犬島(いぬじま) (岡山県岡山市)
菅原道真の愛犬にそっくりな岩に由来
瀬戸内海に浮かぶ犬島は、岡山市宝ほう伝でんの沖、約二・五キロのところにあり、周囲約四キロ、面積約〇・六平方キロで、人口約一〇〇人。岡山市で唯一の、人の住む島である。
犬島本島と、犬ノ島、沖おき鼓つづみ島、地じ竹ノ子島、沖竹ノ子島などを含めて、犬島と呼ばれている。
ところでこの島の名前の由来は、べつに犬が多く住んでいるからというわけではない。犬島本島の西には、犬ノ島の犬石明神のご神体があり、これがまさに「犬の形をした巨大な花崗岩」なのである。
これには、菅原道真にまつわる次のような伝説がある。
菅原道真が左遷されて筑つく紫しの国くに(九州の太宰府)へ向かう途中のこと、日暮に嵐にあって島陰に身を寄せていたとき、かすかに犬の吠える声が聞こえてきた。
その声がするほうを見上げてみると、そびえ立つ山の上に、犬の形をした巨岩があった。
それを見た道真は、都にいたときの自分の愛犬を思い浮かべて、身にしみて不思議な縁を感じたという。
まもなく風がおさまって、ふたたび船出の準備をすると、まるで天地にとどろくかのような犬の吠える声がした。この別れを意味するかのような鳴き声は、道真の道中の安全を祈るかのように、いつまでも聞こえつづけていたという。