2月14日は聖バレンタインデー。英国では男性から女性にカードと花束やプレゼントを贈る日である。
贈るときは、聖バレンタインが殉職する前に「あなたのバレンタインより」とカードを送ったことに因んで、 匿名とされている。
送り主が分からないので、受け取った女性は「あの人かしら、この人かしら」とワクワクしたり困惑したりするのだろう。 一説に
よると、ある年のバレンタインデーには1千万枚のカードが配達されたという。店頭売り上げはその倍だそうである。
それからその日の新聞はどの新聞も(たとえTimesなどの高級紙であっても)バレンタインのメッセージがびっしりと紙面を埋める
。お金を出してスペースを買って女性にメッセージを送るのである。 もちろんそれも匿名が原則だから、誰から誰へのメッセージ
がわかるように「モウモウちゃんからヌウヌウちゃんへ」など二人だけに通じる名前やメッセージを使うのだ。
1月の中旬頃から店頭ではクリスマスに代って、バレンタインデーのディスプレイになる。クリスマスほど大掛かりではないにしろ
、バレンタインデーが近づくにつれ、明らかにバレンタインを意識したディスプレイが多くなる。 バレンタインの色は基本的に赤
、しかもハート型である。 赤いハート、赤いハートを持ったテディベア、赤いデヴィル(小悪魔)のぬいぐるみ、赤いハートが描
かれたクッキー、 キャンディ、赤いハートの包み紙。ハート型のPost It!まである(思わず買ってしまった。5色225枚で£2.99、
高い)。
conversation exchangeの相手ポーラさんがいう。「バレンタインデーの前の週になったら、赤いものを買っちゃいけないわ。」す
べての赤いものがことごとく高くなるらしい。確かに赤いものが目立つ。ランジェリーショップの店頭まで赤い。
もちろんもっとも気合が入っているのは花屋さんである。店内所狭しと並べられた花、花、花…。赤いバラ、赤いカーネーション、
赤いチューリップ、赤いガーベラ。花束、アレンジメント、むせ返るような芳香である。園芸農家から直接お届けします、というの
もあるらしい。ポーラさんはさらに「青空マーケットの花屋さんも見逃せないわ。もう、本当に豪華なんだから。」という。
ケンブリッジには中心部に青空マーケットがあって、そこに花屋さんが3軒店を出している。一軒は鉢物と切り花が半々、もう一軒
は切り花専門、さらにその隣は鉢物が充実している花屋さんなのだが、それは業績不振なのか暮れごろから半分八百屋さんになって
しまった。
バレンタインデーは日曜日だから青空マーケットは休みじゃない?というと、だったら土曜日に見物に行きなさい、花束を持った男
の人達がたくさん歩いていて面白いから、という。
それなら、というわけで前日の土曜日に見に行くことにした。晴天なのですごい人出である。
おお、早速花束を持って歩いている紳士発見。ところが女性も結構花束を持って歩いているものである。もらったばかりなのか?
さらにずんずん歩く。マーケットは大賑わいである。心なしか男性の姿が多いようである。さて花屋さんの前に行く。すごい。人だ
かりである。しかも男性の。老いも若きも列をなして花を買っている。花束と無縁そうなむさ苦しいおじさん達もいる。
半分八百屋さんになった花屋さんも元のサイズに戻っている。きゅうりやかぼちゃの代わりに赤いバラが林立している。お手頃なの
は一本ずつ包まれたタイプだろうか、お店の奥にずらりと並んでいる。
普段はおば様方が「ええ、そのパンジーの苗を、そうねぇ、半ダースほど頂戴」とか「そうそう、その白いカサブランカを包んで頂
戴」「あら、あなたのそれステキ」などとのんびりと買い物をしているのだが、男性は選ぶのが早い。値段をちらちらっと確かめて
はさっさと列に並び、足早に去っていく。妙に真面目な顔をしているのがおかしい。
花を買ったら次はカードを買わなくてはならない。偶然会った知人の情報によるとカード売り場も男性の姿でいっぱいであるという
。ご苦労様である。
ちなみに夫が買ってきてくれたのは、赤いバラ6本とあしらいの黄色い花がついて£12だったとか。結構なお値段である。あまり
包装に凝ってない分、まだ割安というべきか。
いずれにしてもバレンタインデーは商魂たくましく利用されるものなのだ。何も日本に限ったことではない。