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本陣殺人事件--鎌と琴柱(1)

时间: 2023-11-22    进入日语论坛
核心提示:鎌と琴柱「どうもいやな事件だな。気味の悪い事件だな。俺も長いことこの職業をして来たから、どんな凶暴な血まみれ事件にだって
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鎌と琴柱

「どうもいやな事件だな。気味の悪い事件だな。俺も長いことこの職業をして来たから、

どんな凶暴な血まみれ事件にだって、滅多に驚かんほうだが、この事件ばかりは考えるほ

どいやになる。薄ッ気味が悪いのだ。ねえ、木村君、犯人の入った跡はあるが、出た跡は

ないというのは一体どういうんだ」

 離家の縁側に持ち出した机にむかって磯川警部は丹念に、小さく引き裂いた紙片を継ぎ

合わせている。木村刑事もそれを手伝いながら、

「警部さん、その事についちゃもっと簡単に考えたらどうでしょう」

「簡単にというと?」

「つまり、良介という男が噓を吐いている……と、そう考えればなんの不思議もないこと

になりますぜ。こざるがおりていたか、いなかったか、それを知っているのはあの男だけ

なんだから、噓を吐こうと思えばいくらでも吐ける」

「そりゃまあそうだが、しかしそうなると、足跡が問題になって来る」

「警部さん。そう一時に二つの事を考えちゃいけませんや、足跡のことは後でもう一度よ

く庭を調べてみるとして、いまの事ですがね、良介が噓を吐いたとすると、何故そんな噓

をついたかという事が問題になる」

「君に何か考えがあるかね」

「あの男、何か知っていやあがるんじゃないかと思うんです。つまり犯人をねえ」

「しかし、犯人を知ってるって事と、こざるがはまっていなかったかって事とは、おのず

から問題が別じゃないか」

「そんな事はありません。つまりそうやって事件をこんがらかそうというんです。どうも

私にゃあの男、虫が好きませんねえ。妙にこそこそしてやがってねえ」

「君、印象で人を判断しちゃ駄目だよ。事件をあやまるもとだ」

 だがそうはいうものの、磯川警部にも良介の印象はあまりよくなかった。

 いったい一柳家の本家の兄弟は、いずれも相当の押し出しと風格をそなえていて、本陣

の末裔と名乗っても、決して恥ずかしくはなかった。一番不出来の三郎でさえも、懶なま

けものは懶けものなりに、やはりお坊っちゃんらしいところがあった。それに較べると良

介は著しく見劣りがする。柄も小さく貧相で、ひねこびれているし、性質もこせこせとし

てどこか賤いやしいところがあった。そういう性質は、彼の眼を見ればよくわかる。その

眼は絶えず動いていて、しじゅう人の顔色をうかがっている。一見臆病のように見えてど

こか油断のならぬ陰険なところがあった。

「あいつは新家だったね」

「そうですよ。生しよう涯がいうだつの上がらないほうです。もっとも殺された賢蔵とい

うのが学者肌で、家のことは構いつけなかったから、だいぶうまい汁を吸っていたらしい

という評判ですがね」

「隆二という男はどうかね。あの男が今朝かえって来たというのはどうも臭いね」

「ああ、あの男ですか。あの男は評判がいいようですね。肌触りのいいさばけた人だと村

の連中も言っている。なんでも阪大病院に勤務していて、今度は九州大学の学会のかえり

だといっていますが、なに、こりゃ調べればすぐ分かることだから、まさか噓ではないで

しょう」

「うむ……時に、君のさっき言った事だね。良介が犯人をかばっているという……そうす

ると良介はあの三本指の男を知っていることになるね。ところが川田屋のおかみの言葉に

よると、そいつまるでルンペンみたいな、貧相な、見すぼらしい奴だったといってるぜ」

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