烏山(からすやま )(栃木県那須烏山市)
鉄壁の城づくりに貢献した一羽のカラス
その昔、那須の殿様で、資すけ之ゆきという人物がいた。ところが、その弟の資すけ重しげは、兄の資之よりも評判がよかったので、兄はおもしろくなかった。
兄が自分を殺してしまおうと考えていることを知った弟は、住んでいた城を捨て、「烏山」の小さな稲いな積づみという城に逃げ込んだ。
ところが、弟を慕って家来たちがどんどん集まってきてしまい、どうしても大きな城が必要になった。どうせなら頑丈な城をということで、那な珂か川の東の山につくることにした。
いよいよ城づくりの準備をしているときだった。一羽のカラスがどこからか飛んできて、金の幣へい束そくをくわえ、川を越して西のいちばん高い山の頂上にその幣束を落とした。
これを見て弟は、「カラスは熊野の権現様のお使いというから、そのお告げではないか」と、一四一八(応永二十五)年、早速その山に城を築いた。
これにより、城を烏山城と名付けた。その後、何度か戦いはあったものの、一度も敵が足を踏み入れることはなかったという。
そして、この有名な伝説から、「烏山」という地名ができたといわれている。