先々さん
昔 、ある所ところにお爺じいさんとお婆ばあさんがおった [1] そうな [2] 。お爺じいさんは、真ま面じ目めに働はたらいて、少すこしばかりのお金かねを貯ためておった。お爺じいさんは「このお金かねは、わしらの先々さきざきのために、置おいとくお金かねじゃから、大だい事じにしまっとけよ。」といつも、お婆ばあさんに言いっておった。
お婆 ばあさんは、大 だい事 じなお金 かねじゃけえと、暇 ひまさえあればお金 かねを数かぞえておった 。
ある日ひ、お婆ばあさんがお金かねを数かぞえておると、物貰ものもらい [3] が来きて、「何なにか、もらえる物ものはないか。」と言いって、家いえの中なかをきょろきょろ[4] 見み回まわした。「ご覧らんのとおりの貧乏人びんぼうにんですけえ、あげる物ものは何なにもありません。」と言いうと、物貰ものもらいは「いま数かぞえておるその金かねをくれえ。」と言いうた。「このお金かねは、先々さきざきのためにとっとくお金かねですけえ、あげられません。」物貰ものもらいは、ちょっと騙だましちゃろうと思おもって、「お婆ばあさん、このわしが、その先々さきざきだがな。」というたと。
「あっそうですか。あなたさんが‘先々さきざきさん’ですかいな。それでは、どうぞ。」と言いって、お婆ばあさんは、貯ためとったお金かねを全ぜん部ぶ渡わたしてしもうたそうな。
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晩ばん方がたになって、お爺じいさんが帰かえってきて、お婆ばあさんは、「今日きょう、先々さきざきさんが来きなさったんで、お金かねを全ぜん部ぶ渡わたしたけえ。」と話はなしたそうな。お爺じいさんは、びっくりするやら、呆あきれる [5] やら、「先々さきざきいうたら、わしらのこれから先さきの暮くらしのことじゃが、何なんちゅうことをしてくれたか」と言いって、かんかんに怒おこったそうな。
「もうすぐ正月しょうがつが来くるのに、年としを越こす [6] 金かねもない。夜逃よにげするしかあないなあ」と言いって、お爺じいさんとお婆ばあさんは、身み支じ度たくをして夜よるが来くるのを待まっておったそうな。
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どこの家いえも寝ね静しずまったころに、お爺じいさんは、「さあ行いこう、お婆ばあさんや、戸とを閉しめとけや。」と言いって、先さきに家いえから出でていった。お婆ばあさんは、少すこし耳みみが遠とおいもんで「戸とを持もっていくんだかや?」と聞きき返かえした。
「何なにを言いうか、戸とを閉しめとけよと言いうたんじゃ。」と、近所きんじょに聞きこえんように小声こごえで言いうたんで、お婆ばあさんは、また、「戸とを持もって行いくんだか?」と聞きき返かえした。お爺じいさんは腹はらが立たってしもうて、「勝手かってにせえ。」と言いって、さっさと先さきに行いってしもうた。お婆ばあさんは、戸とを背負せおうたり、下さげたりしながら、やっこらやっこらお爺じいさんの後あとを追おいかけた。
戸とを持もって、やっとの思おもいで木きに登のぼったそうな。やっと峠とうげまで来きたときには、くたびれて [7] しもうて、もう一歩いっぽも歩あるけんようになってしもうたと。「お爺じいさん、お爺じいさん。もう歩あるけん。一ひと休やすみしよう。」と言いって、大おおきな木きの根元ねもとで休やすむことにした。
