入道前関白太政大臣、右大臣に侍りける時、百首歌よませ侍りけるに、立春の心を
5 けふといへばもろこしまでもゆく春を都にのみと思ひけるかな
皇太后宮大夫俊成
【通釈】
5 今日は立春というので、遥か西の唐土までも行く春を、わが国の都にだけやって来たと思ったよ。○入道前関白太政大臣 藤原兼実。○百首歌 治承二年(一一七八)右大臣家百首。百首全体は断簡として伝わるにすぎないが、七月に追進した俊成の詠は長秋詠藻所収。○けふといへば 特定の日についていう句。同時代の作例は多い。○二・三句 「もろこし」は古代の中国。春は東からやって来るという五行説にもとづいた考え。「遥かなるもろこしまでもゆくものは秋の寝覚めの心なりけり」(千載・秋下・大弐三位)。