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『ケンブリッジ見聞録』13

时间: 2016-04-14    进入日语论坛
核心提示:テリー家が決まってしまえば、他にとりあえずすることはない。語学学校に通うことを考えたが、落ち着いてからのほうがいいだろう
(单词翻译:双击或拖选)
テリー
 
家が決まってしまえば、他にとりあえずすることはない。
 
語学学校に通うことを考えたが、落ち着いてからのほうがいいだろう、という有能な秘書ペニーさんと元英語教師マリオンさんの強
 
い勧めもあって、とりあえず暇にしている。
 
暇で天気が悪いと、いきおいテレビばかり見て過ごすことになる。テレビは正しい英語ばかりでないし、聞き返しても言い直してく
 
れないので半分もわからないが、そのうちわかるようになるかもしれないと淡い期待を持ちながらぼーっと見ている。勉強という名
 
のもとに堂々とテレビ漬けになっていられるのである。
 
ところでこちらの人はなぜかテレビを「テリー(telly)」と呼ぶ。もちろん「TV」や「television」で通じるのだが、ペニーさんも
 
「テリー」といっている。「テリー」というとなんとなく通っぽい。
 
私たちのフラットには「テリー」がついていなかったので、街の電気屋さんで、ビデオ一体型の小さいのを借りてきた。賃料は日本
 
円にして週600円くらいである。ちゃちなアンテナがついていて、映りは悪い。番組はケーブルテレビにすればいろいろ楽しめる
 
らしいが、とりあえず映るチャンネルは4つあって、1がBBC1、2がBBC2、3が名前はわからなくて、4がChannel4。シンプルで
 
ある。
 
テレビ局が4つしかないぐらいだから、各局視聴率にしのぎを削っているという雰囲気もなく、面白い番組はあまりない。ドラマは
 
やたらと深刻に話し込んでいるか、病院のシーンばかり出てくるし、コメディタッチのドラマはアメリカの番組である。映画は夜1
 
0時ぐらいからやっている。そうそう、クリケットの中継もやっている。静かなスポーツである。議会の中継も多い。日本の国会と
 
違ってイギリスの議場はソファーが何列も並んだような作りで狭い。そのなかで白熱して議論を繰り広げるものらしく、時に笑いが
 
起こるなど実に楽し気に論戦を交えている様子である。
 
一応いつも見ている番組はある。朝はチャンネル4で、朝食を食べながら若者向けの情報番組を見る。番組名は「BIG BREAKFAST」
 
。これがさっぱり聞き取れないのだが、ばかばかしくノリのいい番組である。今はワールドカップにあやかって、フランス特集やモ
 
ザイクをかけたサッカー選手の写真で名前を当てるクイズ、などをやっていて、いちいちフランス人の話し方や身振りを真似しては
 
盛り上がっている。それが終わると映画やアメリカのハイスクール物のドラマを放映したりする。最近はこのあたりでBBC2に変える
 
。これはNHK教育に相当するもので、ちゃんとわかれば相当勉強になる。ただし一番のお気に入りは幼児向け番組で、宇宙人の子ど
 
もが出てきて楽しい。お昼になると、各局ニュースをやって、その後奥様向けの番組が始まる。イギリスにもみのもんたや山城新伍
 
のような人がいるのがおかしい。
 
チャンネル4のお昼の番組は「LIGHT LUNCH」。なんとお気楽なネーミングだろうか。これも「BIG BREAKFAST」同様ばかばかしくノ
 
リのいい番組である。観客がそれぞれお弁当をもって集まり、中身を説明したりしながら食べる。「え~、イギリスのお弁当ってこ
 
んななの」という感じである。毎日ゲストが登場して簡単な料理を披露するコーナーや、観客や視聴者のゲストへの質問コーナーな
 
どがある。
 
こちらの番組はこのように視聴者参加の番組が多いように思う。その他にもクイズ番組や参加型の料理番組も多い。
 
興味深いのは友達や家族糾弾のような番組があることである。公開の場で白黒つけようということなのか、番組内で母親のボーイフ
 
レンドを吊るし上げる10代の女の子や、恋愛沙汰でもめている当事者が登場したりする。彼らの主張に対して観客が賛否両論さま
 
ざまな意見を展開する。それぞれ真剣である。当事者が出演することも驚きであるし、それに対して他人事にそこまで入れ込む観客
 
がいることも不思議である。つくづく議論好きな人種なのだろうな、と思う。
 
そういえば、もう一つお気に入りの番組がある。残念ながらイギリスの制作ではない。
 
ボストン交響楽団の本拠地、タングルウッドで作られた子供向けの音楽番組なのだが、これがすばらしい。タングルウッドのコンサ
 
ートホールに子供たちを集めて、ボストン交響楽団とジャズのビッグバンドが、あるテーマにそって違うアレンジで交互に演奏して
 
いく。
 
進行役の黒人男性はトランペット奏者でもあり、ビッグバンドの指揮もする。説明は聞き取れないが音楽の楽しさ、面白さが伝わっ
 
てくる。当然ボストン交響楽団の指揮はマエストロ小沢征爾である。彼もとても楽しんでいる。子供たちの顔も輝いている。それは
 
そうだ。一流のプレイヤー、一流のホール、考えれば贅沢な企画である。こういう時、こういう番組を作り上げてしまうアメリカと
 
いう国にはかなわないな、と思う。
 
日本人が登場するアメリカの番組をイギリスで観る。なんとなくいい。
 
進行役の「黒人のトランペッター」はウィントン・マルサリスさんだという情報をいただきました。ありがとうございました。
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