鴻巣(こうのす) (埼玉県鴻巣市)
大蛇を倒し、村を救ったコウノトリ
埼玉県の鴻巣市。地名を聞いて、すぐイメージされるのはコウノトリだろうが、実際の地名の由来はどうなのだろうか。
かつてこの地に、天む邪さ志しの国くにの国府が置かれたことから、「国府の州」が「こくふのしゅう→こくふのす→こうのす」と転じて、その後に「コウノトリ伝説」が出てきたので、あて字として「鴻巣」と表記するようになったということだ。
コウノトリ伝説とは、鴻巣の宮みや地じに小こ字あざ本もと宮みやというところがあり、そこに小さな祠ほこらが祀られていたという。
そのそばに天をも突かんばかりの一本の大きな樹が立っていた。
そして、毎日のお供え物を少しでも怠ると、必ず祟たたりがあるので、村人たちは苦しい生活のなかから、たくさんのお供え物をしなければならなかった。村人たちはこれを、「樹の神」と呼んで畏おそれるようになった。
あるとき、祠が汚されるという事件が起こると、猛烈な日照りがこの地を襲い、やはり祟りだと騒がれた。
そのようななか、そこに一羽のコウノトリが飛んできて、樹の神のてっぺんに巣をつくって卵を産んだ。大蛇があらわれて卵を飲み込もうとしても、コウノトリはくちばしで頭を突き刺して退治する。
すると、それまでの日照りも収まり、なんと雨まで降り出したのだった。
以来、この「樹の神」が祟りをもたらすことはなくなり、村人はコウノトリに感謝して、ここを「鴻の宮神社」と呼ぶようになった。
それから、ここの地名は鴻巣と呼ばれるようになったのである。