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青いガーネット(8)_シャーロック・ホームズの冒険(冒险史)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:「ふん! そのことはまたあとで話そう。さきに事件のその後の真相を聞かせてくれ。いったいどうやってあの宝石はガチョウの餌袋
(单词翻译:双击或拖选)

「ふん! そのことはまたあとで話そう。さきに事件のその後の真相を聞かせてくれ。

いったいどうやってあの宝石はガチョウの餌袋のなかに入って、どうやって市場に出ま

わったんだ? ほんとうのことをいうんだぞ。それしかおまえが救われる道はないんだか

らな」

 ライダーは乾いた唇をなめて話しだした。「ありのままに申しあげます。ホーナーが逮

捕されたあと、わたしは宝石をすぐにどこかに隠したほうがいいと思いました。いつ警察

がわたしの体や部屋を探そうとするかわかりませんから。ホテルのなかには安全な場所は

ありません。わたしは用事があるふりをして外出し、姉の家へ向かいました。姉はオーク

ショットという男のもとへ嫁いで、ブリクストン通りに住み、鳥を育てて市場に卸してい

ます。姉の家へいく途中、出会う人すべてが巡査か刑事に見えました。寒い夜だったの

に、顔から汗を流しながら、ようやくブリクストン通りへ着きました。姉は、どうしたん

だ、なぜそんな真っ青な顔をしているんだとたずねました。わたしは、ホテルで宝石の盗

難事故があったのでびっくりしているんだと答えました。それから裏庭へいってパイプを

ふかし、これからどうしたものかと考えました。

 わたしにはモーズリーという友人がいまして、これが悪の道にそれて、ペントンヴィル

の刑務所に入っていたこともあります。あるときその男に会って、泥棒の手口や、盗んだ

ものをどうさばくかといった話を聞いたことがありました。わたしはこの男の弱みをいく

つか握っていたので、彼なら裏切ることはないだろうと思いました。そこでモーズリーの

住んでいるキルバーンへ出かけ、秘密を打ち明けることにしました。そうすれば、どう

やって宝石をお金に換えたらいいか、教えてもらえるでしょう。しかしキルバーンまでど

うやったらぶじにたどり着けるのか。ホテルからここへくるだけでも、あれほど恐ろしい

思いをしたのです。いつつかまって身体検査をされ、チョッキのポケットにある宝石が見

つかるかわかりません。そのときわたしは、壁にもたれかかって、足元を歩きまわってい

るガチョウを見ていました。するととつぜん、あるアイデアが頭に浮かんだのです。古今

東西のどんな名探偵も出し抜けるようなアイデアです。

 姉は数週間前、自分のガチョウのなかでいちばんの上物をクリスマスプレゼントとして

わたしにくれるといっていました。姉は約束を守ってくれるはずです。わたしはその場で

ガチョウを選び、そのなかに宝石を入れて、キルバーンまで運ぼうと思いました。裏庭に

は物置小屋があり、わたしはその奥に一羽のガチョウを追い込みました。大きくて白い、

尾の部分に黒い筋のあるりっぱなガチョウです。それをつかまえて、くちばしをこじあ

け、のどのいちばん奥にまで手を突っこんで宝石を押し込みました。ガチョウがぐっとの

みこんだので、宝石は食道を通って餌袋に入ったはずだと思いました。しかしガチョウは

羽をばたばたさせて苦しがります。すると姉がなにごとかと出てきました。わたしが姉と

話をしようと振り返ったとき、ガチョウのやつはわたしの手から逃げ出して、羽をばたつ

かせながら、ほかのガチョウのなかへまぎれこんでしまいました。

『鳥になにかしたの、ジェム?』

『いや、姉さんがクリスマスに一羽くれるっていってたから、どれがいちばん太ってるか

調べてたんだ』

『あら、あなたにあげるのは別にとってあるわよ。ジェムの鳥って呼んでるの。大きくて

