「ふ、ふなたび!?」と、あんぐりと口を開けたのは一年前。母は佐渡の出身でしたが、その行き帰りの2時間半の船でさえ酔う人でした。しかし、絶対行かないはず…とタカをくくっていた私を裏切り、母はどんどん準備を進めます。
日頃から家事が得意な父は笑顔で賛成し、子ども4人は終始不安の声。しかし、母の決意は固く、ついに意気揚々と出かけてゆきました。
乗船当日、相部屋となったのは一歳違いの他県の女性三人。みな一人で参加というので、「類は友を呼ぶ」状態です。楽しい旅になることを確信した母の声は、ご機嫌そのものでした。
さて、その声を全く聴かなくなってから一か月。
感じた、この不思議な気持ちはなんでしょう。
今までは私の娘(つまり孫)のお世話で遊びに来てくれることも多々あったものの、パッタリなくなると寂しいものです。聞きたいことがあっても、話したいことがあっても、メールも電話も通じません。にわか、もう会えない相手のように感じ、私は『母ロス』に陥ったのでした。急に大切な家族を失うって、こういう気持ち?母の旅を通して、その存在の大きさに驚き、そして日頃からもっと「感謝」しておくべきだったという反省の気持ちが生まれたのです。
そして今日、三か月半の旅を終えて、母は無事に横浜港に戻りました。
「ただいま〜あ」というのんきな声を聴いて、ほっとしたのはもちろん、一回も船酔いで苦しまなかったというのには心底驚きました。幼稚園の帰りに、久しぶりのおばあちゃんに飛びついた娘を見ながら、私もこころいっぱい、母に飛びついていました。
いつもありがとう。いつまでも元気に、そしてこれからも夢を大切に、楽しく生きていってください。