ア マテラスオオミカミという神様かみさまは、いやもうありがたい [1] 。世界中せかい
じゅうを明あかるい光ひかりで照てらす、それはもうありがたい神様かみさまでした。
そのアマテラスオオミカミが、ある時とき弟おとうとのスサノオノミコトと、ささいな
誤ご解かいから争あらそいになりました。
まあ、アマテラスさんのほうは分わかった分わかった、もうこれでお終しまいにしま
しょうという感かんじだったんですが、弟おとうとのスサノオノミコトというのは乱暴
らんぼうでとことん [2] とことんやる男でしたから、アマテラスさんの畑はたけを荒あら
し [3] たり、神殿しんでんの床ゆかに汚きたないものを撒まき散ちらすなど、もうめちゃ
くちゃ嫌 いやがらせをする [4] わけです 。
そこで、アマテラスオオミカミは、いじけます [5] 。あーもう嫌いやだ他人たにんと関か
かわるのはごめんだわ、独ひとりでひっそり暮くらそう…ということで、天あまの岩屋
いわやに引ひきこもってしまいました。こうして世界せかいは真まっ暗闇くらやみ [6] に
閉とざされます。
高天原たかまがはらの神々かみがみは困こまって、天安河原あまのやすかわらという所
ところに集あつまって相談そうだんをします。
「どうしたもんですかねー。」
「や、どうしたって、何なにしろ悪わるいのはあのスサノオですよ。」
「とんでもない弟おとうとだ。追放ついほうです。」
「その前まえに袋叩ふくろだたきにし [7] ましょう。」
「まあまあ待まちなさい。スサノオの追放ついほうはいいとして、アマテラスさんがい
ないと、困こまりますよ。実じつは私わたしに作戦さくせんがあります。」オモイカネ
ノカミという大変頭たいへんあたまのいい神様かみさまが、興奮こうふんする神々かみ
がみをなだめて [8] 、自じ分ぶんの作戦さくせんを語かたります。
こうして、踊おどりの得とく意いなアメノウズメという神様かみさまが呼よび出だされ
ます。アマテラスオオミカミが引ひきこもっている岩屋いわやの前まえにステージ [9] を
作つくり、そこで楽たのしく踊おどるのです。
アメノウズメは面白おもしろおかしく足あし踏ぶみをし [10] て踊おどります。だんだん神
かみがかりになってきて、髪かみの毛けを振ふり乱みだして踊おどりまわります。
見みている神々かみがみは大喜おおよろこび。あっちでもこっちでも酒さけが開あけら
れ、すっかり宴会えんかいです。ドッと景けい気きのいい笑わらいが溢あふれます。
「あら、何なにかしら。」
天あまの岩いわ戸とに引ひきこもっているアマテラスオオミカミは、何なんだか外そと
が騒さわがしいので気きになってきます。隙すき間まから外そとに呼よびかけます。
「あの、私わたしが引ひきこもったら、高天原たかまがはらも葦原あしはらの中なかつ
国くにも光ひかりが無なくなって困こまるはずなのに、それなのにそんな、踊おどった
り笑わらったり、なんですかそれ、あなたがた、不ふ謹慎きんしんっていうか、おかし
いっていうか。」
そこでアメノウズメは答こたえます。「ああ、アマテラス様さま、実じつはあなたより
ずっとありがたい神様かみさまがいらっしゃったのです。だから踊おどったり笑わらっ
たりしているのですよ。」
アマテラスはムカッとします [11] 。自じ分ぶんよりありがたい神かみなんて、そんな、あ
りえない。アマテラス様 さまごめんなさい、あなたがいないとだめです、出 でてきてく
ださいと一 いち同 どう土 ど下 げ座 ざして [12] お願 ねがいするのが筋 すじ [13] なのに 。
でもちょっとこのまま見捨みすてられるかもという不ふ安あんもあり、気きが気きでは
ありません。
アマテラスが岩いわ戸との隙すき間まからソーと外そとを覗のぞくところへ、アメノコ
ヤネとフトタマという二ふた人りの神様かみさまが左さ右ゆうからヤタノカガミを支さ
さえて、前まえに突つき出だします。
アマテラスは鏡かがみに映うつっている自じ分ぶんの姿すがたを見みて、いかにもそれ
が素晴すばらしく光輝ひかりかがやいているのを見みて、何者なにものだろうともう気
きになって気きになって、すこしだけ岩戸いわとを開ひらきます。
そこへ、アマノタヂカラオノミコトという力持ちからもちの神様かみさまが岩戸いわと
に必死ひっしに掴つかみつき、グ、グググーと岩いわをどかし [14] 、アマテラスオオミカ
ミを引ひきずり出だします!
