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夜の進軍らっぱ(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: おじいさんの目めからは、涙なみだが流ながれていました。「今夜こんやは、泊とまっていらっしゃい。」と、主人しゅじんはしん
(单词翻译:双击或拖选)
 おじいさんの目めからは、涙なみだが流ながれていました。「今夜こんやは、泊とまっていらっしゃい。」と、主人しゅじんはしんせつにいってくれたけれど、おじいさんは、戦争せんそうにいっている息子むすこのことを思おもえば、また息子むすこと同おなじような兵士へいしたちのことを思おもえば、体からだじゅうが熱あつくなって、これしきの寒さむさがなんだ。暗くらい道みちがなんだという気持きもちになりました。さいわいにいい月夜つきよだったので、主人しゅじんにお礼れいをいって、そこを出でました。
町まちをはなれると、さすがに、町まちから村むらの方ほうへいく人影ひとかげは見みえなかったのです。おじいさんは、独ひとり雪道ゆきみちを月つきの明あかりで、とぼとぼと歩あるいて帰かえりました。ものすごいような青あおみを帯おびた月つきの光ひかりです。雪ゆきの野原のはらは、銀ぎんのようにかがやいて見みえました。そして遠とおくの森もりの影かげは、黒くろい着物きものをきた人ひとが、じっとして雪ゆきの中なかに立たっているのに似にています。おじいさんは、いましがたラジオできいた、兵隊へいたいさんの歌うたが耳みみについて、思おもい出だされて、熱あつい涙なみだが、ほろほろと流ながれてきました。
ゴウ、ゴウと、音おとをたて北風きたかぜが募つのりはじめました。空そらを仰あおげば、月つきをかすめて、黒くろい雲くもが、幾いくつも連つらなって、きつねかおおかみの群むれが、後あとから後あとから駈かけていくように、西にしの方ほうから、東ひがしの空そらに向むかって走はしっていました。そして、東ひがしの空そらの果はては真まっ暗くらになって、星ほしの光ひかりすら見みえなかったのです。
「また、吹雪ふぶきになってきた。」と、おじいさんは独ひとり言ごとをして、野原のはらの道みちを急いそいでいました。わずかに昼間ひるま、人ひとの通とおった足跡あしあとが、雪ゆきの面おもてがついているばかりでした。
たちまち、月つきの光ひかりはかげってしまって、風かぜにまじって、雪ゆきがちらちらと降ふり出だしておじいさんのえりもとへ入はいったのです。
「とうとう困こまったことになったぞ。」
まだあちらの村むらへ着つかないうちに、まったく目めも口くちも開あけられないような吹雪ふぶきとなってしまいました。おじいさんは、一歩ぽも、この吹雪ふぶきに向むかっては歩あるけなくなりました。
それでもおじいさんは、ようやくの思おもいで、村むらはずれの小ちいさな神社じんじゃにたどりつきました。そして軒下のきしたにちぢこまって、吹雪ふぶきのやむのを待まっていましたが、知しらぬ間まに疲つかれが出でて、うとうとと眠ねむってしまったのです。社やしろの境内けいだいにあるすぎの木きの枝えだから、ドタ、ドタといって、積つもった雪ゆきが落おちました。すると粉雪こなゆきが風かぜに舞まって、おじいさんの上うえへ吹ふきかかりました。
「あっ、眠ねむってはいけない、よくこれで凍こごえ死じぬのだ。」
おじいさんは、眠ねむいのを我慢がまんして、夜明よあけを待まとうと思おもいました。そして、道みちがわかるようになったら、帰かえろうと考かんがえていました。
おじいさんは、いくら眠ねむるまいと思おもっても、またうとうとと眠ねむってしまったのでした。このとき、がやがやという人ひとの声こえがして、おじいさんは、ふたたびおどろいて目めをさますと、吹雪ふぶきはやんで、月つきの光ひかりが、明あかるく雪ゆきの世界せかいを照てらしていました。
「いまごろ、なんだろうな。」
顔かおを上あげて、あちらの道みちを見みると、旗はたを立たて、町まちの方ほうへいく、出征兵士しゅっせいへいしを見送みおくる人々ひとびとの群むれでした。
「おお、どこか遠とおい村むらの人ひとで、停車場ていしゃじょうへ、兵隊へいたいさんを送おくっていくのだな。」
おじいさんは、神前しんぜんの階段かいだんから身みを起おこました。そして、命いのちを助たすけてくだされた神かみさまに向むかって、手てを合あわせて拝おがんでから、道みちの方ほうへ、雪ゆきの中なかを泳およぐようにして出でていきました。
「ご苦労くろうさんです。たいそう早はやいお出でかけですのう。」と、おじいさんは、声こえをかけました。
「はい、一番ばんに乗のりますのに、おくれてはたいへんだと思おもって、早はやめに出でてきました。」と、兵隊へいたいさんのお父とうさんらしい人ひとが、いいました。
「吹雪ふぶきがやんでしあわせです。悴せがれも出征しゅっせいしていますので、私わたしも、お見送みおくりさせてもらいます。」と、おじいさんは、みんなの中なかへ加くわわりました。
「あんたは、また、どうしてこんなにお早はやく。」と、問とわれたので、おじいさんは、町まちの醤油屋しょうゆやでラジオを聞きいて、帰かえりにひどい吹雪ふぶきに閉とじこめられたことを歩あるきながら物語ものがたったのです。
 
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