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本陣殺人事件--鎌と琴柱(2)

时间: 2023-11-22    进入日语论坛
核心提示: 川田屋というのは、この物語の一番最初に三本指の男が現われた、村役場まえのあの一膳飯屋のことなのである。 ここで言ってお
(单词翻译:双击或拖选)

 川田屋というのは、この物語の一番最初に三本指の男が現われた、村役場まえのあの一

膳飯屋のことなのである。

 ここで言っておかなければならないのは、磯川警部はこの時までに、一柳家の人々の聞

き取りを一応終わっている事である。したがって警部はすでにあの奇怪な三本指の男のこ

とを知っていた。それを語ったのは三郎だが、かれは離家に三本指の手型が残っていると

いう事をきくと、すぐ先日散髪屋できいて来た話を思い出したのである。

 磯川警部は三郎の話をきくと、すぐに川田屋へ刑事を走らせた。そしてお主か婦みさん

からその男の人相風態を詳しく聞き取らせたが、刑事はそれと同時に、あの時三本指の男

が水を飲んだコップを押収して来たのである。はじめにも言っておいた通りお主婦さんは

気味悪がって、その後このコップを使わなかったので、そこにはくっきりと三本指の男の

三つの指紋が残っていた。そこで警部はすぐにそれを鑑識課のほうへまわしたのである。

 ところで、三郎の話をきくと新家の秋子もまた、婚礼の少しまえに台所へやって来た不

思議な男のことを思い出した。そこでお直婆さんや、その時台所にいた人々が取り調べら

れたが、その人たちの話をきくと、人相風態、たしかに三本指の男と同じ人間らしく思わ

れる。ところで、その時その男がことづけた手帳のきれはしだが、これは賢蔵が読み終わ

ると、そのまま袂たもとのなかへ捻ねじ込んだ筈である。

 秋子からその話をきくと、警部はすぐにその時賢蔵が着ていた着物を出させて袂のなか

を探ってみたが、すると果たしてその袂から出て来たのが、ズタズタに引き裂かれた紙片

である。そしていま警部が木村刑事に手伝わせて、丹念に継ぎ合わせているのが即ちそれ

なのだ。

「木村君、もうひといきだ。ここへはまる奴はないか。いや、それじゃない。それはここ

らしいな。するとあと二たところこれとこれ……と、さあ出来上がったぞ」

 幸いズタズタに引き裂かれたその紙片は、ひとひらも欠けていなかったので、警部の手

によって完全にそこに復原された。そしてそこに現われたのは、鉛筆をなめなめ書いたら

しい、みみずののたくったような文字の痕。

「どうも妙な文字だな、木村君、一番最初の字は……こりゃあなんと読むんだい」

「警部さん、そりゃ島じゃありませんか」

「島……そうか、そういえば島らしいな。島の約束……か、そうだね、島の約束……その

次はなんだろう」

「そりゃ近いという字でしょう。近日じゃありませんか」

「あ、なるほど、近日果たす……か。さあて、その次がまた分からない」

 何しろそれは文字そのものが至って悪筆と来ているうえに、ズタズタに引き裂いたもの

を継ぎ合わせたのだから、読むのになかなか骨が折れた。だがそれでも木村刑事と知恵を

合わせて、警部がやっと判読し得たところによると、それは次のような文章になる。

「島の約束近日果たす。闇やみ討うち不意討ちどんな手段でもいいという約束だったね。

君のいわゆる『生涯の仇敵』より」

 読み終わって警部と木村刑事は思わずシーンと顔を見合わせた。

「警部さんこりゃ果たし状ですね。まるで人殺しの予告みたいじゃありませんか」

「みたいじゃないよ。本当に予告なんだ。この手紙が手渡されてから数時間後に人殺しが

あったんだからね。畜生、ますますいやな事件になって来やあがった」

 警部は裏うら貼ばりをしたその警告状を取り上げると、机のまえから立ち上がった。

「とにかく母屋へ行って聞いてみよう。島の約束とあるが、賢蔵がいつかどこかの島にい

たか、一柳の者に訊いてみれば分かるだろう」

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