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第十一章 大いなるアグラの宝物(2)

时间: 2023-11-07    进入日语论坛
核心提示:「スミスの話だと、テムズ河では一番速い部類だそうで、エンジンを見る助手がもう一人いたら、絶対捕まらなかったといってますよ
(单词翻译:双击或拖选)

「スミスの話だと、テムズ河では一番速い部類だそうで、エンジンを見る助手がもう一人いたら、絶対捕まらなかったといってますよ。あの男は、このノーウッド事件については、全く何も知らなかったそうです」

「知らないですよ」と捕虜は大声でいった。「何も知らない。あっしがあの船に決めたのは、足が速いと聞いていたからです。あの男には何もしゃべっていません。金は充分にやったし、もしわっしらが、グレイブズエンドにいる船……ブラジル行きのエズメラルダ号まで無事着けたら、相当の礼をするつもりでした」

「あの男が悪事を働いていないのなら、わしらとしても、彼が不利にならないように取計らおう。犯人逮捕に関しては迅速ではあるが、犯人の処罰に関してはそれほどではないからな」

     尊大なジョーンズ

    御大おんたいが、犯人逮捕に気をよくして、また威張り始めるのを見るのは愉快だった。シャーロック・ホームズがうす笑いを浮かべていたところを見ると、彼もジョーンズの言葉が耳に入ったようだった。

「もうすぐヴォクスホール橋に到着します」とジョーンズがいった。「それで、ワトスン先生、宝を持って降りてもらいますよ。いうまでもないことですが、わたしはこうした 措置そちをとることにより、重大な責任を負わねばなりませんからな。きわめて異例のことではあるが、約束は約束です。しかし、こちらとしては、当然の義務として、警官を一人つけさせていただきます。なにしろ大変なお荷物をお持ちなんですから。もちろん馬車でおいでですな?」

「ええ、馬車でいきます」

「最初、中身の目録を作っておくといいんだが、あいにく鍵がない。こわして開けないとだめです。おい、鍵はどこへやった?」

「川の底です」スモールは手短かにいった。

「ちえっ、余計な手間をかけやがる。おまえのために、おれたちはさんざん働かされてきたんだぞ。とにかく先生、くれぐれもご用心を。箱はベーカー街の部屋へお持ちください。われわれは駅ヘ行く途中にそちらへ寄るつもりです」

 私は重い鉄の箱と、ぶっきら棒だが人のいい警官をつき添いに、ヴォクスホールで降ろされた。馬車で十五分ほど行くと、フォレスター夫人の家についた。召使いはこんなにおそい訪問客に驚いた様子だった。夫人は外出中で帰りがおそくなるはずとのことだった。しかし、モースタン嬢は居間に起きていたので、私は世話ずきの警部を馬車に残し、箱を手に持って居間へ入っていった。

 彼女は首と腰のところが深紅色をした、白いうすものの服を着て、開け放った窓辺に坐っていた。

    覆おおいをつけたランプの柔らかな光は、籐椅子にもたれた彼女の上に降りかかり、その美しい厳粛な顔の上で戯たわむれ、また、そのつややかな髪の、房々した巻き毛を鈍い金属の光沢で染めあげた。まっ白い片方の腕を、わきにだらりとたらした姿勢の全体から見て、深く物思いに沈んでいる様子だった。しかし、私の足音を聞くと、彼女はとび起き、その青白い頬を、驚きと喜びで明るく輝かせた。

「馬車の音が聞こえました」と彼女はいった。「フォレスターさんが早目にお帰りになったのかと思いました。まさか、あなただとは夢にも思いませんでしたわ。どんな知らせを持ってきてくださったんですの?」

「知らせなんかより、ずっといいものです」といって、私は箱をテーブルの上へ置き、陽気にはしゃぎながら言葉を続けたが、その実、心は重かった。「世界中のどんな知らせよりも価値のあるものを持ってきたんです。財産を運んできたんですよ」

 彼女は箱をちらりと見た。

「では、これが宝物ですの?」と、彼女は実に冷静にたずねた。

「ええ、これが大いなるアグラの財宝です。半分はあなたのもので、半分はサディアス・ショルト氏のものです。二、三十万ポンドずつ手に入るわけです。どうです! 一万ポンドの年金。英国中でも、こんな金持の女の人は、他にそういませんよ。すばらしいじゃありませんか?」

 私が幾分大げさに喜びを表わしたせいか、彼女は私の言葉に、空虚な響きを感じとったらしかった。彼女は少しまゆをつり上げて、不思議そうな顔つきで私を見た。

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