春にフレッシュマン(新人)を迎える企業にとって、言葉、とりわけ「以上でよろしかったでしょうか」「1000円からお預かりします」③といったへんな言葉遣いがまかり通る(横行)ビジネス敬語をどう教えるかは、頭の痛いことだろう。
北原保雄(きたはらやすお)編「問題な日本語」(大修館書店)がベストセラーというのも、日本語を勉強しようと思っている人のほか、新人教育担当者らも手を伸ばしているのではなかろうか。
「あ、いま部長さん、いらっしゃらないよ。どうしてってぇー、外で仕事してるって言うかー」
新人の女の子にこんな調子で電話の受け答えをされたら、取引先の相手はどう思うか。
ま、これなどは極端なケースだとしても。
「御社は火の出る勢いと聞いております」
「彼とは同期で、同じ穴のムジナ(一丘之貉)でした」。
などなど日本語全体が問題な今、敬語の乱れは推して知るべしだ。
いや実際、そこそこのキャリアを積んだ社員だって怪しいものだ。
応対室にコーヒーが運ばれてきた。
「どうぞ温かいうちにいただいてください」
そんな接客言葉を耳にしません?「いただく」は謙譲語だから、「召し上がってください」と言うべきだが、実はこんな間違い、珍しくもなんともないに違いない。
手元にマナーの本があるので間違い例を拾うと、社内で「課長さん」と呼んだり、取引先に「当社の〇〇部長がご覧になって」だの「わたくしどもの社長にお伝えします」だのいろいろある。
役職と絡む敬語の社内外での使い分けなど、チェックすべき社が多いはずだ。
前々回、某女性タレントが「食べる」の尊敬語を「よく噛んでたべる」と答えていたという話を書いた。
しかし、本当にひどいのは、尊敬語より謙譲語は?と問われた別の某女性タレントは「謙譲語って?」と問い返した。司会者に「へりくだること」と説明されても、「へりくだるってどういう意味?」と聞いて、結局、「食べる」の謙譲語をこう答えた。
「私のもどうぞ」(正解は「いただく」「ちょうだいする」
「問題な日本語」というより「問題な、以前の日本語」と言うべきでしょうか
練習問題
1、①なぜ「敬語の正しい使い方の実例集が作られる」のか。
いつも文化審議会国語分科会で敬語を審議するから
だれも敬語を使わないから
間違った敬語のはんらんに耐えられないから
企業が春にフレッシュマンを迎えるから
2、③文中の「といった」と同じ使い方のものはどれか。
―「彼の運転はどうですか」―「まあまあといったところですね」
この年になってから一人暮らしを始める心細いといったらありはしない。
この学校にはタイ、インドネシア、マレーシアといった東南アジアの国々からの留学生が多い。
彼は「すぐ行きます」といった。
3、助動詞「べし」の連用形は次のどれか。
べき
べく
べし
べす
4、②「はんらん」の漢字はどれか。
反乱
氾濫
判乱
叛乱