猿島(さるしま) (神奈川県横須賀市)
日 の遭難の危機を救った白いサル
この「猿島」という地名の由来には、日 上人にまつわる伝説が二つあるので、ここで紹介したい。
まず一つ。時は一二五三(建長五)年、日 上人が上総かずさ(現・千葉県中部)から鎌倉へ船出したところ、急に天候が悪化して船は荒波にもまれてしまった。沈没寸前となったときに日 は船首に立ち、海の神様である龍に題目を唱えた。
すると不思議なことに、大きな龍があらわれて、あたりはウソのように静けさを取り戻し、嵐も収まって事なきを得た。そして、日 はとある島に流れ着き、そのときにあらわれた白いサルによる導きで、現在の米ヶ浜に無事上陸できたのだった。この説にちなんで、猿島と名付けられたという。
もう一つは、龍の出てこない話である。同年に、前述したのと同じ状況で日 上人が鎌倉へ船出したとき、途中でシケにあって船の進む方向がまったくわからなくなってしまった。すると、そこに白いサルがやってきて、船首に立ってこの島へ案内したという。そこから猿島といわれるようになった、というものだ。
その昔、日 上人の話が伝説化する前には、猿島は豊と島しま(十島)と呼ばれていた。猿島、笠島、平島、黒島、裸島、三つ島、蛸貝島など、全部で一〇の島があるので十島、これにあて字で縁起を担ぎ、豊かな島と書いて「豊島」としていた。
いまでも現地には豊島小学校があり、その名はしっかりと残っている。