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地からわく_妖星人R_江户川乱步_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:地からわくカニ怪人のために、からだを消された井上少年は、それからどうなったのでしょうか。それは、しばらくのちのお話として
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地からわく


カニ怪人のために、からだを消された井上少年は、それからどうなったのでしょうか。
それは、しばらくのちのお話として、ここには、もっとべつな、もっとふしぎなできごとを、みなさんにおしらせしなければなりません。
カニ怪人が岩谷美術館の館長古山博士のうちから、貴重な美術品、推古仏をぬすみさったことは、前に書きましたが、こんどは、岩谷美術館そのものが、おそわれることになったのです。
ある夜のこと、古山博士から警視庁に電話がかかりました。電話口によびだされたのは、捜査一課の中村なかむら警部でした。中村警部は、いま日本じゅうをさわがせているR怪人の係りのひとりだったからです。
「R怪人があらわれました。」
「えっ、いつ、どこへです。」
「つい、いましがたです。しかし、もういなくなってしまいました。電話ではなんですから、岩谷美術館まで、おでかけくださいませんか。ねんのため、部下のかたをおつれくださるほうがいいとおもいます。」
「しょうちしました。すぐ車でいきます。」
中村警部は五人のうでききの刑事をつれて、大型自動車をとばしました。そして、岩谷美術館についたのは、もう夜の七時半でした。美術館は五時に閉館になり、のこっているのは古山博士と、三人の館員ばかりでした。
警部と刑事たちは、会議室のような広い部屋にとおされました。そこに古山博士と館員たちがまっていたのです。
「電話では、くわしいお話ができませんでしたが、実に奇怪なことがおこったのです。わたしはこの目で見たし、ここにいる館員たちも見ているので、まちがいはありませんが、それをお話ししただけでは、信用していただけないかもしれません。」
「カニ怪人があらわれたのですか。」
「そうです。しかも、ひとりではありません。全部で十人に近いでしょう。ほうぼうにあらわれたのです。そして、そのあらわれかたが、じつにふしぎせんばん。ありえないことがおこったのです。」
「といいますと?」
「地の中から、わきだしたのです。」
「それならこのあいだ、先生のお宅でも、地の中からあらわれたではありませんか。」
「いや、あれとはちがうのです。あのときは地面に穴があいていました。ところが、今夜は穴がないのです。地面にはなんの異状もなくて、しかも、そこからカニ怪人が幽霊のようにわいてきたのです。そして、また、そこから地面の下へ消えてしまって、地面には、なんのあとものこらないのです。」
「さいしょ、それを見たのは、わたしです。」
館員のひとりが話をひきつぎました。
「五時に閉館したあとに、われわれ三人がのこって、カードの整理をしていました。館長さんも、今夜はのこっておられました。わたしたちの事務室は庭にめんしているのですが、暗い窓の外に、なにか動いているものが見えたのです。
コンクリートのへいまで、十五メートルほどあります。そこにヒマラヤスギが、ならんで立っているのです。その一本のヒマラヤスギのねもとに、なんだか、動いているものがありました。
くらくて、よくは見えません。犬かしらとおもいましたが、どうも犬やなんかではなさそうなのです。みんなが、立って、窓からのぞきました。
『へんだぞ。いってみよう。』
わたしはそういって、懐中電灯をもつと、外へとびだしていきました。あとのふたりも、ついてきました。
ヒマラヤスギに近づいて、懐中電灯をてらしてみると、そこにおそろしいものが、うごめいていたのです。あのカニのこうらのような頭をもった、カニ怪人です。こうらの下に二つの目が、青い火のように光っていました。
いま地面から、はいだしたところでした。青い目で、じっとこちらをにらんでいるのです。
わたしたちは、キャッといって、にげだしました。しかし、あいても、おどろいたのでしょう。そのまま、地面の中へ、もどっていったのです。二十メートルもにげて、ふりかえってみると、カニ怪人は、からだをぜんぶ、地面の下にいれて、大きな頭だけが、地面の上にのこっているのでした。そして、その頭も、わたしたちの見ている前で、地面の中へ、すいこまれてしまったのです。
わたしたちは、しばらくして、そこへもどってよくしらべてみましたが、地面には、なんのあとものこっていませんでした。むろん、穴なんかあいていないのです。」
古山博士が、そのあとをひきとって、話をつづけました。
「それからまた、あいつらは、庭のほうぼうにあらわれたのです。ひとりのカニ怪人が、つぎつぎとあらわれたのではありません。すくなくとも、五―六人はおなじやつがいました。いっぺんに、五本のヒマラヤスギの下にあらわれたこともあるからです。
