乙女の滝(おとめのたき) (栃木県那須塩原市)
蛇の化身だった盲目の美女に由来
平成の大合併で誕生した那須塩原市の旧黒磯市板いた室むろ温泉近くにあって、清らかな姿を我々に見せてくれるのが「乙女の滝」だ。
白笹山から流れてくる沢名川にできた滝は、幅五メートル、落差一〇メートル余りで、けっして規模の大きいものではないが、じつに見ごたえがある。季節によって周辺の景観が変わり、水量も変化し、まるで乙女心のように、くるくる変わる姿を見せるのだ。
しかし、名前の由来は、滝の見た目ではない。それは、美しい姿の盲目の乙女が滝の上にあらわれたことによるという。
滝に釣りに来ていた村の青年が、帰ってから、乙女に出会ったことを村人に伝えた。これが広まり、乙女の滝と呼ばれるようになったという。
しかし、乙女は現実の人間ではなかった可能性もあるという。乙女の滝から沢名川をさかのぼった地点の沼ッ原湿原にある子守石には、盲目の蛇にまつわる昔話が伝わっている。乙女は、その蛇の化身ともいわれる。