第十五課 インスタント食品
本文
日本のインスタントラーメンは一九五八年に売り出されたのが最初である。これは暴発的な人気を呼び、この後、さまざまな製品が売り出されるようになった。
これは、最初、アメリカの余剰小麦粉で作られたが、これほどヒットするとは予想されなかった。それがこんなにヒットしたその理由はいくつか考えられるが、次の二つが大きな要因であろう。
まず始めに、ちょうど日本の第一次高度成長の時代であったために忙しい人々に、安くて気軽に食べられる簡単な食品として愛用されたことがあげられる。
次にテレビの影響力があげられる。一九五八年にコマーシャル入りの民間放送が開始され、スポットコマーシャルが流されるようになった。一袋一〇〇円たらずのインスタントラーメンが、十五秒で六十五万円もするコマーシャルに登場し、購買欲をそそる宣伝をしたのである。テレビの影響力が大きかった時代だったから、みんなこぞって買いに走った。一九七五年にはインスタントラーメンのテレビスポットが一日一時間も流されたという。一九八九年の調査では、インスタントラーメンは世界八十か国で年間約一三〇億食消費され、日本ではそのうち四六億食食べているという。まさに「国際食」になった。今ではラーメンに限らず、そばやうどんのインスタントも登場し、ご飯のインスタントも現れている。
会話
松下:李さん、いま中国にもインスタント食品がありますか。
李 :ええ、あります。特に最近海外の会社が中国に進出するにともなって、インスタント食品はますます人気を呼んでいますね。
松下:どんなものがありますか。
李 :即席めんやレトルト食品など、たくさんありますよ。
松下:李さんはインスタント食品をよく食べますか。
李 :いいえ、私はできるだけインスタント食品を食べないようにしています。
松下:どうしてですか。
李 :インスタント食品を食べると、すぐあきるし、栄養も偏るようになるでしょう。
松下:私は外で働くことが多いのでよくインスタント食品を食べていますよ。
李 :私も両親が共働きしているので、たまにはインスタント食品を食べざるをえませんが、味もよくないし、新鮮ではないから、あまり好きじゃありません。
松下:でも、外食や出前などに比べると、インスタント食品はすぐ食べられるし、安いでしょう。
李 :まあ、即席めんなどは文字通りお湯をかけるだけですぐ食べられますけど、新鮮ではないから栄養は少ないに決まっていますよ。
松下:しかし、インスタント食品は長く置いてもだめにならないので便利でしょう。
李 :それは防腐剤が入っているからでしょう。
松下:でも、暇な時にたくさんかっておけるし、忙しい時など調理にもあまり時間がかからなくていいでしょう。
李 :私はやはり手作りの料理の方がおいしいし、栄養のべランスもいいので、健康のためにいいと思いますよ。
松下:まあ、インスタント食品はいくら手軽でも、たくさん食べると、確かに健康によくないですが、しかし、何と言っても、インスタント食品は忙しい現代のライフスタイルにあっていると思いますね。
李 :即席ものは確かに間食や夜食などに手軽で便利ですが、脂肪や糖分が多くて、肥満の原因になるそうですから、ふとっている松下さんは気をつけた方がいいですよ。
松下:そうですか、ご忠告ありがとうございます。
応用文
日本人の名字
今から百年以上も前の古い書き物を見ると、農民や町人の名には名字がつけてありません。
例えば、江戸時代の戸籍簿などを見ると、名字と名前の両方が書いてあるものはほとんどありません。「甚兵衛」とか「半助」などと、名前だけ書いてあります。
江戸時代の終わりまで、正式に名字をつけることができたのは、武士かまたは特別に許された商人や村の有力者だけでした。ですから、一般の人は「名字帯刀を許す」と言われると、たいへん名誉に思いました。
なぜかというと、これは、当時、次のような考え方があったからです。
「武士は特別にえらいのだ。百姓や町人が、その武士と同じように名字をつけることはけしからん。」士 農 工 商という身分の決まりはこんな小さなことにまではっきりと現れていたのです。
もっとも、農民や町人の間にも、名字のようなものが全然なかったわけではありません。
例えば、「青木」という名字を持った大地主の小作人に「太郎作」という人がいたとします。そうすると、この人は、正式の名字はありませんでしたが、人々からは「青木の太郎作」などと呼ばれました。また、大きな橋のある村に住んでいた「五兵衛」という人は「大橋の五兵衛」と呼ばれたこともあったようです。
ところで、「国民はだれでも名字をつけてよろしい。」と決められたのは、明治三年のことでした。しかし、長い間の習わしから、進んで名字をつけようとする人はありませんでした。そこで、政府は重ねて、「国民はすべて名字をつけねばならぬ。」という命令を明治八年に出しました。
