妊娠初期の母親の子宮で、受精卵の育つ環境を整えているとみられる遺伝子を東京大学の研究グループが、マウスの実験で特定しました。同じ遺伝子はヒトにもあるということで、不妊の原因の解明や治療につながる可能性があると注目されています。
東京大学疾患生命工学センターの研究グループは、妊娠直後のマウスの子宮で受精卵を包み込んで栄養を与える細胞に「DEDD」と呼ばれるたんぱく質が多く含まれることに注目しました。70匹余りの雌でこのたんぱく質を作り出す遺伝子の働きを無くし、実験を行った結果、受精卵は子宮に着床するものの、その後、栄養を与える細胞が成熟せず、10日目以降も妊娠を継続したマウスはありませんでした。一方、雄だけで遺伝子を操作した場合は雌の妊娠や出産に影響はありませんでした。こうしたことから研究グループでは、DEDDの遺伝子は妊娠初期の母親の子宮で受精卵の育つ環境を整えているとみられるとしています。同じ遺伝子はヒトにもあるということで、不妊の原因の解明や治療につながる可能性があると注目されています。研究グループの宮崎徹教授は「不妊に悩みながらも、原因がわからず治療のできない患者は多い。今後、不妊の女性に協力を求めて遺伝子の働きを調べるなど研究を進めたい」と話しています。