恋路海岸(こいじかいがん) (石川県能登町)
引き裂かれてしまった若い男女の悲劇
石川県鳳ほう珠す郡の能の登と町には、「恋路海岸」という、じつにロマンティックな地名の海岸がある。
ここが恋路海岸と呼ばれるようになったのは、ある悲恋の伝説があったからなのだという。
その昔、鍋乃という娘が助三郎という若者に命を助けられた。二人は自然と恋仲になり、人目をはばかりつつも逢瀬を繰り返していた。
遠い里から岩づたいに、助三郎は毎晩、鍋乃が灯ともしているかがり火だけを頼りに通っていた。
そこに、二人の仲をねたむ男があらわれ、鍋乃が立てたかがり火を海の深みに移して、助三郎を溺れさせてしまった。助三郎の死を嘆き悲しんだ鍋乃は、助三郎が亡くなった同じ場所に身を投げて果てた。
そして、二人の恋仲を裂いた男は、自らのあやまちを悔いて僧侶になり、男女の仲をとりもつようになったという。
このことから、悲恋の伝説ながらも、「恋路海岸」という美しい名前になったのである。
この恋路海岸には、内浦の優しい女性的な景色、穏やかに湾曲した砂浜に、真っ赤に塗られた鳥居、そして後方に浮かぶ弁天島などがみられ、景観としてもじつに美しい。また、浜辺の片隅には助三郎と鍋乃の像も建っている。
ここは現在「ラブロード」とも呼ばれ、悲恋伝説とは関係なく、カップルなどがよく訪れる観光エリアにもなっている。