舘岩(たていわ) (福島県舘岩村)
巨人「ダイタンボウ」が蹴っ飛ばしたという岩
福島県南会津郡にあった、舘岩村(合併により消滅)の地名の由来の一つに興味深い伝説がある。
それは、巨人「ダイタンボウ」の伝説だ。その昔、舘岩村に住んでいた巨人ダイタンボウは、ある日突然あらわれた巨大岩に激怒し、それを力任せに蹴って、大岩の先の部分を吹っ飛ばしたのだという。
そのときに出現したのが現在もある「立岩」で、吹っ飛んで刺さった岩が「逆岩」と伝えられている。
そして、この「立岩」が地名となって、「舘岩」とあらわすようになったのである。
この舘岩村は、東北地方の最南端、東北地方と関東地方を隔てる帝たい釈しやく山脈の麓にあり、その稜線は、栃木県との県境でもある。
四季折々の自然の表情が美しく、総面積二六三・五五平方キロ、標高六五〇~二〇六〇メートル、村域の約九〇パーセントを急傾斜地で占めているという山村である。
たしかに、この舘岩村名物「立岩」は、急な傾斜地に、樹木を切り分けるようにしてそびえ立ち、伝説の風合いそのままに、何かに削り取られたような雰囲気をかもし出している。
「伝説だから……」「つくり話だから」と思わずに、昔むかし、ダイタンボウという巨人がいて、キリキリと怒って大岩を思いっきり蹴り飛ばしている様子を想像してみるのも、またおもしろいかもしれない。