「目」は馬を意味していた、馬の放牧地
東京にある「目黒」の地名は、ここに目黒不動尊があったことによると誤解されやすい
が、不動尊の誕生前から「めぐろ」という地名だったことはたしかのようだ。
一九六一(昭和三十六)年発行の『目黒区史』によれば、めぐろの「め」は駿馬の馬
(め)という意味、「くろ」は畔あぜ道を指す古語で、最初は「馬畔」と書いていたのだ
という。
目黒区周辺には、駒場、駒沢、上馬、下馬など、馬に関わる地名がたくさんあり、かつ
てこの一帯に馬の放牧場が多かったことが推察される。
牧場の管理者は、畔道を通って馬の見回りをする。その畔道に囲まれた土地が自分の管
理地だったからだ。これが「めぐろ」の名の由来になったのだという。
鎌倉時代に幕府の公的記録として書かれた『吾あ妻ずま鏡かがみ』一一九〇(建けん久
きゆう元)年の十一月の条には、武蔵国の武士として目黒弥五郎の名が登場する。彼の名
前が地名によるものとすれば、すでにこの時代には「目黒」と表記されるようになってい
たようだ。
区が編纂した史書のなかで、「めぐろ=馬畔」説をもっとも有力としていることにな