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九 ベクスヒル海岸の殺人

时间: 2024-04-10    进入日语论坛
核心提示:  九 ベクスヒル海岸の殺人  わたしは、いまでも、七月二十五日の朝の目ざめをおぼえている。確かに、七時三十分ごろだった
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  九 ベクスヒル海岸の殺人
  わたしは、いまでも、七月二十五日の朝の目ざめをおぼえている。確かに、七時三十分ごろだったにちがいない。
  ポワロがわたしのベッドのそばに立って、静かに、わたしの肩をゆすぶっていた。ちらっと一目、かれの顔を見るなり、わたしは半睡の状態から、いっきに目をさましてしまった。
  「どうしたんだ?」と、わたしはたずねながら、すばやく身を起こした。
  かれの返事は、ごくあっさりとした調子だったが、おびただしい感情が、かれが吐き出した短かい言葉のかげにかくされていた。
  「起こったよ」
  「なんだって?」と、わたしは、叫ぶようにいった。「すると――だって、きょうが二十五日じゃないか」
  「ゆうべ、起こったのだよ――というよりも、けさ早くというべきだよ」わたしが、ベッドから飛び出して、大急ぎで仕度をすると、かれは、いましがた電話で聞いたばかりのことを、手短かに話して聞かせてくれた。
  「若い娘の死体が、ベクスヒルの海岸で発見されたのだ。エリザベス?バーナードという女だとわかった。あるカフェの女給で、最近建ったばかりの小さなバンガローに、両親といっしょに住んでいたということだ。警察医の検証の結果によると、死亡時刻は、十一時三十分から午前一時までということになったそうだ」「これが、あの犯行だということは確かなんだね?」と、大急ぎで顔に剃刀かみそり をあてながら、わたしはたずねた。
  「ベクスヒル行きの列車のところを開いたABC鉄道案内が、死体の下から出てきたそうだ」
  わたしは、ぞっと身震いした。
  「いやな話だね!」
  「気をつけることだね、ヘイスティングズ。わたしの部屋で、もう一つ悲劇が起こるなんてごめんだからね!」
  わたしは、ちょっとげっそりして、顎あご の血を拭きとった。
  「われわれの戦闘計画は?」と、わたしはたずねた。
  「もうすぐ、車がわれわれを迎えにやって来るはずです。きみのコーヒーは、ここへ持って来てあげますよ。出発を遅おく らせるわけにはゆかないからね」二十分の後には、わたしたちは、速力のはやい警察の車に乗って、テームズ河をわたり、ロンドンの外に向かっていた。
  クローム警部がいっしょに乗っていた。この間の会議にも出席していた男で、この事件の担当者だった。
  クロームは、ジャップとはすっかりちがったタイプの警官だった。ずっと若い男で、口数のすくない、優等生タイプだ。教養もあり、知識もある男だったが、わたしの好みからいえば、あまりにも自己満足の気味があった。かれは、つぎつぎに起こった幼児殺しの事件で、現在はブロードムアにはいっている犯人を根気よく追いつめて、名声を得たばかりだった。
  かれは、確かにこんどの事件を担当するには、うってつけの人物だった。が、すこしばかり、自分でそのことを意識しすぎていると、わたしは思った。ポワロに対するその態度には、いやにもったいぶったところがあった。若い連中が、年長者に対するような――やや自意識過剰な、「パブリック?スクール」式なやり方で、かれに敬意をはらっていた。
  「わたしは、トンプスン博士とよくお話いたしました」と、かれはいった。「あの方は、『一連』式とか、『連続』式の殺人事件に、非常に興味を持っていらっしゃいますのです。