人々はどんな名字をつけたらよいか、いろいろ考えました。例えば、今まで「青木の太郎作」とか「大橋の五兵衛」などと呼ばれていた人が、そのまま「青木太郎作」とか「大橋五兵衛」などとつけたこともありました。
また、自分で名字をつけられない人は、村役場の役人などに適当な名字を選んでもらったこともあったようです。
例えば、家の前に松の木があるから「松下」とつけたり、山の入口にあるから「山口」とつけたり、昔の有名な武士の名を取って、酒井、本多などとつけてもらいました。
また、魚や野菜の名ばかりたくさんつけた村もありました。
武士の名字には、地名から取ったものを始め、寺の名や職業や植物の名などからとったものが多いと言われています。
現在の日本人の名字で多いものは「佐藤」「鈴木」「田中」「小林」「高橋」などで特に「佐藤」「鈴木」はそれぞれ全人口の一点五パーセント以上もあるということですが、ある町や村にどんな名字の人が多いか、それはなぜかということを調べることも、昔の土地の様子を知る一つの手がかりになるでしょう。
ファンクション用語
計算
A 一に二をたしたらいくつになりますか。
B 三になります。
A 五から一を引いたらいくつになりますか。
B 四になります。
A 三に五と掛けたらいくつになりますか。
B 十五になります。
A 九に三で割ったらいくつになりますか。
B 三になります。
A 三プラス三はいくつですか。
B 六です。
A 六マイナス三はいくつですか。
B 三です。
参考:
+:たす、プラス、加える。
-:引く、マイナス。
×:掛ける。
÷:割る。
=:イコール。
単語
インスタント(名 形動)④ 速成(instant)
ラーメン(名)① 面条
爆発的(ばくはつてき)(形動)〇 急剧的,惊人的
小麦粉(こむぎこ)(名)〇④ 面粉
ヒット(名 自サ)① 大受欢迎,最畅销(hit)
予想(よそう)(名 他サ)〇 预想
要因(よういん)(名)〇 主要原因
第一次(だいいちじ)(名)① 第一次
愛用(あいよう)(名 他サ)〇 喜欢用
影響力(えいきょうりょく)(名)③ 影响力
コマーシャル(名)② 商业的;商业广告(commercial)
民間(みんかん)(名)〇 民间
スポット コマーシャル(名)⑥ 简短的商业广告(播在节目中间)(spot commercial)
袋(ふくろ)(接尾) 袋
足らず(造語) 不足
秒(びょう)(名)① 秒
登場(とうじょう)(名 自サ)〇 出场,出台
購買欲(こうばいよく)(名)③ 购买欲
そそる(他五)②① 勾起,引起
挙って(こぞって)(副)② 全部,全都
テレビスポット(名)⑤ 电视广告(television spot)
調査(ちょうさ)(名 他サ)① 调查
食(しょく)(接尾) 顿(吃饭的次数)
消費(しょうひ)(名 他サ)〇 消费
正に(まさに)(副)① 确实,的确
蕎麦(そば)(名)① 荞麦苗条
現れる(あらわれる)(自一)④ 出现
進出(しんしゅつ)(名 自サ)〇 打入,挤进
即席めん(そくせきめん)(名)④ 方便面
レトルト(レトルト食品の略)(名)② 半成品(retort)
あきる(飽きる 厭きる)(自一)② 满足,腻烦
栄養(えいよう)(名)〇 营养
片寄る(偏る)(かたよる)(自五)③ 偏袒
出前(でまえ)(名)〇 送外卖
文字通り(もじどおり)(副)③ 如字面那样;毫不夸张
お湯(おゆ)(名)〇 开水,热水
防腐剤(ぼうふざい)(名)③ 防腐剂
調理(ちょうり)(名 他サ)① 烹调,做菜
手作り(てづくり)(名)② 亲手做
ベランス(名)〇 平衡(balance)
ライフ スタイル(名)⑤ 生活方式(life style)
間食(かんしょく)(名 自サ)〇 吃点心;零食
夜食(やしょく)(名)〇 夜宵
脂肪(しぼう)(名)〇 脂肪
糖分(とうぶん)(名)① 糖分
肥満(ひまん)(名 自サ)〇 肥胖
ふとる(太る 肥る)(自五)② 胖
忠告(ちゅうこく)(名 自サ)〇 忠告
農民(のうみん)(名)〇 农民
町人(ちょうにん)(名)〇① 商人,手艺人
名(な)(名)〇 名字;名分
戸籍簿(こせきぼ)(名)③ 户籍本
名字(みょうじ)(名)① 姓
甚兵衛(じんべえ)(専)① (人名)
半助(はんすけ)(専)① (人名)
正式(せいしき)(名 形動)〇 正式,正规
商人(しょうにん)(名)① 商人
有力者(ゆうりょくしゃ)(名)④③ 有权势者;权威人士
帯刀(たいとう)(名 自サ)〇 佩刀
名誉(めいよ)(名)① 名誉
けしからん(組)④ 粗鲁;岂有此理
