第十六課 漫画ブーム
本文
話によると、日本の「漫画 コミックス」の売り上げは年々伸びて、近年、年間の売り上げは二千億円にのぼったそうである。この背景には、年齢の高い読者を対象とする作品の売れ行きが伸びたことがあるという。これまで読物としては低く位置づけられていた漫画だが、年齢層が広がるにしたがって、今後その地位は上昇していくかもしれない。
一か月に発行される雑誌の種類が三〇〇余り、単行本が四〇〇点、月間発行部数が一億八〇〇〇万冊という漫画は、出版物の三分の一を占めるようになった。
易くて手軽な娯楽となった漫画は映画、テレビに作品を提供し、小説や音楽も影響を与えるようになったばかりか、広告などでも情報伝達の方法として重視されている。
会話
佐藤:外国人による日本語スピーチ コンテストで、日本の漫画ブームを取り上げた人がいたけど、本当に立派な大人が漫画を熱心に見ていますね。
田中:でも、ストレスが多くて夢のない非常生活から、束の間でも空想の世界に浸らせてくれる最も手軽な手段は漫画を眺めることかもしれませんね。
佐藤:しかし、出版物の三割、月間発行部数一億八〇〇〇万冊というのは全く驚くべきもので、日本はさすがに漫画大国ですね。
田中:そうですね。以前は勉強に疲れた時、気分転換のために漫画を眺めたものだけと、最近のように、教科書や参考書そのものが漫画化している場合は、骨休めには、どうするんでしょうね。 【X:I2Wt++ 和风日语 www.jpwind.com 更多资源 更好服务 ++^5Jf】
佐藤:その漫画参考書のことだけど、楽しみながら覚えられるというけれど、活字から得られる、考える力などが訓練される場がなくなって、考えることをしない人間が増えてきて、恐ろしい気がしますね。
田中:確かに、楽な情報手段である漫画で形成された人生観で、複雑な現実の中で生き抜いていくことが出来るかという疑問がありますね。
佐藤:良くても、悪くても、この現象は当分続くと思いますから、漫画の功罪を分析して、よく話し合い、よく考える必要があると思いますね。
田中:そうですね。一目でわかる情報として忙しい現代に受けているけど、遊びと勉強はやはり区別してほしいですね。
応用文
スピーチ コンテスト
秋の大学祭の三日目、去年の通り、「日本語スピーチ コンテスト」が留学生交流センターの主催で開かれた。友人の外国人学生が参加するので、応援に出かけた。開会十分前に会場に入ったが、さすがの大講堂も人で埋まっていた。聴衆の中には、外国人も多かった。
開会のベルが鳴った。まず、主催者から、
「このスピーチ コンテストは、留学生が日本の生活で体験したこと、そこから得たもの、感じたこと、考えていることなどを、日本語でみなさんに話すものである。内容は自由であるが、時間は八分以内に制限されている。参加の資格は、外国人学生で、在日三年未満という条件を満たす者となっている。私たち日本人にとっては、日本という国が外国人の目を通していかに受け止められているか、普段使い慣れた日本語がいかに難しいかを、改めて認識する絶好の機会でもある。」という趣旨の挨拶があった。
いよいよコンテストが始まった。まず中国の学生が演壇に立った。続いて、インド、フランス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなどの学生が、つぎつぎに熱弁をふるった。
友人の番が来た。あれほど一生懸命練習していたのだから、きっと、うまくやるとは思うものの、いささか心配である。友人は演壇に登ると、意外と落ち着いているのに安心する。
最初に、日本に着いた時のまごついた経験をユーモラスに話して笑わせる。そのあと、自国と日本の習慣の違いを取り上げて聴衆を引き付ける。習慣だけでなく、ものの考え方そのものの違いが大きいというふうに発展させる。その原因は生活様式の違いだと結論する。……大きな拍手が沸き起こった。練習の時よりよくできたので、ほっとする。
審査の結果、友人は練習の甲斐があって三位に入賞した。一位はインドの女性。その女性は、「インドの祭り」と題し、珍しい行事を紹介した。日本に来て一年半とは思えない上手な日本語が印象に残っている。二位は、日本とオーストラリアの経済関係について話したオーストラリアの青年。難しい専門用語がつぎつぎと飛び出し、数字もよく調べてあるのに感心した。
賞品授与のあと、審査委員長から次のような講評が行われた。