  人間の心理の、特殊な、ゆがめられたタイプの産物だからですね。もちろん、門外漢としては、そういう心理が医学的見地におもしろいと思うものを提示するような、細部の点を十分に理解することはできませんですがね」かれは、そこで咳をした。「事実――わたしがこの前に扱った事件で――お読みになったかどうか存じませんが――メーベル?ホーマー事件といって、マスウェル?ヒルの女学生の事件でございますがね――あの事件の場合、あのカッパーという男は、異常な奴でした。あの犯行を、かれがやったのだときめつけるのは、驚くほどむずかしいことでした――なにしろ、三人目の犯行でしたからね! あなたや、わたしと同じように、まったく正気としか見えないのです。しかし、いろいろのテストがありまして――誘導訊問じんもん というやつでございますね――もちろん、まったくモダーンなやり方で、あなたがご活躍なすったころのようなものではございません。いったん、泥どろ を吐くように誘導してしまいさえすれば、もうこっちのものです! こっちがすっかり知っているのだと思うと、もうまいってしまいますからね。相手は、四方八方、泥を吐き出しますよ」
  「わたしの時代でも、そういうことはよくあったものです」と、ポワロはいった。
  クローム警部は、かれに目をあてていたが、やがて、話し好きの人間のように、ぼそぼそと口の中でいった。
  「ほう、そうですか?」
  しばらくの間、おたがいに黙っていた。ニュー?クロス駅をすぎたころ、クロームがこういった。
  「なにかこの事件について、おたずねになりたいことがございましたら、どうぞおっしゃってください」
  「死んだ娘のことはおわかりになっていないでしょうね?」「年齢は、二十三歳で、『ジンジャー?キャット』というカフェで、給仕をしていまして――」
  「いや、そういうことじゃなく。どうでしょう――その娘さんは、美人でしたか?」「そういうことについては、なにも報告をうけておりませんのですが」と、クローム警部は、ちょっとまいったという調子で、こういったが、その物腰は、「まったく――外国人なんて! みんな、こうさ!」といっていた。
  かすかにおもしろがっているような色が、ポワロの目に浮かんだ。
  「そういうことは、あなたには重要だとは思えないらしいですね? ところが、一人の女にとっては、それは、第一に重要なことですよ。時とすると、美醜が女の運命を決定することさえあるのですからね!」
  クローム警部は、すっかり黙りこくっていた。
  「はあ、そうですか?」と、ていねいに、かれはたずねた。
  また沈黙が来た。
  その沈黙は、セブンオークの近くに来て、ポワロがまた口をきるまで、つづいた。
  「ひょっとして、その娘さんが、どういうふうに、それから、なんで首をしめられたか、報告を受けておいででしょうか?」
  クローム警部は、手短かにこたえた。
  「かの女自身のベルトでです――太い、編んだものだ、と、いうことでした」ポワロの目が、とても大きく開いた。
  「ははあ」と、かれはいった。「とうとう、非常に明確な情報が一つ、手にはいったわけですね。なんかの手がかりにはなりますね?」
  「わたしは、まだ、見ていないのです」と、クローム警部は、ひややかにいった。
  わたしは、この男の用心深さと、想像力のなさとに、いらいらしてきた。
  「それは、十分に犯人の証拠になるじゃありませんか」と、わたしはいった。「娘のベルトなんですからね。犯人の精神状態の、特殊な野獣性をあらわしているじゃありませんか」ポワロは、底の知れないような目を、ちらっと、わたしに向けた。うわべには、おもしろがっているような、そのくせ、いらいらした色が浮かんでいた。わたしは、たぶん、警部の前で、あまりしゃべりすぎるなという警告だな、と、思った。
  わたしは、また黙りこんでしまった。
  ベクスヒルでは、カーター警視が、わたしたちを迎えてくれた。かれといっしょに、ケルセイという、快活な顔つきの、頭のきれそうな、若い警部がいた。かれは、クロームといっしょに事件を担当するために派遣されて来たということだった。
  「きみは、きみ自身で捜査をしたいだろう、クローム」と、警視はいった。「だから、事件の主要な点をいっておくから、後は、大いにやってくれたまえ」「ありがとうございます」と、クロームはいった。
  「娘の両親には、報告をしておいた」と、警視はいった。「二人には、大変なショックだった。むろん、すこし元気を回復してから訊問をしようと思って、そのままにしておいた。だから、きみは、第一歩からはじめられるというものだ」「ほかに、家族はあるんでしょう――ね?」と、ポワロがたずねた。
  「女きょうだいが一人――ロンドンでタイピストをしています。それにも知らせておきました。それから、若い男が一人――実際をいうと、かの女は、ゆうべ、その男といっしょに外出していたらしい、と、わたしはにらんだのです」「ABC鉄道案内からは、なにかわかりましたでしょうか?」と、クロームがたずねた。
