったく安心あんしんして受うけられます。けっして二度どとやり直なおしをするようなことはありませんから、ぜひここへいって見みておもらいになったらいかがですか。」と、心こころから、婦人ふじんのことを思おもって、いってくれたのでした。さすがに、気きの弱よわい婦人ふじんであったが、いくらか心こころが動うごきはじめました。
「T町ティーまちのなんというお医者いしゃさまでございますか?」と、教おしえてくれた人ひとに、ききました。
「M病院エムびょういんといえば、その界隈かいわいで知しらぬものがないほど、有名ゆうめいなものです。」と、その人ひとは、答こたえました。
「まあ、そんなにいいお医者いしゃさまが、あったのでございますか?」
婦人ふじんは、なぜ早はやくそれを知しらなかったろう。そうすれば、こんなに長ながい間あいだ、この病やまいに苦くるしまなくってもよかったのにと、急きゅうに、見みもしない、その医者いしゃを心こころの中うちで尊敬そんけいしました。その後ご、彼女かのじょは、いろいろの人ひとに、T町ティーまちにあるM病院エムびょういんの話はなしをして、はたして、それはほんとうのことかと、たしかめようとしました。まれにはまったくその名なを知しらぬものもあったけれど、また中なかには、よくその病院びょういんの名なを知しっていて、「その病気びょうきにかけては、二人ふたりとない名人めいじんだという話はなしです。」と、いうものもあったので、彼女かのじょは、いよいよ進すすんで、その病院びょういんへゆく気きになったのであります。
彼女かのじょが、手術しゅじゅつを受うけることを覚悟かくごしたと知しったときに、彼女かのじょの身みを案あんじた周囲しゅういの人ひとたちは、それは、よく決心けっしんしたといって、喜よろこんだのでした。
そこから、T町ティーまちまでは、遠とおかったのであります。乗のり物ものによっても、一日にちは費ついやされたのです。気きじょうぶな叔母おばさんをつきそいに頼たのんで、彼女かのじょはT町ティーまちにゆき、そして、病院びょういんの門もんをくぐったのでした。
患者かんじゃの控ひかえ室しつは、たくさんの人ひとで、いっぱいでした。左右さゆうにすわっている人々ひとびとのようすをきくと、いずれも彼女かのじょと同おなじ病気びょうきであるらしいので、いまさら、その名医めいいということが感かんぜられたのでありました。
そのうちに、看護婦かんごふが入はいって、彼女かのじょのかたわらにきました。
「あなたですか、院長いんちょうさんに見みてもらいたいと、おっしゃられたのは?」と、看護婦かんごふはたずねました。
「さようでございます。」と、彼女かのじょは、答こたえました。
「お気きの毒どくですが、院長いんちょうさんは、ただいま、ご旅行中りょこうちゅうなんですが……。」
こう看護婦かんごふがいったとき、若わかい婦人ふじんの顔色かおいろは、落胆らくたんと失望しつぼうのために、変かわりました。彼女かのじょは、どうしていいかわからなかったからです。しばらく黙だまって考かんがえていました。
「代診だいしんでは、いけませんか。」と、看護婦かんごふが、問といました。
彼女かのじょは、あれほど、迷まよった末すえに、ようやく決心けっしんをしてきたのを、いまさら代診だいしんにみてもらうまでもないと、いくぶん腹立はらだたしくなりました。
「叔母おばさん、私わたし、また、くることにしますわ。」といって、彼女かのじょは、立たち上あがりました。
「せっかく、きましたのに……。」と、叔母おばさんも彼女かのじょの後方うしろに従したがうよりしかたがなかったのでした。
彼女かのじょは、門もんを出でるときに、どうして、みんながあのように、代診だいしんで満足まんぞくしているのだろう? 院長いんちょうさんには、めったにみてもらえないからかしらんとさえ思おもいました。そして、彼女かのじょはむなしく、家いえにもどってしまったのです。その後ごふたたび、彼女かのじょが、出でかけるはずもなかったから、病気びょうきはついに治なおらずにしまいました。
ところが、その後ごになってきくと、M病院エムびょういんでは、院長いんちょうよりも代診だいしんのほうが、はるかに手術しゅじゅつが上手じょうずなので、院長いんちょうには、時ときに仕損しそんじはあるが、代診だいしんに限かぎってけっして仕損しそんじがないということでした。
「世よの中なかのことって、みんなこうしたものね。」と、さすがに、これをきいたとき、婦人ふじんは、歎息たんそくをつきました。いつか代診だいしんより、院長いんちょうが偉えらいと思おもった、自分じぶんの愚おろかしさを悟さとったのでした。
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