肘折温泉(ひじおりおんせん) (山形県大蔵村)
肘の骨折も治してしまうという温泉
「肘折温泉」のある山形県最も上がみ郡の大蔵村は、霊峰・月がつ山さんへの登山口にある村だ。そのために古い時代から修験のために霊場に登る僧が多く訪れた。そして、そのなかの一人が発見したのが肘折温泉で、八〇七(大だい同どう二)年のことと伝えられている。
発見のきっかけは、まさに修験道場ならではのもの。修行中に崖から落ちて肘を骨折した僧が、村を流れる銅どう山ざん川の川辺に湧出する温泉を見つける。その湯につかると、すぐに痛みがとれ、骨折も治ったのだという。
そこから肘折温泉の名が生まれたのだが、温泉の効能はたちまち評判を呼び、月山参拝とあわせて湯治客でにぎわうようになる。そして、温泉地としての発展をみて今日に至るというわけだ。
この温泉は、昔ながらの湯治場の形式をいまも残しており、自炊しながらの長逗とう留りゆうが可能な宿もある。また、そうした客のための朝市も、毎日開かれているという。
ちなみに、二〇〇七(平成十九)年には、開湯一二〇〇年を迎える。また、毎年七月になると、「開湯祭」が開催されている。