  「そこにある」と、警視は、顎でテーブルの方をさした。「指紋はない。ベクスヒルのページがあけてあった。新しいだろうね――どうも、あまりあけた様子がないらしいから。どっか、この辺で買ったものではないね。売っていそうな文房具店はみんな、あたってみたのだが」
  「死体を見つけたのは、誰でしょうか?」
  「新鮮な空気を吸いに来る、早起きの連中の一人の、老人の大佐だ。ジェローム大佐だ。六時ごろに、犬を連れて、家を出かけた。海岸にそってクーデンの方に行って、それから、砂浜へおりた。犬がなにかをかぎつけて、飛んで行ってしまった。大佐が呼んでも、犬はもどって来ない。大佐は、それを見て、なにか変わったことがあるなと思ったんだね。行って、見たというのだ。とても正しいふるまいだ。娘には、全然、手を触れずに、すぐに、警察へ電話で知らしたのだ」
  「それで、死亡時刻は、昨夜の真夜中ごろということでしたね?」「十二時から一時にかけての間で――これは、かなり正確だ。われわれの人殺しジョーカーは、言責を重んずる男だ。二十五日といったら、間違いなく二十五日だ――たとえ、ほんの数分のちがいだったとしてもね」
  クロームは、うなずいた。
  「そうですね。確かに、それが奴の気質ですね。ほかには、なにもありませんでしょうね? なにか参考になることを目撃した者はないのでしょうね?」「いままでのところはないね。しかし、まだ早すぎるということもあるからね。白い服を着た娘が、ゆうべ、男と歩いているのを見たという連中が、すぐに、出て来るだろう。ゆうべは、若い男と歩いていた白服の娘は、四、五百人もいたろうからね。ちょっと悪くない楽しみだね」
  「では、そろそろ出かけた方がよろしいでしょうね」と、クロームがいった。「カフェもありますし、娘の家もありますから。両方とも行った方がいいでしょうね。ケルセイもいっしょに行くだろう」
  「それで、ポワロさんは?」と、警視がたずねた。
  「ごいっしょにまいりましょう」と、ポワロはクロームにいって、ちょっと頭を下げた。
  クロームは、ほんのすこし困ったような顔をしたような気がした。それまで、ポワロに会ったことのないケルセイは、無作法に、にやにやっと笑いを浮かべた。
  どうも、わたしの友だちにはじめて会った世間の人たちが、とびきりのお笑い草のように考えがちなのは、まことに遺憾いかん なことだ。
  「娘が絞め殺されたそのベルトは、どうですか?」と、クロームがたずねた。「ポワロさんは、それを貴重な手がかりだと思っていらっしゃるらしいんですね。ごらんになりたいんじゃないでしょうか」
  「その必要はありませんね」と、すぐに、ポワロはいった。「きみは、誤解していらっしゃるようですね」
  「あれは、なんにもなりませんよ」と、カーターがいった。「皮のベルトじゃないんです――皮だったら、指紋も残っていたかもしれませんがね。太い、絹編みでしてね――首を絞めるのにはお誂あつら え向きの物です」
  わたしは、思わず身ぶるいした。
  「それでは」と、クロームがいった。「出かけましょう」わたしたちは、出発した。
  最初に、「ジンジャー?キャット」へ行った。海岸通りにある、ごくありふれたタイプの、小さな喫茶室だ。ァ§ンジ色の格子縞こうしじま のテーブル?クロースのかかった、小さなテーブルが数脚に、同じァ§ンジ色のクッションをおいた、ひどくすわり心地ごこち のよくなさそうな籠細工かございく の椅子いす が並べてあった。とくに、朝のコーヒーとか、五種のお茶(デボンシャー風、農家風、果汁かじゅう 入り、カールトン?クラブ風、砂糖なし)とか、それから、かき卵とか、えびとか、マカロニ?グラタンとかいった婦人向きの軽い食事とかが専門の、そういった店だった。
  ちょうど、朝のコーヒーのお客がはいっている最中だったので、女主人は、大急ぎでわたしたちを、おそろしく取り散らかした奥の私室に案内した。
  「ミス――ええと――メリァ◇ですね?」と、クロームがたずねた。
  ミス?メリァ◇は、かん高い、困りきった良家の婦人のような声で泣き言をいった。
  「わたくしでございます。ほんとうに困ったことでございますわ。とても困ってしまいましたわ。どんなに、わたくしどもの商売にさわるか、ほんとに、わたくしは考えもつきませんわ!」
