安倍総理大臣は、記者会見で、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉に参加することを正式に表明したうえで、「アジアの新興国も次々と開放経済へ転換しているなか、日本だけが内向きになってしまっては、成長の可能性はない」と述べ、交渉参加の意義を強調しました。
記者会見の冒頭、安倍総理大臣は、「本日、TPP=環太平洋パートナーシップ協定に向けた交渉に参加することを決断した。交渉参加国に通知する。国論を二分してきたこの問題に対して、数多くの意見を聞き、十分吟味したうえで、決断に至った」と述べました。
そして、「今、地球表面の約3分の1を占め、世界最大の海である『太平洋』が、TPPにより1つの巨大な経済圏の『内海』になろうとしている」と指摘したうえで、「アメリカと欧州は、経済連携協定の交渉に向けて動き出した。韓国もアメリカやEU=ヨーロッパ連合と自由貿易協定を結ぶなど、アジアの新興国も次々と開放経済へと転換している。日本だけが内向きになってしまっては、成長の可能性はない」と述べ、交渉参加の意義を強調しました。
そして、「今がラストチャンスであり、この機会を逃すことは、日本が世界のルール作りから取り残されることにほかならない。TPP交渉はすでに開始から2年が経過し、すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本が、それをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実だ。残されている時間は決して長くはない。だからこそ一日も早く交渉に参加しなければならないと考えた」と述べました。
また、安倍総理大臣は、TPPに参加した場合の影響をまとめた政府の試算について、「すべての関税をゼロとした前提を置いた場合、わが国経済には全体としてプラスの効果が見込まれる」と説明するとともに、「農林水産物の生産は減少することを見込んでいるが、関税を即時撤廃し、国内対策を前提としないという単純化された仮定の計算によるもので、実際には今後の交渉で悪影響を最低限にとどめることは当然だ」と述べました。
一方、国民の間にさまざまな懸念があることについて、安倍総理大臣は「自民党は先の衆議院選挙で、『聖域なき関税撤廃を前提とするかぎり、TPP交渉参加に反対する』と明確にした。そのほかにも、『国民皆保険制度を守る』など5つの判断基準を掲げている。私たちは、『国民との約束』は交渉の中でしっかり守っていく決意だ」と述べました。
さらに、農業政策について、「『攻めの農業政策』により、農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで、成長産業にしていく。そのためにも、TPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンスだ。あらゆる努力によって、日本の『農』を守り、『食』を守ることを約束する」と述べました。
また、安倍総理大臣は「きょう私が決断したのは、交渉への参加にすぎない。まさに、入り口に立ったにすぎない。日本の主権は断固として守り、交渉を通じて国益を踏まえた最善の道を実現する」と述べ、交渉に臨む決意を示しました。
一方、安倍総理大臣は、自民党がまとめた決議で、米など農林水産分野の5品目を関税撤廃の例外とすることなどを最優先に交渉に当たり、実現できないと判断した場合は、交渉からの脱退も辞さないものとするとしていることについて、「今、離脱するかどうか申し上げるのは、むしろ国益に反し、適切ではない。強い交渉力を持って結果を出していきたい」と述べました。
さらに、安倍総理大臣はTPP交渉に関する情報の提供について、「交渉なので、相手国との関係で公表できることとできないことがあるが、交渉に参加すれば、今よりもだいぶ情報が入手しやすくなると考えている。公開できることは進捗(しんちょく)状況に応じてしっかりと国民に提供していきたい」と述べました。