しばらく休やすんでおると、向むこうの方ほうから大勢おおぜいの人ひとがやって来くるような人声ひとごえがしたそうな。二人ふたりは、夜逃よにげが見みつかっちゃあ困こまるので、木きの上うえに登のぼって隠かくれることにした。お爺じいさんが先さきに登のぼって、「お婆ばあさん、早はやう登のぼってこいや、戸とはそこへ置おいときゃあええから。」と言いうたが、お婆ばあさんは、「戸とを持もって上あがるんだか?」と聞きいたそうな。「何なにを言いうか、戸とを置おいとけや言いうたんじゃ。」お婆ばあさんは、よう聞ききとれんで、何遍なんべんも聞きいたんじゃと。お爺じいさんは、人声ひとごえも近ちかづいてきたんで、いらいらしてきて「勝手かってにせえ [8] 。」と言いうたから、お婆ばあさんは、一生懸命いっしょけんめい、持もちにくい戸とを持もって、やっとの思おもいで木きに登のぼったそうな。
「ガタ、ガタッ、バッターン!」ちょうどその時とき、ガヤガヤ言いうとった連中れんちゅうが木きの下したに来きて、輪わになって座すわったそうな。「今日きょうは、たくさんのお金かねが手てに入はいった。みんなで山やま分わけ [9] にしよう。」と言いって、明あかりを灯ともして、真まん中なかにいっぱいのお金かねを置おいて数かぞえ出だした。
お婆ばあさんが、ふと見みると、その連中れんちゅうの中なかに昼間ひるまにお金かねを持もっていった『先々さきざきさん』がいるのが分わかったそうな。お婆ばあさんは、戸とが重おもたいのを我慢がまんして、一生懸命いっしょけんめい下さげとったんじゃが、手てがだるうなって、「お爺じいさん、重おもいとうて我が慢まんできん。落おとしてもええだか?」「何なにを言いうか、下したにおるのは恐こわい連中れんちゅうじゃで、落おとさんようにしっかり持もっとけ。」「手 てがだるうてだるうて、辛抱しんぼうできん。」と言 いうて、とうとう手 てを放 はなしてしもうたもんだけえ、「ガタ、ガタッ、バッターン!」と、大 おおきな音 おとがして、連中 れんちゅうの頭あたまの上 うえに落 おちてしもうたんじゃてえ 。
お金かねがどっさり残のこっておった。木きの下したで輪わになっていた連中れんちゅうは、びっくり仰天ぎょうてんして、飛とんで逃にげていった。お爺じいさんとお婆ばあさんは、「えらいことになったのう、降おりて見みよう。」と言いって降おりてみると、お金かねがどっさり残のこっておったんで、喜よろこんで持もって帰かえって、一いっ遍ぺんに大金持おおがねもちになったんじゃと。
[1] 「おった」=いた(いる的过去时)。
[2] 「そうな」=そうだ。
[3] 「きょろきょろ」,副词。东张西望,贼眉鼠眼。
[4] 「物貰い」,名词。乞丐、要饭的。
[5] 「呆れる」,动词。吃惊、惊讶。
[6] 「年を越す」,过年。
[7] 「くたびれる」,动词。累、疲劳。
[8] 「勝手にせえ」,随你的便吧。
[9] 「山分け」,名词、サ变动词。平分,均分,瓜分。
将来先生
从 前,某个地方有一位老爷爷和一位老奶奶。老爷爷辛勤地劳动,并攒了一点儿钱。老爷爷经常对老奶奶说:“老太婆,这些钱是为了我们的将来用的,你要好好地把它收起来哟。”老奶奶觉得这钱很重要,一有空就拿出来数一数。
有一天,老奶奶正在数钱时,来了一个乞丐。他问老奶奶:“能给我点儿东西吗?”说着向屋里四下张望。老奶奶回答他:“正如你所见,我们也是穷人家,没什么东西可以给你的。”乞丐接着说:“那就把你正在数的钱给我吧。”老奶奶回答:“这些钱是为了我们的将来而攒的,不能给你。”乞丐想骗她,就说:“老奶奶,我就是那个‘将来’先生呀。”“是吗?
你就是‘将来’先生?那就给你吧。”说着老奶奶就把存的钱全都给了那个乞丐。
到了晚上,老爷爷回来了。老奶奶告诉他:“今天‘将来’先生来过了,我把钱全都给了他。”老爷爷一听,气得目瞪口呆,勃然大怒道:“我说的将来指的是我们的将来生活。
嗨!你都干了些什么呀!”
老爷爷说:“马上就要过年了,家里又没钱过年,我们只好连夜出去逃年了。”于是他俩开始做准备,等待夜幕的降临。
当周围的人家都睡下,四处静悄悄时,老爷爷对老奶奶说:“唉!走吧,老太婆,带上门。”说着就先出去了。可是老奶奶有点儿耳背,反问到:“要带门去吗?”
