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本陣殺人事件--琴鳴りぬ(2)

时间: 2023-11-21    进入日语论坛
核心提示:「兄さんに? ああ、そう」 秋子はちょっと眉をひそめたが、別に大して気にも止めずに、帯の間にはさむと、台所を出て茶の間を
(单词翻译:双击或拖选)

「兄さんに? ああ、そう……」

 秋子はちょっと眉をひそめたが、別に大して気にも止めずに、帯の間にはさむと、台所

を出て茶の間を覗のぞいてみたが、そこには糸子刀自が手伝いの女と話しながら、着替え

をしているところだった。側には振り袖を着た鈴子が、金きん蒔まき絵えの見事な琴をい

じっていた。

「伯母さん、兄さんは?」

「賢蔵? 書斎じゃないかしら。ああ、ちょっとお秋さん帯を結んで下さいな」

 糸子刀自の着付けが出来上がったところへ、丹前姿の三郎がのっそりと入って来た。

「三郎、まだそんな服な装りをして……いままでどこにいたの」

「書斎にいたんですよ」

「また探偵小説を読んでいたのよ、きっと」

 鈴子が琴の調子を合わせながらいった。三郎は探偵小説の熱心な愛読者なのである。

「いいじゃないか。探偵小説を読んでたって。それより鈴子、猫のお葬式はすんだのか

い」

 鈴子は黙って琴を弾いている。

「まだなら早くしなよ。猫の死し骸がいなんかいつまでもおいとくと、ニャーゴと化けて

出るぜ」

「いいわよ。三ぶちゃんの意地悪。玉のお葬式は今け朝さ早くすましたわよ」

「なんだねえ。縁起でもない。三郎も気をつけて物をおいいなさいよ」

 糸子刀自は眉をひそめてたしなめるようにいった。

「三ぶちゃん。兄さんは書斎にいらして?」

「いいえ、兄さんは離家じゃないかしら」

「お秋さん、賢蔵にあったら早く支度をするように言って下さいよ。そろそろお嫁さんが

見える時分じゃないか」

 茶の間を出た秋子が離家の方へ行こうとして、庭下駄をつっかけているところへ、良人

の良介がふだん着のまま、新家のほうからのそのそやって来た。

「あなた、何をしていらっしゃるの。早く着替えないと間にあわないじゃありませんか」

「馬鹿をいうな。花嫁の来るのは八時ということになっているんだ。何もあわてる事はな

いさ。お前こそどこへ行くんだ」

「離家へ兄さんを探しに……」

 賢蔵は果たして離家の縁側に立って、ぼんやりと空を眺めていたが、秋子の姿を見る

と、

「お秋さん、なんだかお天気が変わりそうですね。ええ、なに、これを私に……ああそ

う」

 賢蔵は細かく折った紙片を電燈の下へ持っていって読んでいたが、

「お秋さん、これは一体誰が持って来たんです」

 床の間の生け花をなおしていた秋子は、その声の調子にただならぬものを感じて振り返

ると、賢蔵はまるで嚙かみつきそうな表情をして、上から秋子の顔を見据えていた。

「さあ。……お直さんが受け取ったんですけれど、なんだかルンペンみたいな男だったそ

うですよ。兄さん、なにか変わったことでも……」

 そういう秋子の顔を賢蔵は白に眼らむように見ていたが、やがて気がついたように顔を

そむけると、もう一度その紙片に眼を落としたが、すぐズタズタに引き裂いて、どこか捨

てるところはないかというふうにあたりを見回していたが、結局袂たもとの中に突っ込ん

でしまった。

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