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赤毛連盟(1)_シャーロック・ホームズの冒険(冒险史)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:赤毛連盟 昨年の秋のある日、ぼくが友人のシャーロック・ホームズのもとを訪ねると、ホームズは赤ら顔で太った年配の紳士と熱心
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赤毛連盟

 昨年の秋のある日、ぼくが友人のシャーロック・ホームズのもとを訪ねると、ホームズ

は赤ら顔で太った年配の紳士と熱心に話し込んでいた。その紳士の髪の毛は燃えるような

赤い色をしていた。邪魔をしたおわびをいって引き返そうとしたところ、ホームズが急に

ぼくを部屋に引っぱり込み、扉を閉めた。

「ワトスン君、じつにいいタイミングで来てくれたね」ホームズはうれしそうにいった。

「いや、お話の途中かなと思って」

「そのとおり。話に熱中していた」

「じゃあぼくは隣の部屋で待っているよ」

「いいんだよ。ウィルスンさん、こちらはぼくが解決した事件のほとんどでパートナーと

して協力してくれた人なんです。今回の事件でもおおいに助けとなってくれるはずです

よ」

 太った紳士は椅子から腰を浮かして軽くおじぎをしながら、腫はれぼったい小さな目で

いぶかしげにちらりとぼくを見た。

「そこの長椅子にかけてくれ」ホームズはそういって、自分も肘ひじ掛かけ椅い子すにも

どると、両手の指先を合わせた。これはホームズが考え事をするときのポーズだ。「いい

かい、ワトスン、きみもぼくと同類だ。型にはまった日常生活の埒らち外がいにある奇妙

な出来事に情熱を持っているはずだ。そのことは、きみがぼくのささやかな冒険の数々を

熱心に書き留め、こういってはなんだが、少々の脚色も加えてきたことからもあきらか

だ」

「たしかにホームズの扱う事件は、ぼくにとって関心の的だよ」

「この前、ぼくがいったことを覚えているかな? メアリー・サザランドさんが持ち込ん

できた単純な事件の調査に入る少し前のことだよ。ぼくはこういった。不思議な現象や異

常な出来事を求めるなら、実際にそこらにある人生を見なければならない。人生というの

は、いかなる想像力も及ばないほど衝撃的なものだ、と」

「そしてぼくは、その説には賛成しかねる、といった」

「そうだったね、ワトスン。しかしきみはいずれ、ぼくの意見に賛成しなければならない

よ。でなければぼくは事実をつぎつぎに積み重ね、その重みできみの論拠を押しつぶして

しまうまでだ。そうなったらきみはぼくが正しいと認めざるを得ない。ところで、今朝は

ジェイブズ・ウィルスンさんがわざわざお出いでになって話をしてくださってるんだが、

それがここしばらくで最高といってもいいくらい奇妙な話になりそうなんだ。前にもいっ

たと思うが、最も不思議な事件、最も異常な事件は、大きな犯罪より小さな犯罪に関連し

て起こることがすごく多いんだ。じっさい、犯罪が行われたのかどうかもあやしいような

ケースに関連して起こることもある。いままでお話をうかがったかぎりでは、ウィルスン

さんの持ちこまれた案件が犯罪といえるのかどうか、ぼくにもまだわからないんだが、事

の経過を見ると、いままでに聞いたこともないような奇妙な話であることはまちがいな

い。ウィルスンさん、よろしければもう一度、最初からお話し願えませんか。ワトスン博

士は最初の部分を聞いてませんし、じつに変わった話ですから、わたし自身もぜひ、可能

なかぎり細かいところまでお聞きしたいんです。わたしは、たいていの場合、お話を

ちょっとうかがっただけでだいたいのことはわかるんです。ほかにたくさん似たような事

件があって、それが頭に浮かぶもんですから。しかしウィルスンさんのお話は、どうやら

ほかに例を見ない、特異なものといわざるを得ませんね」

 太った紳士はちょっと自慢げに胸を張ると、厚手のコートのポケットから、しわくちゃ