“你说什么呀?我叫你关好门。”为了不让邻居听见,老爷爷小声地回答她。可是老奶奶又反问:“要带门去吗?”老爷爷很生气,说:“随你便吧!”就先走了。老奶奶一会儿扛,一会儿拖,拉着那扇重重的门,“嗨吆嗨吆”地跟在老爷爷后面。
老奶奶扛着重重的门,终于来到了山顶的一棵树下。她疲惫不堪,再也走不动了,就对老爷爷说:“老头子!老头子!我已经走不动了,歇一歇吧。”于是,他们就决定在大树下休息一会儿。
刚歇了一会儿,他们听见了说话声,好像许多人正从对面走过来。他俩心想:若是被这些人发现他俩是出来逃年的,那就麻烦啦。于是他俩决定爬到树上躲起来。老爷爷先爬了上去,再叫老奶奶:“老太婆。赶快爬上来吧。把门放下就行啦!”老奶奶问:“是带着门爬上去吗?”“你说什么呀?我叫你把门放下。”可是,老奶奶还是听不清,又问了好几遍。老爷爷发现那些人的说话声越来越近了,就急忙说:“随你便吧!”老奶奶拖着那重重的门,拼命地往树上爬,她终于爬了上来。
“嘎哒嘎哒!扑腾!”就在这时,那一伙人吵吵嚷嚷地来到树下,围成一圈席地而坐。其中一个说:“今天我弄到了很多钱,大家一起来平分吧。”他们点亮了灯,开始数那些放在中间的钱。
老奶奶突然发现其中一个就是白天来讨钱的那个“将来先生”。她咬紧牙关用力地拉着那扇重重的门,手酸得实在受不了,可还是坚持着。她对老爷爷说:“老头子,门太重了。我可以放下吗?”“你说什么?下面有一伙坏蛋,不能放下。拿着!”“手发酸了,实在受不了啦!”说着老奶奶就不由地松开了手。随着“霹雳啪啦!扑腾!”一声巨大响声,那扇门就重重地砸在那伙坏蛋的头上。
树下围坐成一圈的坏蛋吓得丢下钱,逃之夭夭。老爷爷夸奖道:“干得太好了!下去看看吧!”他和老奶奶从树上下来一看,发现地上有好多钱。他们高兴地拿着钱回家了,这下子他们就变成了有钱人。
语法详解
(1)名詞さえ+用言仮定形ば
表示“只要……就……”
* お金さえあれば何でも買えると思う人がいる。
有人认为,只要有钱什么都可以买到。
* 雨さえ降らなければ、少しぐらい天気が悪くても出かけよう。
只要不下雨,即使天气差一点,也要出门。
* 出席さえすれば、必ず単位がもらえます。
只要出勤,就肯定能拿到学分。
(2)体言+がする
表示通过感官感受到的感觉。相当于“感到……”觉得……”“有……的感觉”。
* 私は何か悪い物を食べたようで、ひどい吐き気がしました。
我好像吃了什么坏东西,特别想吐。
* 夜中に台所でコトコト音がするので、行ってみたら大きな鼠がいた。
半夜听到厨房有咕咚咕咚的响声,走去一看是一只大老鼠。
* この料理がどんな味がしますか。
你觉得这个菜是什么味道?
小知识
正月
正月とはその年の豊穣(ほうじょう)を司る歳神様(としがみさま)をお迎えする行事、本来旧暦1月の別名である。改暦後は新暦1月を意味することもある。正月の前の年の12月は「師走」と呼ばれ、新年を迎える準備をする。家の中を掃除して、門松や鏡餅を飾る。「おせち」料理やおもちを作る。日ごろ世話になった人に年賀状を書いて出す。12月31日の「大晦日」に除夜の鐘を聞きながら年越しそばを食べる習慣がある。
元旦の日に家族そろって、「おとそ」を飲んだり、お雑煮を食べたりして過ごす。お寺や神社は「初詣」に行く人でにぎわっている。正月には、たこあげ、カルタとり、羽根突き、こままわしなど伝統的な遊びで子供も大人もいっしょに楽しむ。子どもたちは大人から現金の入ったお年玉袋をもらう。最近はホテルに泊まる人や海外旅行に行く人など自宅で過ごさない人が増えてきた。おせち料理を作る家庭も少なくなって、デパートやスーパーでは高価なおせち料理が売れている。このように伝統的なものが少なくなってきたが、正月は日本人にとって新しい年を始める大切な行事として重視している。
正月
正月是指为迎接掌管丰收的岁神而进行的活动,以前是旧历1月的别名。改历后,也指新历1月。正月前一个月的12月称为“师走”。人们开始各种迎接新年的准备:打扫房屋,用门松、镜饼等装点房间,制作名为“おせち”的过年菜和年糕,给平日里受其关照的人写贺年卡。在日本,人们有在12月31日“大晦日”即除夕夜边听着除夕钟声,边吃过年荞麦面的习惯。元旦那天,全家人一起喝着屠苏酒,吃着杂煮,欢聚一堂。寺庙、神社里挤满了赶来进行新年第一次参拜的人。正月里,孩子们和大人们一起玩放风筝、纸牌、羽毛板球、陀螺等传统游戏,其乐融融。孩子们还会收到大人给的装着现金的压岁红包。最近,选择不在家过年、而是到宾馆和到国外旅行过年的人渐渐增多了。制作过年菜的家庭也逐渐减少,商店、超市应时销售高价的过年菜。虽然传统的东西在逐渐减少,但是,正月还是作为开始新一年的最重要的活动而受到日本人的重视。