「審査は、態度、内容、文法、発音の四つに分けて行なった。順位は、各審査委員の採点を集計した結果にもとづいて決められた。今回、態度や内容は非常によくなってきたが、文法や発音の誤りのために減点しなければならなかったのは残念であった。
今年入賞した人も、入賞できなかった人も、さらに勉強して、来年はいっそう立派なスピーチを聞かせていただきたい。」
友人は、来年こそ一位に入賞して見せると、張り切っていた。
ファンクション用語
数量
A たばこをすってはいけないといったのに、まだたばこをすったでしょう。
B すみません、少しだけ吸いました。
A 何本吸いましたか。
B わずか五本しか吸いませんでした。
参考:いくらか、少し、若干(じゃっかん)、たくさん、多い、少ない、十分、不十分、足りる、足りない、超過する(ちょうか)、不足する。
単語
ブーム(名)① 热潮,高潮
漫画 コミックス(名)〇② 漫画连环画(comics)
近年(きんねん)(名)① 最近几年
年間(ねんかん)(名)〇 一年期间
背景(はいけい)(名)〇 背景
年齢(ねんれい)(名)〇 年龄
読者(どくしゃ)(名)①〇 读者
対象(たいしょう)(名)〇 对象
売れ行き(うれゆき)(名)〇 销路,销售情况
読み物(よみもの)(名)②③ 读物
上昇(じょうしょう)(名 自サ)〇 上升
発行(はっこう)(名 他サ)〇 发行,发放
単行本(たんこうぼん)(名)〇 单行本
月間(げっかん)(名)〇 一月期间
部数(ぶすう)(名)② 册数,份数
出版物(しゅっぱんぶつ)(名)③ 出版物
与える(あたえる)(他一)〇 给与
情報(じょうほう)(名)〇 情报,消息
伝達(でんたつ)(名 他サ)〇 传达
スピーチ コンテスト(名)⑤ 演讲比赛(speech contest)
束の間(つかのま)(名)〇 一瞬间,转眼之间
空想(くうそう)(名 他サ)〇 空想
浸る(ひたる)(自五)②〇 浸,泡;沉浸
手段(しゅだん)(名)① 手段
さすが(副 形動)〇 不愧是;就连
気分転換(きぶんてんかん)(名)④ 散散心
骨休め(ほねやすめ)(名)③ 休息
参考書(さんこうしょ)(名)〇⑤ 参考书
活字(かつじ)(名)〇 铅字
得る(える)(他一)① 得到
訓練(くんれん)(名 他サ)① 训练
場(ば)(名)〇 场合,场所
形成(けいせい)(名 他サ)〇 形成
人生観(じんせいかん)(名)③ 人生观
現実(げんじつ)(名)〇 现实
生き抜く(いきぬく)(自五)〇 活下去
疑問(ぎもん)(名)〇 疑问
現象(げんしょう)(名)〇 现象
当分(とうぶん)(副)〇 目前,暂时
功罪(こうざい)(名)〇 功过
分析(ぶんせき)(名 他サ)〇 分析
一目(ひとめ)(名)② 一眼,一看
現代(げんだい)(名)① 现代
受ける(うける)(自一)② 受欢迎
主催(しゅさい)(名 他サ)〇 主办,举办
開会(かいかい)(名 自他サ)〇 开会,开幕
埋まる(うずまる)(自五)〇 埋着;挤满
聴衆(ちょうしゅう)(名)〇 听众
主催者(しゅさいしゃ)(名)② 主办者
未満(みまん)(名)① 未满
満たす(充たす)(みたす)(他五)② 弄满,填满
使い慣れる(つかいなれる)(自一)⑤ 用惯
認識(にんしき)(名 他サ)〇 认识,理解
絶好(ぜっこう)(名)〇 绝好,极好
趣旨(しゅし)(名)① 宗旨,主要内容
いよいよ(副)② 终于;愈发
演壇(えんだん)(名)〇 讲台
インド(専)① 印度(India)
次次に(つぎつぎに)(副)② 一个接一个
熱弁(ねつべん)(名)〇 热情的演说
振るう(奮う)(ふるう)(他五)〇 发挥,振奋
いささか(聊か 些か)(副)② 稍微,一点
まごつく(自五)〇 不知所措
ユーモラス(形動)① 幽默的(humorous)
自国(じこく)(名)①〇 本国
引き付ける(ひきつける)(他一)④ 吸引
結論(けつろん)(名)〇② 结论
拍手(はくしゅ)(名 自サ)① 拍手,鼓掌
沸き起こる(わきおこる)(自五)④ 涌起,涌现,呈现
ほっと(副 自サ)〇① 放心貌
審査(しんさ)(名 他サ)① 审查
甲斐(かい)(名)〇 效果,价值
入賞(にゅうしょう)(名 自サ)〇 得奖
専門用語(せんもんようご)(名)⑤ 专业用语
数字(すうじ)(名)〇 数字
賞品(しょうひん)(名)〇 奖品
授与(じゅよ)(名 他サ)① 授予
講評(こうひょう)(名 他サ)〇 讲评
順位(じゅんい)(名)① 位次
集計(しゅうけい)(名 他サ)〇 总计,合计
