昨年の冬がまだ終わらず、ブドウも枝だけで葉のない時期に抱卵は始まった。その巣はガラス窓の向こうとはいえ2メートル足らずの距離にあり、時には凍るように冷たい雨に打たれながら端然としている親鳥の「表情」を、つぶさに見ることができた。
この夫婦は産卵から2羽のヒナの巣立ちまで1か月ほどかかる過程を2度繰り返した。ヒナの1羽は庭に残っていた羽毛などから見て近所のネコに食べられてしまったらしい。人の親の苦労と比べつつ、思うところが深かった。
昨年末、かなり離れたアパートに引っ越したので、あのナゲキバトのカップルが今年も同じ場所で抱卵するのか確認できない。早春の気配を感じながら、寂しさを禁じ得ないでいる。
練習問題
1、①「私が感動した」のはどれか。
ハトの夫婦が巣をかけてヒナを育てたこと
やっと小説を手に入れたこと
米国の短編小説の素晴らしさ
少年は生命の大切さを分かったこと
2、「かなり離れたアパートに引っ越した」のは誰か。
ネコ
ハトのカップル
ハトのヒナ
筆者
3、「つぶさに」にふさわしい解釈を次の中から一つ選びなさい。
ほとんど
大体
少し
余すところなく