になった汚い新聞を取り出した。膝ひざの上で新聞を平らにのばしながら、身を乗りだし

て広告欄に目を通していく。ぼくはホームズの手法をまね、この紳士を観察して、服装や

外見からなにか読み取ってやろうと思った。

 しかし、たいした成果はなかった。この依頼人は、でっぷり太って、もったいぶって、

鈍重な感じがするだけで、どこから見てもごくふつうのイギリス人の商人だ。ゆったりし

たグレーの格こう子し縞じまのズボンに、あまりきれいとはいえない黒のフロックコート

のボタンをはずしてはおり、薄茶色のチョッキを着込んでいる。チョッキから重そうな真

しん鍮ちゆうの時計鎖を垂らし、その先には四角い穴のあいた金属片がぶらさがってい

た。すり切れたシルクハットと、しわのよったビロードの襟のついた色あせた茶色のオー

バーが、かたわらの椅子に置いてある。しかし、いくらながめても、目立った特徴といえ

ば、燃えるような赤い頭髪と、やけにくやしげで不満そうな表情くらいしかない。

 シャーロック・ホームズはすぐにぼくのしていることに気づき、ぼくが問いかけるよう

なまなざしを送ると、頭を振りながらほほえんだ。「ぼくにわかるのは、ウィルスンさん

がかつてなんらかの肉体労働をされていて、嗅かぎタバコがお好きだということと、フ

リーメースン( 注・十八世紀初頭、ロンドンで設立された友愛と相互扶助を目的とする団体 )の会員で、中国

におられたことがあり、最近はかなりの書き物をなさっているということくらいかな」

 ウィルスン氏はびっくりして、椅子の上でぎくっと動いた。人差指は新聞紙の上に置い

たまま、ホームズを見つめた。

「いったいどうしてそんなことがわかったんですか、ホームズさん? わたしが肉体労働

をしていたなんて、どっからわかるんです? まさにどんぴしゃりですよ、わたしは昔、

船大工をしてましたからな」

「あなたの手ですよ、ウィルスンさん、右手が左手よりかなり大きい。右手をよく使って

いたからでしょう。筋肉もよく発達しています」

「なるほど。じゃあ、嗅ぎタバコのことは? それにフリーメースンは?」

「そんなことをいちいちご説明しては賢明な紳士に対して失礼かもしれませんが、あなた

はフリーメースンの厳しい規約に反して、弧とコンパス( 注・フリーメースンのシンボル )の飾り

ピンをつけていらっしゃる」

「おお、そうだった、うっかりしてた。しかし書き物は?」

「あなたの右の袖そで口ぐちが、五インチにわたっててかてか光っているのと、左の肘ひ

じのあたりがすり切れているのを見れば、ほかに考えられませんよ。両腕のそのあたりを

机にのせておられるんでしょう」

「では中国のことは?」

「右手首のすぐ上のところに魚の入れ墨を入れておられますね。それは中国でしかできな

い入れ墨です。わたしは入れ墨の研究をちょっとばかりやったことがあって、そのテーマ

の論文を書いたこともあります。魚の鱗うろこをそんなに上品なピンク色に染める技術

は、中国にしかありません。それに、あなたの時計鎖の先に中国の硬貨がぶらさがってい

るのを見れば、こんなに簡単なことはない」

 ジェイブズ・ウィルスン氏は大声で笑い出した。「ああ驚いた! 最初はものすごい推

理だと思ったが、こうして聞くと案外たわいもないことですな」

「これは失敗したな、ワトスン。説明なんぞするんじゃなかったよ。『未知なるものはす

べて偉大だ』というじゃないか。こんなに正直に話してると、ぼくのささやかな名声も台

無しになってしまう。まあ、もともとたいしたものじゃないがね。ところで広告は見つか

りましたか、ウィルスンさん?」

「はあ、やっと見つかりました」ウィルスン氏は太く赤い指で広告欄のなかほどを指し

た。「これです。これがすべてのはじまりなんです。ご自分で読んでもらえますかな?」

 ぼくはウィルスン氏から新聞を受け取って読んだ。

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