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猟師と薬屋の話(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: これにひきかえて、母子おやこのくまを打うたずにもどったやさしい猟人かりゅうどは、どうか、はやく、あの母子おやこのくまは
(单词翻译:双击或拖选)
 これにひきかえて、母子おやこのくまを打うたずにもどったやさしい猟人かりゅうどは、どうか、はやく、あの母子おやこのくまはどこかへ隠かくれてくれればいいと思おもいながら歩あるいてきました。
家いえではおかみさんが待まっていました。
「うちの人ひとは、久ひさしぶりで山やまへはいったのだが、いい獲物えものを見みつけて、うまくしとめて、無事ぶじにもどってくれればいい。そして、くまのいがいい値ねで売うれたら、子供こどもにも春着はるぎが買かってやれるし、暮くらしもよくなるだろうし、こんないいことはないのだが。」と、思おもっていました。そこへ、夫おっとがから手てで、帰かえってきましたから、
「獲物えものが見みつかりませんでしたか。」と、ききました。猟師りょうしは、見みつけたが、母子おやこぐまが、平和へいわに無邪気むじゃきに、遊あそんでいるので、かわいそうで打うてなかったと答こたえました。
すると、おかみさんが、またやさしい心こころの人ひとで、
「それは、いいことをなさいました。親子おやこの情じょうに、人間にんげんもくまも、かわりはないでしょう。思おもいやりがあるなら、どうしてそれが打うたれましょう。また、日ひをあらためて、お出でかけなさいまし。」といったのであります。
二、三日にちたってから、猟師りょうしは、ふたたび鉄砲てっぽうをかついで出でかけました。すると途中とちゅうで、なんでもこのあいだのこと、猟師りょうしが山やまでくまを打うちそこねて、くまのために大おおけがをして山やまを下くだったという話はなしをききました。
「それなら、自分じぶんがもどるときに、出であったあの猟師りょうしでなかろうか。たいへん自慢じまんをしていたが、きっと打うちそこねて、くまにかみつかれたのかもしれない。」と、猟師りょうしは考かんがえました。
一度ど、そんなことがあると、くまは気きがたっていますから、もし、こんど人間にんげんを見みたら、どんなに怒おこって飛とびかかってくるかもしれないと考かんがえましたから、猟師りょうしはすこしも油断ゆだんをせずに山やまの中なかへはいってゆきました。
この前まえ、母ははぐまと子こぐまの遊あそんでいた、裏山うらやままでやってきました。ああ、ここだったなと思おもってながめますと、そのときと同おなじように、とちの木きの葉はは、黄色きいろにいろづいて、熟じゅくした実みがいくつも、いくつもぶらさがっていました。しかし、くまの姿すがたは、今日きょうは見みえませんでした。
「あの猟師りょうしの打うったくまというのは、あのときの母ははぐまではなかったろうか。」と、猟師りょうしは思おもいました。
もし、そうであったら、あの母ははぐまと子こぐまは、いまごろどうなっているだろうと考かんがえながら、一歩ぽ、一歩ぽ、奥おくへとはいってゆきました。
たちまち、猟師りょうしは、草くさの倒たおれているところへ出でました。それは、くまが、もうすこし前まえに通とおったあとでした。こうなると、いつ、どこからくまが飛とび出だしてくるかわからないので、猟師りょうしは用心ようじんの上うえにも用心ようじんをして、ゆきますと、どこか、あちらのがけのあたりで、ものすごいうなり声ごえのようなものがきこえました。
「あ、こないだの猟師りょうしに打うたれた、くまが傷きずをうけて倒たおれているのだな。」と、猟師りょうしはすぐに頭あたまに浮うかびました。
「よし、おれが、今日きょうはしとめてくれるぞ。」と力りきんで、猟師りょうしは足音あしおとを忍しのんで、近ちかよって、そのようすをうかがいました。ところがどうでしょう。倒たおれているのは、まさしくこのあいだの母ははぐまであって、子こぐまが、かなしそうに、お母かあさんの傷口きずぐちをながめながら、なめては、またなめているではありませんか。
これを見みた猟師りょうしは、どうして、鉄砲てっぽうを向むけることができましょう。彼かれは、気きづかれないように後あとずさりをしました。そして、また、くまを打うたずに家いえへもどったのでありました。
「ああ、暮くらしのためといいながら、なんて殺生せっしょうするのはいやな商売しょうばいだろう。あのくまを殺ころすのはぞうさもないが、金かねのために、そんなむごいことができようか。」と、猟師りょうしがため息いきをつきました。
ところが、困こまったことには、おかみさんが重おもいかぜにかかって、どっさり床とこについたのです。貧乏びんぼうで、医者いしゃにかけるどころか、あたたかなおいしいものをたべさせることもできません。頼たのむところはなし、どうすることもできなく、猟師りょうしは自分じぶんのだいじな鉄砲てっぽうを売うろうと決心けっしんしました。なぜならほかに、売うるような金目かねめの品物しなものは、なんにもなかったからです。
「これを手放てばなしてしまえば、明日あしたから、自分じぶんは、猟りょうにゆくことができない。」と、思おもいましたが、妻つまが病気びょうきなら、そんなことをいっていられませんので、ある朝あさ、鉄砲てっぽうを持もって、町まちへ出でかけようとしました。
ちょうど、そこへ、旅たびの薬屋くすりやさんがやってきました。あれから、くま打うちにいかなかったかと、たずねましたから、猟師りょうしが、その後ごのことをすっかり打うち明あけて物語ものがたったのでした。だまってきいていた薬屋くすりやさんが、いくたびもうなずいて、
「いや、やさしいお心こころがけです。それでこそ、ほんとうの人間にんげんです。私わたしは、こうして真正しんせいのくまのいをさがしていますのも、人ひとの命いのちを助たすけたいためからで、ただ金かねもうけのためばかりではありません。きけばお困こまりになって、商売道具しょうばいどうぐをお売うりなさるとか、とんだことです。私わたしは、ここに金かねを置おいてゆきますから、このつぎきますまでに、そんなかわいそうなくまでない、もっと恐おそろしい大おおぐまをしとめて、きもをとっておいてください。」といって、金かねを渡わたしてゆきました。
あとで、この話はなしきいた村むらの人ひとたちは、猟師りょうしをほめれば、また薬屋くすりやさんを感心かんしんな人だひとといって、ほめたのであります。
 
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