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第十二章 ジョナサン・スモールの不思議な物語(11)

时间: 2023-11-07    进入日语论坛
核心提示:当時、あっしらはあのトンガを黒い人喰い人種だなんていって、縁日などの見せ物にして暮らしていました。生の肉を喰わせて、いく
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当時、あっしらはあのトンガを黒い人喰い人種だなんていって、縁日などの見せ物にして暮らしていました。生の肉を喰わせて、いくさの踊りをやらせるんです。そんなわけで一日働けば、いつも帽子一杯の小銭が集まったものでした。

 いぜんとしてポンディシェリー荘の様子は、耳に入ってきていましたが、数年の間は、連中が宝を探していること以外、変わったことはなかったのです。しかしようやく、長い間、待ちに待ったものがやってきました。宝が見つかったというのです。バーソロミュー・ショルトさんの化学実験室の天井裏に、それがあったのです。あっしはすぐにかけつけて現場を見ましたが、義足のままでどうやって登ったらよいか、見当がつきません。ただ、はね上げ戸があることと、ショルトさんの夕食時間のことがわかったのです。トンガを使えば、事は簡単にいくと思いました。奴の腰に長いロープを巻いたまま、奴をつれ出しました。トンガは猫みたいに登っていって、すぐに屋根から中に入ったんですが、運命のいたずらというか、バーソロミュー・ショルトには不幸なことに、彼はまだ部屋にいたのでした。トンガは彼を殺して何か気のきいたことをしたようなつもりになり、あっしがロープで登っていくと、孔雀くじゃくみたいに得意になって歩きまわっているんです。ロープの端でひっぱたいて、血に飢えた小悪魔めとどなったら、意外だという顔をしていました。あっしはまず、宝がそれを所有するに最もふさわしいものの手に戻ったことを示すために、テーブルの上に四つの署名を残したのです。それから、宝の箱を取って下へ降ろすと、自分もすべり降りました。最後にトンガがロープを引き上げ、窓を閉めて、入るのと同じやり方で脱出したのです。

 もう他にしゃべることはないでしょう。以前に、船頭がスミスのオーロラ号という汽艇ランチが速いといっているのを聞いたことがあって、そこで、これは脱走するのに手頃な船だと思ったわけです。スミスを雇って、無事に汽船まで運んでくれれば、大金をはずんでやるはずでした。奴は、何か変だとは感じとっていたに違いないが、あっしらの秘密のことは知りません。以上が真相なんですよ。あんたらに、こんな話をするのも、何も楽しんでいただくためじゃない。そんな義理はないですからね。そうじゃなくて、自分にとって最善の弁護とは、何事も包み隠さないで話し、自分がショルト少佐にどれほどひどい仕打ちをされたか、また、自分はその息子の死に関して、いかに潔白であるかを世間に知らせたいがためですよ」

「なるほど、驚嘆すべき話だ」とシャーロック・ホームズはいった。「きわめて興味深い事件のしめくくりとして、まさにうってつけだ。あんたの話の後半の部分には、ぼくにとって新しいことは一つもないな。例外は、あんたが自分のロープを持ってきたということだけだよ。ところで、ぼくはトンガは吹矢を全部なくしてしまったのだと思っていたが、奴は船に乗っているぼくらに向かって一本射ったね」

「全部失くしたんですが、あの時、吹き筒の中に一本だけ残ってたんですよ」

「ああ、なるほど」ホームズはいった。「それは考えつかなかった」

「他にお聞きになりたいことはありますかね?」囚人は愛想よくたずねた。

「いや、ない」わが友は答えた。

「ところで、ホームズさん」とアセルニー・ジョーンズはいった。「あなたは納得いかないと気がすまない人だし、犯罪の鑑識家であることも知っています。だが、義務は義務です。それに、あなたがたの要求に応じたために、わたしとしては少し行き過ぎたことをしました。わたしはこの話し上手を、無事に牢に入れるまでは落着けません。だいぶん馬車を待たせましたし、下には警部が待っています。お二方には、いろいろとご協力、感謝します。もちろん、裁判のときにはご足労いただくことになります。では、失礼」

「お二人とも、さよなら」と、スモールがいった。

「スモール、おまえが先だ」と、慎重なジョーンズが、部屋を出るときにいった。「おまえがアンダマン島で例の男に何をやったにしろ、その義足でだけはなぐられないようにせんとな」

「さて、われわれのささやかな芝居もこれで幕だな」

しばらくの間、二人とも黙ってたばこをふかしていたが、やがて私がいった。「この事件は、きみの方法を研究する最後の機会になりそうだよ。モースタン嬢は、うれしいことにぼくを未来の夫として受け入れてくれたんだ」

 彼は、いとも恐ろしいうめき声をあげた。

「心配していたとおりだ」と、彼はいった。「全くおめでとうどころじゃない」

    私は少し感情を害した。

「ぼくの選択に何か文句でもあるのかね?」と、私はたずねた。

「いや、ちがう。彼女はぼくがこれまでに会った若い女性の中で最も魅力的な女性の一人だし、われわれがやってきたような仕事にきわめて役立つのではないかと思う。そっちの方面ではまぎれもない才能を持っているよ。父親の書類の中から、あのアグラの宝の地図を取っておいたのを見てもわかるだろう。しかし、恋とは感情的なもので、感情的なものというのは、ぼくにとっては何よりも価値のある冷静な理性とは対立する関係にある。ぼくは結婚なんかしない、そのために判断が偏かたよったりするといけないからね」

「願わくは」と、私は笑いながらいった。「ぼくの判断力が試練に耐えられますように。いずれにしろ、きみは疲れた様子だね」

「うん、もうすでに反作用が始まっている。一週間はくたくたになっているだろう」

「奇妙なことだ」と、私はいった。「他の人の場合なら怠惰と呼ぶべきものの期間が、きみの場合にはすばらしい精力、活力の爆発と交互してあらわれるんだから」

「そうだ」と、彼は答えた。「ぼくにはひどいなまけ者の素質とすごい活動家の素質とが共存しているんだよ。ぼくはよく例のゲーテの文句を思い出すんだ。

『自然が、おまえをただの人にしか造らなかったのが残念だ。価値ある人とも、したたかな悪党ともなれたものを』

 ところで、このノーウッド事件に関していうと、一味はぼくの思ったとおり、屋敷の中に共犯者を抱えていた。他ならぬ使用人頭のラル・ラオだ。そんなわけで、実際、大きな網を張って魚を一匹捕えたという手柄は、ジョーンズが一人占めすることになるよ」

「そいつは何だか不公平だよ」と、私がいった。「この一件では、きみが何から何までやったんだよ。このおかげでぼくは嫁さんをもらったし、ジョーンズは信用を手に入れたが、きみの取り分には何が残っているのだろう?」

「ぼくには」と、シャーロック・ホームズはいった。「まだ、このコカインの瓶びんが残っているさ」そして、彼はそれを取ろうと、長く白い手を伸ばした。

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