わたしたちは、きちがいのようにあちこちと、走りまわりました。しかし、こちらが気づいたときには、怪人は、地面の中へ、姿をかくしてしまうのです。
わたしたちを、からかっていたのです。べつに、危害をくわえるわけではありません。
おれたちは、こんな神通力じんつうりきをもっているのだ。美術品をぬすむぐらいわけはないぞと、おどかしにやってきたのです。
これは、わたしが、そうおもうだけではなくて、あいつの口からきいたのです。」
「えっ、あいつが、なにかしゃべったのですか。」
中村警部が、おもわずききかえしました。
「美術館には地下室があります。物置きにつかっているのです。その地下室に、ゴトゴトと音がしたのです。
わたしは、それに気づくと、懐中電灯をもって、おりていきました。地下室のドアをひらくと、あいつが、コンクリートの床から、わきだしてくるところでした。もう、腰のへんまででていました。そして、わたしの目の前で足まであらわれたのです。すると、いきなり、こんなことをいいました。
『いくら、用心してもだめだよ。きょうから五日のうちに、ここの美術品をぜんぶ、ちょうだいするからね。』
そして、カニ怪人は、すいこまれるように、コンクリートの床の中へ、消えていったのです。
地面ばかりではありません。あのかたいコンクリートでも、自由に、ぬけてでる力をもっているのです。
コンクリートの床には、なんのあとも、のこっていません。わたしは信じられませんでした。夢をみているのではないかとおもいました。
しかし、かんがえなおしてみると、妖星人Rのいきものには、地球上の物理では、はかることのできない力があるのかもしれません。
そんなさわぎがおこったすぐあとで、あなたにお電話したのです。また、あいつがあらわれるかもしれないとおもったからです。」
「すると、今夜は、いくにんものカニ怪人があらわれて、あなたがたを、おどかしただけなんですね。」
「そうです。いままでのところは、そうです。五日のうちに、美術品を、ねこそぎ、ぬすみだすぞと、予告をするためにやってきたのです。」
「ふせがなければなりません。」
「そうです。ふせがなければなりません。」
「しかし、おそろしいあいてだ。」
「そうです。ふせげないかもしれません。あいつは、地面でも、コンクリートでも、自由に、もぐってくることができるのです。そうして、地面の下をくぐって、美術品をはこびだすかもしれません。」
「しかし、警察は、あらゆる知恵をしぼって、これをふせがなければなりません。われわれは戦うのです。地球の名誉にかけて、あいつをとらえなければなりません。」
古山博士と中村警部が、むちゅうになって話しているあいだに、おそろしいことが、おこっていました。
部屋のガラス窓の外に、四つの青い光が、じっと、こちらをにらみつけていたのです。
「あっ!」
それに気づいた刑事が、いきなり立ちあがって、窓のほうへ、かけだしました。
みんなが、一度に、そのほうを見ました。ふたりのカニ怪人が、窓からのぞいていたのです。
刑事たちは、みんなピストルをもっていました。四つのピストルが、ふたりのカニ怪人に、ねらいをさだめ、ガラス窓が、おそろしいいきおいで、ひらかれました。
しかし、怪人のほうが、はやかったのです。ひととびで、むこうのヒマラヤスギのねもとに、もどっていました。そして、スーッと消えていったのです。地面にすいこまれたとしか、かんがえられません。
中村警部と刑事たちは、外にでて、懐中電灯で、ヒマラヤスギの下をしらべましたが、地面には、なんのあとものこっていませんでした。
中村警部は青ざめた顔で、もとの部屋にもどってきました。そして、おそろしくまじめなちょうしで、古山博士にいうのでした。
「いよいよ重大なことになってきました。すぐに本庁にかえって、会議をひらきます。自衛隊の力をかりることになるかもしれません。学者の知恵をかりるのは、もちろんです。これは日本だけの問題ではありません。地球の大事件です。
いまのところ、美術品をねらっているらしいけれども、それだけですむとはおもわれません。なにしろ、あいては地球の物理では、考えられない魔力をもっているのですからね。
世界じゅうの警察と軍隊が、力をあわせて、戦わなければならないときがきたのです。むろん、これは国連がとりあげるべき問題ですね。」
警部の青ざめたひたいに、玉のあせが、うかんでいました。
刑事たちも、古山博士も、美術館員も、警部の話をきくと、ことの重大さが、ひしひしと、身にこたえるように、わかってきました。
あいてはコンクリートをつきぬけて、なんのあとものこさない魔力をもっているのです。いや、そればかりではありません。古山博士や中村警部は、まだしりませんが、カニ怪人は、おもうままの人間や動物にばけるR変身の術をこころえているのです。また、そのうえ、じぶんが消えるだけでなくて、だれでも消すことができるのです。
こんなおそろしい力をもったやつをどうして、ふせげばよいのでしょう。妖星人Rがその気になれば、地球ぜんたいを、ほろぼしてしまうことも、できるのではないでしょうか。
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