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ボスコム谷の惨劇(5)_シャーロック・ホームズの冒険(冒险史)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: シャーロック・ホームズが帰ってきたのは夜も更けてからのことだった。レストレイドは町なかの宿に滞在しているので、ホームズ
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 シャーロック・ホームズが帰ってきたのは夜も更けてからのことだった。レストレイド

は町なかの宿に滞在しているので、ホームズはひとりで帰ってきた。

「晴雨計はまだずいぶん高い目盛りを指しているね」ホームズはすわりながらいった。

「地面を調べるまでは雨が降ってもらっては困る。しかしいっぽうで、ああいった慎重を

要する調査は、最善の体調でのぞまないとならない。長旅で疲れているときにやりたくは

ないんだよ。ところで、ジェイムズ・マッカーシーに会ってきたよ」

「それで、なにか収穫はあったかい?」

「なにも」

「少しでも、手がかりになりそうなことを聞き出せなかったのかい?」

「まったくだめだった。ぼくはいっとき、ジェイムズが犯人を知っていて、かばっている

のではないかと思っていたんだが、いまは彼もほかのみんなと同じくらいなにもわかって

いないのだと思っている。ハンサムだし気立てもよさそうだが、あまり頭の回転が速いほ

うじゃなさそうだ」

「趣味もよくないね。ミス・ターナーのような魅力的なお嬢さんとの結婚をほんとうにい

やがってるんだとしたら」

「ああ、それに関しては、痛ましい話があるんだ。ジェイムズはほんとうはあの娘に夢中

なんだ。おかしくなりそうなくらい愛している。だが二年ほど前、ジェイムズがまだほん

の子供だったころのことだ。ミス・ターナーは五年も寄宿学校にいっていたので、彼女の

ことはあまりよく知らなかった。そのときに、このぼんくら小僧がなにをしたかという

と、ブリストルで酒場の女に引っかかって、登記所で結婚までしてしまったんだ。このこ

とはだれも知らない。しかし考えてもごらん。ジェイムズはターナー嬢との結婚を熱望し

ながら、それはぜったい不可能だとわかっている。なのに、なぜ結婚しないのかといっ

て、父親からさんざんいわれていたわけだ。それがどんなに腹立たしいことかわかるだろ

う。父親に最後に会ったとき、ジェイムズが手を振りあげたのも、そのせいだった。あの

とき父親は、ターナー嬢に結婚を申し込めといってジェイムズを責めたてたんだ。いっぽ

うジェイムズには自活する能力がない。父親はだれにきいても、とても厳しい人間だった

という。もしほんとうのことを知ったら、ジェイムズを勘当してしまうだろう。ジェイム

ズがこのあいだブリストルで三日間過ごしたのも、酒場女の妻のもとだった。そして父親

はジェイムズがどこにいたのか知らなかった。ここを覚えておいてくれよ。重要なポイン

トだからな。ところが災い転じて福となるというのはまさにこのことで、その酒場女は新

聞でジェイムズが殺人の容疑でつかまって死刑になりそうだと知って、ジェイムズのこと

をすっかり見かぎってしまった。自分にはバミューダ造船所に夫がいるから、もうジェイ

ムズとはなんの関係もないと手紙で書いて寄こしたんだとさ。これでジェイムズも、苦し

いながら、少しはほっとしただろう」

「しかし彼が無罪だとすると、だれがやったんだろう?」

「さあ、だれだろう? きみにはとくに二つの点に注目してもらいたいね。ひとつは、被

害者は池でだれかと会う約束をしていたことだ。その相手は息子ではなかった。息子は家

にはおらず、いつ帰るかもわからなかったんだから。二つ目は、被害者は息子が帰ってき

たことを知る前に、〝クーイー!〟と叫んだということだ。この二つはこんどの事件の決

定的要因だよ。しかし、よかったらもう細かい点は明日あしたに持ち越して、ジョージ・

メレディス( 注・英国の作家、詩人。一八二八~一九〇九 )について語り合おうじゃないか」

 ホームズの予想どおり雨は降らず、翌日の朝は雲ひとつない天気となった。九時にレス

トレイドが馬車でやってきて、ぼくたちはハザリー農場とボスコム池へ向けて出発した。

「今朝は重大なニュースがあるぞ」レストレイドがいった。「お屋敷のターナー氏の具合

が悪くて、いよいよだめらしい」

「かなりの歳なんでしょうね?」ホームズがたずねた。

「まだ六十かそこらだと思う。しかし海外生活ですっかり体を壊してしまって、ここしば

らくは徐々に衰えていくような感じだったらしい。こんどの事件はえらくこたえたようだ

な。ターナー氏はマッカーシーと古い友だちだったから。そのうえ、ハザリー農場をただ

で貸していたというから、マッカーシーにとってはたいへんな恩人でもあったわけだ」

「ほんとうですか! それはおもしろいですね」

「ほんとうだとも。ほかにも様々な方法でターナー氏はマッカーシーを援助していた。こ

のあたりでは、みんなその親切について噂していた」

「なるほど! しかしそれは少しおかしくないですか? マッカーシーという男は自分の

財産はほとんどないようだし、ターナー氏にそんな恩義があって、それでも息子をター

ナー氏の娘と結婚させようとしていたんですね? 娘さんはおそらく遺産の相続人でしょ

う。なのに、えらく自信満々に、息子がプロポーズしさえすれば、事はすべてうまく運ぶ

と思っていたのでしょうか? ターナー氏はこの結婚に乗り気ではなかったと聞いている

ので、よけいに妙に感じますね。ターナー氏が結婚に反対していたことは娘さんがいって

たでしょう。そのことからなにか推論できませんか?」

「いよいよお得意の推理推論の出番だな」レストレイドはぼくにウィンクしていった。

「わたしは事実をつかむだけで精いっぱいでね、ホームズ君。空理空論に飛びつく余裕な

んぞない」

「そのとおりですね」ホームズはすましていった。「警部は事実をつかむのもすごくたい

へんそうだ」

「とにかく、わたしは事実をひとつつかんでいる。あんたはどうやら、それがなかなかつ

かめないようだがね」レストレイドは少しいらだっていった。

「どういう事実です?」

「マッカーシーは息子によって殺されたという事実だ。それから、それに反する理論はぜ

んぶ、月明かりのように淡い、単なるたわごとだという事実」

「しかし月明かりは霧よりも明るいですよ」ホームズは笑った。「ところで、あの左手に

見えるのがハザリー農場の家屋でしょう」

「そうだ」それは広々とした住み心地のよさそうな建物だった。二階建てのスレート葺ぶ

きで、灰色の壁のあちこちに苔こけがはえて、大きくて黄色いしみが浮いているように見

える。ブラインドがおろされて、煙突には煙もなく、どこか悲しみに沈んだような雰囲気

だ。恐ろしい事件がまだ、この家に重くのしかかっているらしい。われわれが玄関を訪ね

ると、メイドが出てきた。メイドはホームズの頼みに応じて、主人が殺された日にはいて

いた靴と、息子の靴を見せてくれた。ただし、息子の靴は、事件の日にはいていたもので

はないという。ホームズは二つの靴のサイズを七、八ヶ所、慎重に測ってから、中庭に案

内してほしいと頼んだ。その中庭からわれわれ全員で、長く曲がりくねった道をたどり、

ボスコム池へ向かった。

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