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本陣殺人事件--琴爪の新用途(3)

时间: 2023-11-22    进入日语论坛
核心提示: さて、琴爪をはめた手に日本刀をひっさげた犯人は八畳へ忍び込むと、まず下しもの方に寝ていた克子を滅多斬りにしたらしい。克
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 さて、琴爪をはめた手に日本刀をひっさげた犯人は八畳へ忍び込むと、まず下しもの方

に寝ていた克子を滅多斬りにしたらしい。克子もいくらか抵抗──というより、もがいたよ

うな形跡はあったが、それはごく微弱なものだったから、矢継早の太刀先に、すぐに彼女

はこと切れたものと思われる。

 ところでその物音で賢蔵は眼をさました。蒲ふ団とんを蹴って起き直る。その出鼻を犯

人はひとなぐりやったらしく、賢蔵は左の肩から腕へかけて斬られている。賢蔵はそれに

もひるまず、克子の体をまたいで犯人に向かおうとした。そこを犯人が抉えぐったらし

い、賢蔵は見事に心臓を貫かれて克子の上に折り重なって倒れているのである。

 と、いうのが、現場の模様から磯川警部が下しただいたいの判断だが、さて、それから

後が分からないのである。

 死し骸がいの枕元に琴が持ち出してあり、その琴を血にまみれた指で弾いたらしいとい

う事は、前にも言っておいたが、何故犯人はそこで琴を弾いたのだろう。それから一本切

れた琴糸の柱じがなくなっていたが、その琴柱はいったいどこへ行ったのだろう。離家の

なかのどこからもそれは発見されなかったのである。

 だが、それよりも、更に不思議なのは、犯人がどこから逃げたかということである。離

家の戸という戸は、全部なかから厳重に戸締まりがしてあったことは、まえにも言ってお

いた。人一人這い出せるような隙は、どこにもなかったのだ。

 しかし賢蔵夫婦を殺し、琴を弾いた後の犯人が西の縁側へ出た事は確かである。前にも

いったとおり、便所の中には血にまみれた三本の琴爪があったし、良介や源七たちの押し

破った雨戸のすぐ内側には、これまた血に染まった日本手て拭ぬぐいが、ぐるぐる巻きに

なって落ちていた。いや、それのみならず打ち破られた雨戸の内側に、くっきりと手型が

残っているのが、だいぶ後になって発見されたが、この手型にも、指が三本しかなかっ

た。しかし、この指は、もう琴爪をはめていなかったと見えて、ありありと指紋が残って

おり、その指紋はごくかすかにではあるが、血に染まっていた。

 こういうところから見ると、犯人はこの雨戸を開いて逃げたか、あるいは逃げようとし

たかに違いない。そこで問題となるのは、良介と源七がこの雨戸を打ち破ったとき、ほん

とうにこざるが嵌まっていたかという事である。このこざるを外したのは良介だから、彼

はこの事が問題になるとムキになってこういった。

「こざるはたしかに嵌まっていました。源七が斧で雨戸を打ち破って、手の入るぐらいの

すきを拵えてくれたので、私が手を突っ込んでこざるを外したのです。第一犯人がここか

ら出ていったなんてそんなべら棒な話はありません。それならばどうして足跡が残らな

かったのです。雪の上にはどこにも足跡がなかったことは、私や源七ばかりではありませ

ん。そこにいる銀造さんもよく知っている筈です」

 それに対して銀造も無言のままうなずいたが、しかしその時、きっと良介の横顔を見据

えたかれの眼に、浅からぬ疑惑の色が見られたことはたしかである。

 だが、ここで話を少し後へ戻そう。

 夜が明けるまで良介と睨にらみあったまま、凍りついたように死体のそばに頑張ってい

た銀造は、おいおい係官が駆けつけて来たので、やっと安心して離家を出た。それは七時

頃のことで、今日は昨夜にうって変わった上天気になると見え、一柳家の大きな母屋の屋

根につもった雪が、朝日に眩まぶしく輝いていた。軒を伝って落ちる雪解の音が、しだい

にせわしさを増していた。

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