波照間島(はてるまじま) (沖縄県竹富町)
石垣島に古くから伝わる南方の楽園伝説
「波照間島」は、石垣島から南西に五六キロ、飛行機で約二十分、船で五十分ほどの位置にある。また、この島は北緯二四度なので、南へ少し下ると北回帰線がある。有人島としては日本最南端の島である。
島の名前にある波照間とは、「果てのウルマ(珊瑚礁)」という意味で、島の人々は「ベスマー」と呼ぶ。私たちの島・わが島と誇りをもって呼んでいるのだ。
西側の浜には天然記念物に指定されたミズカンピ(ハマシタン)、周辺一体にはテリハボク(ヤラブ)の群落も見られる。また、フクギも屋敷森として育成されているが、全体的に山や川はなく、隆起珊瑚礁からなる平坦な島である。
この波照間の語源は、前述したとおり「果ての珊瑚礁の島」の意味で、ハテ→果て、ウル→珊瑚、マ→島である。もともとは、石垣島に「ハテウルマ」という楽園が南方に存在するという伝説があって、そこから発生した名前であるらしい。
波照間でも、同じ「ハテウルマ」という楽園がさらに南方にあると思われているそうだから、「波照間=ハテウルマ」というわけではないようだ。
本州の人々は、石垣島に南の楽園を求め、また、石垣島の人々は最南端にある波照間島に楽園を求める。そして、その波照間島の人々まで、もっと先の見知らぬ南方に楽園を求めているとは、人はどこにいても、〝心の楽園〟を求めてやまぬ生き物なのかもしれない。