「よしよーし、それか!おいで!」
小さいころからおじいちゃんが大好きだった私。三歳の夏、いつものように家族揃っておじいちゃんの家に泊まりに行った時のことです。みんなで食卓を囲んで談笑していると、お母さんがにやにやしながら近付いて来て、てっぺんだけ髪の薄いおじいちゃんの頭を指差して小声で言いました。
「おじいちゃんの正体なんだか知ってる?」
「人間じゃないの?」
「おじいちゃん本当はね・・・・カッパなんだよ。」
「え!?」
びっくりして慌てる幼い私。
「カッパは頭の上のお皿が乾くと死んじゃうんだよ。・・・あれ?もしかして今乾いちゃってるんじゃない?」 バシャーン!
言い終わるか言い終わらないかのうちに、なんと私は手に持っていたオレンジジュースをおじいちゃんの頭に浴びせていました。
「なんだ・・・?」
一番驚いたのはおじいちゃんです。私を怒ろうにも
「おじいちゃんが死んじゃうー!」
と訳の分からないことを叫びながら、ジュースをかけた張本人は号泣しているのですから。お母さんは事情を説明し、
「ばっかもーん!」
とこっぴどく怒られ、後から私にも
「まさか本当にかけるとは思わなかった。お母さん嘘ついた。ごめんね。」
と謝りに来てくれました。それを聞きながら私は、「お母さんでも怒られることがあるんだ。」と新しい発見をし、「大人も嘘をつくと怒られるんだ。嘘は絶対つかないようにしよう。」と心に誓いつつ、おじいちゃんがカッパじゃなくて良かったとほっとしたのでした。