身分(みぶん)(名)① 身分
もっとも(接)①③ 话虽如此
大地主(おおじぬし)(名)③ 大地主
小作人(こさくにん)(名)〇 佃户
五兵衛(ごへえ)(専)① (人名)
習わし(ならわし)(名)〇④ 习气,习俗
進んで(すすんで)(副)〇 自愿地,主动地
重ねて(かさねて)(副)〇 再次
命令(めいれい)(名 他サ)〇 命令
村役場(むらやくば)(名)③ 村政府
松(まつ)(名)① 松树
山口(やまぐち)(専)② (姓)
酒井(さかい)(専)① (姓)
本多(ほんだ)(専)〇 (姓)
地名(ちめい)(名)〇 地名
手掛かり(てがかり)(名)② 线索
(感谢 xzbaszy 输入课文和单词)
一、…とは予想されなかった(本文)
これほどヒットするとは予想されなかった。
表示出乎意料,不会料到……。
人口がこれほど爆発的に増えるとは予想されなかった。
不曾料到人口会如此急剧地增长。
インスタント食品はそんなに人気があるとは予想されなかった。
没料到速成食品会这么受人欢迎。
二、という(本文)
一九七五年にはインスタントラーメンのテレビスポットが一日一時間も流されたという。
表示传闻,一般为广为流传的事情。「という」没有过去时、否定式,也没有敬体。不能用于当消息来源于与传闻的事有直接关系的人。
事故の原因は今調べ中だという。
据说事故的原因正在调查中。
昔、この辺りに大きな松の木があったという。
据说,从前这儿附近一带有棵大松树。
三、…に限らず(本文)
今ではラーメンに限らず、そばやうどんのインスタントも登場し……。
表示不限于……,不论……都……,不仅。
鈴木さんに限らず、だれでも油断すると失敗しますよ。
不仅是铃木,无论是谁,疏忽大意就会失败。
僕は野球部に入っているが、野球に限らず、スポーツなら何でも得意だ。
我参加了棒球部,不仅是棒球,凡是运动我都在行。
四、…にともなって(会話)
特に最近海外の会社が中国に進出するにともなって、インスタント食品がますます人気を呼んでいますね。
表示随着……,伴随……
今後も工業の発展にともなって公害はひどくなるばかりだろう。
随着工业发展,今后公害也会越来越严重吧。
経済建設の高まりが訪ねるにともなって、文化建設の高まりが現われるに違いない。
随着经济建设的高潮的到来,必将出现文化建设的高潮。
五、…ざるをえない(会話)
たまには、インスタント食品を食べざるをえませんが、……
「ざる」是否定助动词「ず」的连体形。动词未然形+「ざるをえない」表示不得不……。
途中バスが故障したので帰らざるをえなかった。
半路上车坏了,我们不得不回来了。
交通渋滞のため、三十分早目に出かけざるをえなかった。
因为交通阻塞,所以不得不提早三十分钟出门。
六、…に決まっている(会話)
新鮮ではないから、栄養が少ないに決まっているよ。
表示必定……,必然……
生きているものはいつか死ぬに決まっている。
活着的人总有一天会死的。
薬を飲まなければ治らないに決まっている。
不吃药必然不会好。
七、なぜかと言うと、…からだ(応用文)
なぜかと言うと、それは当時次のような考え方があったからです。
这是一种先讲结果后讲原因的表达方式。相当于:为什么呢?是因为……。
なぜかというと、インスタント食品は防腐剤が入っているから。
为什么呢?是因为速成食品放了防腐剂。
なぜかというと、自動車事故があって、今ここは通れませんから。
为什么呢?是因为出了车祸,现在这里不能通行。
なぜ睡眠不足になるかというと、通勤に時間がかかるからです。
为什么睡眠会不足呢?是因为上班路上很花时间。
なぜ出発を遅らせたかというと、その日に授業があるからです。
为什么推迟出发了呢?因为那天有课。
八、とする(応用文)
例えば「青木」という名字を持った大地主の小作人に「太郎作」という人がいたとします。
接在动词基本型后面表示假设。
ここが公園だとすると、映画館はその向こうです。
如果这里是公园,电影院就在那个方向。
大学まで行かせるとすると、教育費をどのぐらい用意しておかなければならないか。
如果让他去上大学,必须准备多少教育费呢?
九、…ねばならぬ
政府は重ねて「国民はすべて名字をつけねばならぬ」という命令を明治八年に出した。
表示必须,跟「なければならない」相同。「ね」是否定助动词「ぬ」的假定型。
来月国へ帰らねばならぬ。
下个月必须回国。
レポートは土曜日までに出さねばならぬ。
报告必须在星期六之前交。
十、文字どおり(会話)
即席めんなどは文字通りお湯をかけるだけですぐ食べられます。
表示如字面所表示的那样。
東京駅は文字通り、東京の表玄関だ。
东京站是名副其实的东京的大门口。
文字通りに解釈すればこういう意味になります。
如果按照字面意思,那就是这种意思。