  ミス?メリァ◇は、薄いァ§ンジ色の髪の毛の、四十ぐらいの、ひどく痩せた女だった。
  (まったく、かの女こそ、驚くばかり生薑色ジンジャー の猫キャット にそっくりだった)かの女は、いやに形式張った衣裳の、にぎやかな襟飾えりかざ りや、ひだ飾りを、せかせかといじりまわしていた。
  「人気にんき が出ますよ」と、ケルセイ警部が元気づけるように、いった。「まあ、いまにわかりますよ! すぐには、お茶が出し切れないくらいになりますよ!」「いやになりますわ」と、ミス?メリァ◇はいった。「ほんとに、やりきれませんわ。人間というものが、つくづく、いやになりますわ」ところが、そういう口の下から、かの女の目は、きらきらと光っている。
  「死んだ娘のことについて、なにかお話し願えませんかね、ミス?メリァ◇?」「なんにも」と、ミス?メリァ◇は、きっぱりといった。「ほんとに、なんにもありませんのよ!」
  「どれくらい、ここで働いていたんです?」
  「これで、二年目の夏ですわ」
  「あの娘には、満足しておいででしたか?」
  「いい給仕でしたわ――活溌で、親切で」
  「美人だったのでしょうね?」と、ポワロがたずねた。
  こんどは、ミス?メリァ◇が「まあ、外国人というものは、こうなんだから」といった目つきを、かれに向けた。
  「きれいな、清潔な感じの娘でしたわ」と、かの女は、よそよそしくいった。
  「ゆうべは、何時ごろ、番をおわって出かけました?」と、クロームがたずねた。
  「八時でした。うちでは、八時に店をしめるんですの。夕食は、出さないんです。ご注文がないもんですからね。かき卵とお茶(そう聞いたとたん、ポワロは、身ぶるいした)を召しあがる方が、七時か、時によると、もうすこし遅くいらっしゃいますけど、いそがしいのは、六時半までですわ」
  「あの娘は、ゆうべ、なにをしてすごすつもりか、あなたにいいませんでしたか?」「いいませんでしたとも」と、ミス?メリァ◇は、力を入れていった。「そんなことをいう間柄あいだがら じゃないんですもの」
  「かの女を訪ねて来たとか、呼び出しに来た者はありませんでしたか? なんか、そういったことは?」
  「いいえ」
  「いつもと変ったところはありませんでしたか? 興奮しているとか、しょげこんでいたとか、そんなことはありませんでしたか?」
  「ほんとになんとも申しあげられませんのよ」と、ミス?メリァ◇は、そっけなくいった。
  「給仕の女の人は、何人使っておいでです?」「ふだんは二人ですけど、七月の二十日から八月の末までは、臨時を二人おきますの」「しかし、エリザベス?バーナードは、臨時の方じゃなかったんでしょう?」「ミス?バーナードは、常雇いの方です」
  「もう一人の方というのは?」
  「ミス?ヒグリーですか? あの娘は、とてもいい娘ですわ」「その娘さんと、ミス?バーナードとは、仲はよかったんですか?」「ほんとに、なんとも申しあげられませんわ」「その娘さんに会って、話ができるといいんですがね」「いまですか?」
  「もし、おさしつかえなければ」
  「では、こちらへよこしましょう」といいながら、ミス?メリァ◇は立ちあがった。「できるだけ早くすませてくださいましね。ちょうど朝のコーヒーで、いそがしいさかりだものですから」
  猫キャット のような、生薑ジンジャー のようなミス?メリァ◇は、部屋を出て行った。
  「なかなか上品ですな」と、ケルセイ警部はそういって、あの婦人の気取った口調くちょうをまねて、「ほんとに、なんとも申しあげられませんわ」と、その時、髪の毛の黒い、ばら色の頬ほお の、ぽっちゃりとした娘が、黒味がちな目を興味でぎょろぎょろさせながら、ちょっと息を切らして、飛びこんで来た。
  「ミス?メリァ◇にいわれて、来ました」と、娘は、息を切らしていった。
  「ミス?ヒグリーですね?」
  「はい、わたしです」
  「エリザベス?バーナードを知っていましたね?」「ええ、そうですわ、よくベッティを知ってましたわ。おそろしいわねえ? ほんとに、おそろしいわ! とても、ほんとだとは、あたしには思えないわ!『ねえ、みんな、とてもほんとうとは思えないわね』って、あたし、いったのよ。ベッティ! そうよ、ベッティ?
