三輪山(みわやま) (奈良県桜井市)
最古の山名説話といわれる、活玉依毘売の神婚説話
「三輪山」は、奈良盆地東南部、大和高原の西南端にある。盆地側から見るとキレイな円錐形をしており、桧や杉の老木が生い茂る昔ながらの山だ。
また、真ま穂ほ御み諸もろ山やまの神かん奈な備び(神体山)とする大おお神みわ神社は、「大和一いちの宮みや」として古代信仰をいまも根強く伝えている。
『古事記』の崇す神じん天皇段には、意お富お多た多た泥ね古こと活いく玉たま依より毘び売めの神婚説話がみえ、三輪山に残った三み勾わの麻糸にちなみ、「その地に名付けて美和といふなり」とある。
つまり、大和平野の東方にある美しい真穂三輪山は、「倭やまと成す大おお物もの主ぬしの神かみ」の聖域である。ミワの地名は、山の西部を曲がりながら流れている初瀬川から来る「水曲」の地域で、『古事記』には「水みず垣かき」とある。
古代の人々は、三輪山を神山(御諸山・神奈備山)として大切にした。三輪山の谷間に自生する笹百合を三さい枝ぐさといい、付近を佐さ葦い河と名付けたこともあるようだが、古代人は自然に関心が高く、「神山」と書いて「みわやま」と読んだという。
なお、三輪山を詠んだ歌は数多くあり、「三輪山を然も隠すか雲だにも 心あらなも隠さふべしや」(額ぬか田たの王おおきみ)、「三輪山をしかもかくすか春霞 人に知られぬ花や咲くらん」(紀きの貫つら之ゆき)、「心こそゆくへも知らね三輪の山 杉のこずゑのゆふぐれの空」(慈円)などのような歌がある。