ホテルのロビーにコンサートのポスターが張り出された。
夕方ホテル内のレストランで行なわれるらしい。飲みものと軽い食事も出るようだ。詳細はわからないが、ポスターにはネパールの象の神様が書いてあるし、民族音楽のコンサートなのかも知れない。
夜は暇だし、コンサートというのも久しく行っていないので、話のタネにいってみることにした。
その場にいたベルボーイに予約が必要か聞いてみると、チケットがあるようだから会場にいってみてはどうか、という。
会場であるレストランの入口には、アメリカ人なのか、西洋人のスタッフが机を出してなにやら仕事をしている。小柄な女性に「チケットが欲しいのか」と聞かれて、そうだと答えると、「すばらしい!2人分ね!」と言いながら空きチケットの状況を調べている。「まぁ、あなたたちはなんて好運なんでしょう!ちょうど32と33が並んであいてるわ!」などと大げさにリストを示す。
ネパールに来て以来、こういうアメリカンなノリは久ぶりなので新鮮である。チケット代金はやや高めで、一人25米ドル。
チケット代を受取ながら彼女が「私の夫は日本人なのよ」と言い出した。彼女の夫はJICA(国際協力事業団)のプロジェクトでネパールに来ていて、それで出会ったのだという。JICAのプロジェクトが先に終ったので彼は「ホンシャ」に戻り、彼女のプロジェクトはまだ終らないので離ればなれに暮らしている。
「東京とカトマンズを行ったり来たりしてるの。だけど、もう東京には戻りたくないわ。まっぴら」といいながら首をすくめてみせた。
時間になり会場に行ってみると、まあ、いるわいるわ西洋人だらけである。よくよく見てみると現地の人らしき人もいるが、やはり紅毛碧眼が圧倒的に多い。男女で人種の違うカップルもいて、実に国際的である。このホテルには世界銀行のオフィスもあるし、どうやらこれは日本でいうJICAなどの国際協力団体や、医療機関のスタッフとしてネパールに在住している先進国の人々の集まりらしい。仲間同士でアーティストを招聘して行なうコンサートなのだ。
コンサートの前にスナックタイムがあって、軽食がロビーに並べられている。飲みもののは列に並んでチケットを買ってから注文する。
今日はカトマンズに在住する西洋人の親睦の場でもあるようだ。あちこちで歓声をあげる者あり、抱擁する者あり、実に賑やかである。われわれは知った人とていないので、壁際に陣取り人物観察に入る。
男女の比率は半々位か、女性は妙に格好がいい。
着飾っているわけではないが、よく見るときちんとイヤリングをしたりネックレスをしたり、あるいはスカーフを巻いていたり、髪型に凝っていたり、一応ハレの服装をしていることがわかる。まさに外資系や国際機関で働いてい女性のそれである。皆なごやかながら自信に満ち溢れ、「知的で行動的で自由で自立した雰囲気」というものが漂ってくる。
いやーまいった。かっこいい!
結局コンサートはネパールとは縁のないカントリー系の男女二人組だった。まあ、そうか。わざわざネパール在住の西洋人が大挙して民族音楽を聞くとは思われない。
途中、頭を丸めて仏教の僧衣を身に纏った背の高いアメリカ人が現れた。休憩時間に取りまきを連れてのっそりと歩き回っている。彼がホテルのロビー方面に姿を消すと、その辺りで強いストロボの光がまたたいている。
有名人なのだろうと思っていたら、休憩後のセッションでその男が合掌しながら舞台に上り、飛び入り参加した。その男が紹介されるや、観客は熱狂したのだが、あいにく名前が聞き取れなかった。
後から聞いたところによると、男はアクション俳優のスティーヴン・セーガル。あの格好ではわからない。敬虔な仏教徒で、カトマンズで行われた大がかりな仏教の式典に参加したのだという。
そういえばリチャード・ギアの来訪を告げる新聞記事があったことを思い出した。彼も仏教徒らしい。少女二人にエスコートされた写真が載っていた。記事の見出しは
「Pretty Woman in Kathmandu(カトマンズのプリティウーマン)」
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