  バーナードよ。ずっといっしょにいたベッティ?バーナードが殺されたなんて!『とてもじゃないけど、信じられないわ』って、あたし、いったのよ。五へんも六ぺんも、あたし、自分をつねってみたのよ、夢を見ているんじゃないかと思って。ベッティが殺された……ねえ――そう、わかるでしょう――とても、ほんとうとは思えないわ」「あんたは、死んだ人を、よく知っていたんですね?」と、クロームがたずねた。
  「そうよ、あの人、あたしよりずっと長く、ここで働いていたわ。あたしは、この三月に来たばかりなの。あの人は、去年からいたのよ。どっちかといえば、地味な方だったわ、あたしのいう意味がわかるかしら。むやみに、笑ったり、ふざけたりするような人じゃなかったわ。といって、芯しん からおとなしいというのじゃないのよ――自分の中に、おもしろいことや、そう、そんなことを、たっぷり持っていたわ――でも、外には出さなかったわ――そうよ、あの人は、おとなしい人だったともいえるし、おとなしくない人でもあったわ。あたしのいう意味がわかるかしら」
  クローム警部は、おそろしく辛抱強かったと、いっていいだろう。証人として、このはち切れそうに健康な、ミス?ヒグリーは、しつこく、気が狂いそうになる相手だった。なんでもかんでもいうたびに、繰り返すし、五へんも六ぺんも文句だくさんにいうのだった。が、その正味ときたら、きわめて貧弱だった。
  かの女は、死んだ娘とは親密な間柄ではなかったのだ。エリザベス?バーナードは、ミス?ヒグリーよりも一段上だと、自分のことを思っていたらしい。かの女は、仕事をしている時間中は、みんなと仲よくしていた。が、そのほかの時は、娘たちは、あまり、かの女と会いもしなかった。エリザベス?バーナードには、一人、「友だち」があって――駅の近くの、コート?アンド?ブランスキルという、不動産紹介所で働いていた。いや、コート氏でも、ブランスキル氏でもなく、そこの事務員だった。かの女は、その男の名前を知らなかった。しかし、顔だけは、よく知っていた。美貌びぼう で――そう、非常な美貌で、いつも、きちんと整った服装をしていた。明らかに、ミス?ヒグリーの胸のうちには、嫉妬しっと の炎らしいものが燃えていた。
  結局、要約すると、こういうことだった。エリザベス?バーナードは、夜はどうするかなどということを、カフェの誰にでも打ち明けるようなことはしなかった。が、ミス?ヒグリーの意見では、かの女は、その「友だち」に会いに行っていたというのだった。かの女は、「新しい型の襟の裁断の、とっても、すごくしゃれた」作り立ての、白いドレスを着ていた、というのだった。
  わたしたちは、ほかの二人の娘たちにも、それぞれ会って話を聞いてみたが、それ以上の結果は得られなかった。ベッティ?バーナードは、かの女のもくろみなどは、なんにもいいもしなかったし、問題の夜の間じゅう、ベクスヒルで、かの女を見かけた者も、誰一人いなかった。
 
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