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本陣殺人事件--大惨劇(3)

时间: 2023-11-21    进入日语论坛
核心提示: そして枝折り戸のまえに立って、ずっと離家の庭を見渡すと、「足跡はどこにも見えない」 こごえで呟くと、うしろを振り返って
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 そして枝折り戸のまえに立って、ずっと離家の庭を見渡すと、

「足跡はどこにも見えない」

 こごえで呟くと、うしろを振り返って、

「皆さんはここにいて下さい。あなたと、この人だけ私について来て下さい」

 と、良介と作男の源七を指さして、

「気をつけて。……なるべく雪を踏み荒らさないように。奥さん、その提灯を貸して下さ

い」

 非常時に臨みては身分も階級もけしとんでしまう。人々はこの時銀造の不思議な人格の

力に圧倒されて、誰一人異議を唱える者もなかった。唯一人、良介だけは、この小作上が

りの男の命令に対して、内心忌いま々いましさを押え切れなかったようであるが、もし彼

がこの時、相手が唯の百姓ではなく、苦学しながらもアメリカのカレッジを出ているのだ

ということを知っていたら、いくらか不満も緩和されたかも知れぬ。

 枝折り戸を入ると、左側に低い四つ目垣がきが結ゆわえてあるが、その垣根越しに見え

る離家の庭にも綿をおいたような雪が降り積もっていて、どこにも踏み荒らされた跡はな

かった。離家の中には電気がついているらしく、雨戸の上の欄間から、明るい灯の光が洩

れている。

 離家の玄関は東向きについているのだが、三人はまずその方へ駆けつけた。しかし玄関

には紅殻色の格子戸と板戸が二重に締まっており、格子戸には中から錠がさしこんである

と見えて、押しても引いてもびくともしなかった。良介と源七はガタガタ格子を叩たたき

ながら、大声で賢蔵を呼んだが、中から返事はなかった。

 銀造の顔色はしだいに嶮けわしくなってくる。彼は玄関をはなれると、四つ目垣を越え

て南の庭へ踏み込んだ。二人もその後からついて来る。そこにも紅殻色の雨戸がぴったり

としまっており、その雨戸を叩きながら良介や源七がかわるがわる賢蔵の名を呼んでも、

中からは依然として返事はなかった。

 三人は雨戸を叩きながら、とうとう離家の西側へまわって来たが、その時である。突然

良介が奇妙な声をあげてたちすくんだ。

「なに? どうしたんだ」

「あ……あれを」

 良介が顫ふるえながら指さすほうを見て、銀造と源七は思わずぎょっと呼吸をのんだ。

 離家から西へ一間ほどはなれたところに、大きな石いし燈どう籠ろうが立っていたが、

その石燈籠の根元に、日本刀がぐさっと一本突き立っていた。

 源七はそれを見ると、急いでその方へ行こうとしたが、すぐまた銀造に引き戻された。

「さわっちゃいかん」

 銀造は提灯をあげて暗い植え込みの下を覗いたが、どこにも足跡らしいものはなかっ

た。

 その間に良介はいちまいいちまい雨戸を調べてみたが、どこにも異常はなくぴったり中

からしまっていた。

「旦那、欄間から覗いてみましょうか」

「うん、そうして見てくれ」

 この西側には便所が突き出していて、この便所と戸袋の作る直角の空地に、大きな石の

手水ちようず鉢ばちが据えてある。作男の源七はその手水鉢に足をかけると、雨戸の上の

欄間から中を覗きこんだ。

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