白いやつよ。ほら、あそこにいるでしょ。ぜんぶで二十六羽いるんだけど、あなたに一羽

あげて、うちのが一羽、残りの二十四羽は市場に卸すの』

『ありがとう、姉さん。でも、どれでもいいんだったら、ぼくはいま自分がつかまえたや

つをもらいたいんだ』

『でもジェムの鳥のほうが三ポンドは重いわよ。あなたのために特別に太らせたんだか

ら』

『いいんだ。さっきの鳥がいい。いまもらっていくよ』

『じゃあ、好きにしたら』姉はちょっとむくれていいました。『どれがほしいの?』

『あの白くて尾っぽに筋のあるやつ。ちょうど群れの真ん中にいる』

『ああ、いいわよ。いま絞めて持って帰りなさい』

 そこでわたしは姉のいうとおり、その鳥を絞め殺してキルバーンまで持っていったんで

すよ、ホームズさん。そして友人のモーズリーに自分のやったことを打ち明けました。彼

はそういうことを相談しやすい相手なんです。モーズリーはむせるほど笑い転げて、その

あとわたしたちは二人でガチョウの腹を割きました。そこでわたしは心臓が凍りつくかと

思いました。宝石が見つからなかったのです。わたしは自分がひどいまちがいを犯したこ

とに気づきました。鳥をその場に残して、あわてて姉の家へもどり、裏庭へ急ぎました。

が、そこには一羽のガチョウもいませんでした。

『姉さん、ガチョウはどこにいったんだい?』わたしは叫びました。

『問屋へ卸したのよ』

『どこの問屋?』

『コヴェント・ガーデンのブレッキンリッジよ』

『そのなかに黒い筋が尾っぽに入ったやつがいたかい? ぼくが選んだのとよく似たやつ

が?』

『ええ、ジェム。尾に筋が入ったのは二羽いてね、わたしでも見分けがつかなかったわ』

 それでようやく事情がわかって、わたしは全速力で走ってブレッキンリッジという鳥屋

のところへいきました。しかしあの鳥屋は姉から買ったガチョウをすぐに売ってしまって

いて、どこに売ったかぜったい教えてくれないのです。あの鳥屋のようすはホームズさん

も今晩ごらんになったでしょう。わたしがいくと、いつもあの調子なんですよ。姉はわた

しの気が変になってしまうんじゃないかと心配しています。わたしもときどき、自分でそ

う思います。そしてもう──もう泥棒の烙らく印いんを押されてしまった。魂を売ってまで

手に入れようとした富に、手も触れないでいるうちに。ああ、どうしよう!」ライダーは

わっと泣き出して両手で顔を覆った。

 そのあと長い沈黙が続いた。聞こえるのはライダーの荒い息づかいと、シャーロック・

ホームズがテーブルの端に指を打ちつける音だけだ。やがてホームズは立ち上がり、扉を

開け放った。

「出ていけ!」ホームズはいった。

「なんですって! おお、ありがとうございます!」

 それ以上いう必要はなかった。ライダーは大あわてで部屋を出ていき、階段を駆けおり

る音、扉がばたんと閉まる音がして、通りを走り去る靴音が響いてきた。

「だってそうだろ、ワトスン」ホームズは愛用の陶製パイプに手をのばしていった。「ぼ

くはいたらない警察の尻しりぬぐいをするために雇われているんじゃない。ホーナーが有

罪になるおそれがあるんなら話は別だ。しかしライダーはもうホーナーに不利な証言をし

に現れることはないだろうから、この件は立証が不可能になる。ぼくは犯人を逃がすとい

う大罪を犯したかもしれないが、ひとつの魂を救ったともいえる。あの男は二度と悪いこ

とはしないだろう。ひどくおびえているからね。いま刑務所に入ったりしたら、一生常習

犯になってしまう。それに、いまは許しのシーズンだろ。奇遇にも珍しい謎に出くわした

が、解決したのだからそれでよしとしようじゃないか。そこですまないがワトスン先生、

呼鈴を鳴らしてくれないか? ふたりでまた鳥が主役の新たな調査に取りかかるとしよう

よ」

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