新潟と山形の県境には「日本国」という名の山がある
新潟県岩船郡山さん北ぼく町と山形県鶴岡市の県境に、おもしろい名前の山がある。その名は、「日本国」。山の名前なのに、日本国山ではなくて日本国なのだ。
摩耶山系の朝日連峰が日本海に向かって達する稜線上、標高五五五・四メートルのこの山の由来には諸説ある。
まず一つは、江戸時代に狩りの名手が見事な鷹たかを生け捕りにした。これを見た徳川家光が、「その鷹が捕れた山の名前を日本国とせよ」と言ったという説。
そのほか、鎌倉時代に、幕府に追われた皇子がこの地に隠れ住んでいたことがあり、皇子がいる土地として「山」ではなく、日本国といったという説もある。
そしてもう一つには、その昔、大和朝廷が武力で北へ北へと勢力を伸ばしているとき、蝦夷えみしの勢力を押しのけて、その勢力圏の国境にあたる山に「日本国」という大和勢力のシンボルとしての名前を付けたのではないかという説もある。
これらの説の由来は定かではないが、いずれにしても、変わった地名であることには違いないということで、地元では、一九八七(昭和六十二)年から「日本国」という地酒も販売しているという。