戦に敗れ、この地に逃れた「尾瀬大納言」
ミズバショウの群生で知られ、文化財保護法における特別天然記念物「尾瀬」は、群馬・
福島・新潟の県境に広がる地域で、日光国立公園の一部にもなっている。
国立公園のなかでも、とくに自然保護の重要性のある場所は「特別保護地区」に指定さ
れるが、尾瀬一帯は、この指定地区になっている。
尾瀬湿地帯は、燧ひうちヶ岳から噴出した溶岩流が、只見川の流れをせき止めた湖に、
周囲から土砂が入り込んで形成されたもの。そして、尾瀬沼は只見川の流れではなく、沼
尻川の水がせき止められた跡である。
この尾瀬沼は、湖水面の標高が一六六五メートルで、本州ではもっとも高地にある大き
な湖だが、いまも岸辺から中央に向かって水生植物が繁茂をつづけている状態だ。
つまり、いまだに湿地帯への成長過程にあるということになる。
このように、一万年近い年月をかけて形成された尾瀬一帯だが、ここが尾瀬という地名
になったのは、源平時代にさかのぼる。
平家追討の手を逃れた尾瀬大納言が、この地に永住したことに由来する地名なのだ。
いまは、福島県檜ひの枝え岐また村の中なか土ど合あい公園内に彼の像が建てられて、
名前の由来を伝えている。