すると、パァーッと世よの中なかは光ひかりに満みたされて、以前いぜんのような明あ
かるさを取とり戻もどしたということです。
[1] 「いやもうありがたい」,意思为「たいへんありがたい(神様)です。」
[2] 「とことん」,副词。到底最后。
[3] 「畑を荒らす」,糟蹋田地。
[4] 「嫌がらせをする」,令人生气。
[5] 「いじける」,动词。气馁、无精打采。
[6] 「真っ暗闇」,名词。漆黑、黑暗。
[7] 「袋叩きにする」,众人围群殴打一人、群殴。
[8] 「なだめる」,动词。平息、劝解。
[9] 「ステージ」,名词。舞台。
[10] 「足踏みをする」,踏步走。
[11] 「ムカッとする」,勃然大怒、火冒三丈。
[12] 「土下座する」,动词。跪在地上谢罪。
[13] 「筋」,名词。道理。
[14] 「どかす」,动词。移开、挪开。
天之岩
天 照大神是一位尊贵之神,她用光明照亮了全世界,是一位了不起的神仙。
有一天,天照大神和她的弟弟素戋呜尊因为一点小误会而争吵起来。
天照大神心想:“好了,好了,就到此为止吧。”可是素戋呜尊却是一个粗暴又固执的人,
他为了发泄不满,毁坏了天照大神的田地,还把脏东西乱撒在神殿的地板上等等。总之,
就是要搅得天照大神心烦意乱。
为此,天照大神十分沮丧。她心想:“唉!和他人交往真烦啊,还是一个人清净地生活算
了。”于是,她搬到天之岩里,过起了隐居生活。这么一来,世界便陷入了一片黑暗之中。
为此,高天原的众神感到十分苦恼,纷纷聚集到天安河原,来商量解决的办法。
“究竟是怎么回事儿啊?”
“唉,说到底都是素戋呜尊不好呀。”
“这个弟弟真是太不像话了。把他赶走吧!”
“在赶走之前大家去揍他一顿吧!”
“慢着!就算赶走素戋,要是天照大神不回来,也无济于事啊。我倒有一条妙计。”思金神
是一位非常聪明的神,他安抚了情绪激动的众神,说出了自己的策略。
于是,大家请来了擅长跳舞的女神天钿女命,在天照大神隐居的岩洞前面搭起了舞台,让
她在那里欢歌起舞。
天钿女命披头散发,踏着滑稽可笑的舞步,仿佛神灵附体般狂舞起来。
众神见此情景都十分高兴,到处开酒庆贺,简直像开宴会一样,四处欢声雷动,荡漾着欢
乐的气氛。
“咦?究竟发生了什么事?”隐居在天之岩里面的天照大神觉得外面十分骚乱,便向外面喊
话:“喂,我都已经隐居了,照理说高天原和苇原中国都应该为失去光明而苦恼的,可是你
们大家依然又跳又笑,怎么回事啊?是该说你们太不认真呢,还是太可笑了呢。”
于是,天钿女命答道:“啊,天照大人,其实是这里来了一位比你更了不起的大神,所以大
家都在欢歌起舞呢。”
天照大神听罢,顿时火冒三丈。什么?有一个比自己更厉害的大神,这怎么可能?本来自
己走了之后,大家应该一齐跪下并恳求说:“天照大人,对不起!如果您不在,就会天下大
乱的。请您出来吧!”怎么可能还那么高兴?另一方面,她也十分担心大家从此不再理她
了,有些忐忑不安。
天照大神按捺不住自己的好奇心,便从门缝里偷看外面的情况。这时,天儿屋根命和太玉
命两位大神趁势在两旁支起八咫镜,摆在天照大神的前面。
天照大神看到镜子里照出的自己样子,不禁一惊:“啊呀!多么绚丽夺目啊!”她很想知道
镜子里的那个人究竟是谁,于是,轻轻地打开了岩洞口。
说时迟那时快,一位名叫天手力男命的大力神趁机使劲抓住岩洞门,骨碌碌地移开大石
头,一把就将天照大神拉了出来!
于是,“啪!”地一下,世间又重新充满阳光,恢复了以前的光明。
语法详解
(1)体言/用言連体形+わけだ
表示“依据前文所说的道理、理由、条件等前提,理所当然得出这样的结
论”。相当于“当然……”“应该……”“自然而然……”
* こうして二人は仲良く毎日を送っているわけです。
于是两个人每天过着和睦的日子。
* だから誰も知らなかったというわけです。
所以,当然谁也不知道。
* 若いから、元気がいいわけです。
因为年轻,当然有精神了。
(2)用言連体形/体言な+のに
表示既定的逆接条件,含有意外、埋怨、不满等语气。相当于“虽然……但
是……”“尽管……却……”
* 雨が降っているのに、子供は外で遊んでいる。
天下着雨,孩子们却在外面玩。
* 今日はパーティなのに、彼女は来なかった。
今天开宴会,但是她没来。
* 金もないのに、贅沢をする。
明明没有钱,却挥霍无度。
小知识
天照大神
日本神道の主神。太陽神であり、皇室の祖神として伊勢神宮に祀られて
いる。高天原(たかまがはら)の主宰神。『古事記』では、伊邪那岐命
(イザナギ)が黄泉の国から戻り、川で禊をした時に左目から化生した
とされる。このとき右目から生まれた月読尊(ツクヨミ)、鼻から生ま
れた須左之男命(スサノオ)と共に、三貴子と呼ばれる。天皇家と物部
氏、尾張氏の祖先とされる。
天照大神
作为太阳神的天照大神是日本神道的主神。被日本皇室奉为祖神而供奉在
伊势神宫中,是传说中高天原的主宰神。据《古事记》记载,天照大神是
伊邪那歧命从黄泉之国回到人间,在河边沐浴时,由其左眼化生而来的。
与由右眼化生的月读尊、由鼻子化生而成的素戋呜尊并称“三贵子”,是天皇
家族、物部氏和尾张氏的祖先。