減点(げんてん)(名 他サ)〇 扣分
張り切る(はりきる)(自五)③ 干劲十足;拉紧
(感谢 xzbaszy 输入课文和单词)
一、…にしたがって(本文)
年齢層が広がるにしたがって、今後その地位は上昇していくかもしれない。
表示后面的内容是根据前面的条件或理由自然合理地预想的结果。随着,从而。
国が豊かになるにしたがって、私たちの生活も豊かになりました。
随着国家的富强,我们的生活也变得富裕起来。
年が立つにしたがって、幼い時の記憶もしだいに薄くなってきました。
随着时间的流逝,幼年时代的记忆也渐渐的淡薄了。
二、数詞+という(本文)
月間発行部数が一億八千万冊という漫画は出版物の三分の一を占めるようになった。
接在数词后面表示说明或强调。
一か月に二百元という金では、とても生活できない。
一个月二百元,这点钱很难生活。
連休には数百万という人が遊びに出かけた。
连休的时候,数百万人出门游玩。
三、…ばかりか(本文)
…漫画は映画、テレビに作品を提供し、小説や音楽にも影響を与えるようになったばかりか、広告などでも…
表示不仅。意思与「ばかりでなく」相同。
あの人は漢字ばかりか、ひらがなもかたかなも書けない。
不仅是汉字,那个人连平假名和片假名也不会写。
李さんは日本語が話せるばかりか、英語も上手だよ。
小李不仅会说日语,英语也不错。
四、ものだ(会話)
月間発行部数一億八千万冊というのは、全く驚くべきもので、……
以前は勉強に疲れた時、気分転換のために、漫画を眺めたものだけど、
表示说话者的感叹。接在过去式后面,表示对过去常做的事或某种经历的回忆。
日本人はよく働くものですね。
日本人工作真勤劳阿。
学生時代にはよく遅くまで帰らなかったものだ。
学生时代,我经常很晚也不回家。
五、…そのもの(会話)
最近のように教科書や参考書そのものが漫画化している場合は、骨休めには、どうするんでしょうね。
接在名词后面,加强名词的词意。
ものの考え方そのものの違いが大きい。
对于事物的思考方法本身的差异就很大。
彼の仕事ぶりは熱心そのものだ。
他工作起来非常热心。
六、…となっている(応用文)
参加の資格は外国人学生で、在日三年未満という条件を満たす者となっている。
表示规定。
スピーチの内容は自由ですが、時間は八分以内となっています。
演讲的内容可以自定,但时间规定在八分钟以内。
本学の学生が卒業までに習得しなければならない単位数は一二〇点となっています。
规定本校学生毕业前必须修完学分一百二十分。
七、ものの(応用文)
きっとうまくやるとは思うものの、いささか心配である。
表示连接起来的两个事项的意思是相反的,相当于虽然……但是……。
常用型:とは思うものの、とは言うものの。
着物を買ったものの、なかなか着て行く機会がない。
虽然买了和服,却一直没有机会穿。
ここは静かだというものの、買い物には不便だ。
这里虽然很安静,买东西却不方便。
八、…とは思えない(応用文)
日本に来て一年半とは思えない上手な日本語が印象に残っている。
表示看不出,令人不能相信,叫人不能想象。
とても八歳の子供の考え出したとは思えないすばらしい方法を彼は考え出した。
他想出一个非常好的办法,令人难以相信是一个八岁的孩子想出来的。
どうしてもそれを彼がやったとは思えない。
怎么也不相信这是他做的。
九、…て見せる(応用文)
友人は、来年こそ一位に入賞して見せると張り切っていた。
表示一定做好某件事的决心和意志。
明日の試合には、きっと勝って見せるぞ。
明天的比赛,一定赢给你看。
きっといい論文を書いてみせる。
一定写出好的论文来。
十、さすが(会話)
日本はさすがに漫画大国ですね。
さすがの大講堂も人で埋まっていた。
(1)表示不愧,到底
さすがに五年間留学して、日本語が上手だ。
到底留学了五年,日语很好。
朝から晩まで働き続けて少しも休まなかった。さすがは労働模範だ。
从早到晚连续的工作,连歇都不歇一歇。不愧是劳动模范。
(2)「さすがの」表示就连……也……。
さすがの彼もだめだった。
就连他也不顶用。
あんなひどいことを言われては、さすがのおとなしい彼だって、黙ってはいられないだろう。
被人说得那么厉害,就连老实的他也无法沉默下去了。
(3)表示毕竟,到底。
とても気に入りましたが、さすがにこれ以上お金を使ってはいけないので買わないことにしました。
非常中意。毕竟不能再花钱了,所以决定不买了。
さすがにやめるとは言えなかった。
到底还是没能说不干了。